第27話



 月では開拓作業が進んでいる。

まだ月面の50%までしか進んでいない。


 それでも、火星開拓に比べれば、かなりの進歩だ。

火星開拓では、人工太陽の下、昼夜を分たず開拓が進んでいる。

開拓では発掘調査が共に行われており、今のところ、人類が予想した通りの結果しか出ていない。

つまり、始まったばかりと言うことである。


 そして月では。


 第1セクターに調査団から連絡が入る。

第1セクターは、月面移住計画を実行に起こした政治家や科学者たち、そして投資家たちの移住区でもある。

つまり、各セクター第1管理棟で行われている政治、各セクターの経済、月移住者の生活状況など、あらゆる情報が集まる場所でもある。

それ故、月という開拓地で行政指示の発進場所でもあることになる。


「調査団から小さな山に洞穴を発見した、と連絡が入りました」


 第1セクター内、第二管理棟への無線連絡である。


「洞穴は、どれくらいの深さなのかしら?」


 連絡を聞いた調査団の主任、ファンナが呟くと


「深さはどれくらいだい?」


 と無線を受信した研究員が調査団に尋ねる。


「それが、遠くに見えただけで、もっと接近して、入ってみないと分からないのですが、入り口は横穴になっているようです」


 それを聞いて、慌ててファンナが無線機に話しかける。


「ファンナよ、博士は其処に居るかしら?」


「ああ、ここに居るよ。オーレンだ」


 オーレンは、開拓調査団の総指揮者であるが、生まれながらのフィールドワーク主義者で、調査団と共に月面へ出ることが少なくない。


「横穴って聞きましたが?」


「そうなんだ、月面で横穴は珍しい。入ってみようと思うんだ」


「そうですね。隕石の落下などによる縦穴はそこかしこにみられますけど・・・。とにかく気をつけて入ってください」


「ああ、案外短いと思うんだけどね。せっかくだ、そこまで行って入ってみるよ」

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