第20話 首都にて

昼下りを過ぎ、夕暮れまではまだ僅かに時間が

ある頃に3人はナナ・ハーンを出発した。


首都までは車を飛ばして丸1日ほどかかった。

途中悪路や山道に苦戦しての旅路であった。


「もう無理だ…………」


首都に着くとササーは力尽き、そのまま車の中で

寝てしまった。


首都タクツークは内戦の後であちこち焼け落ち

た跡があるものの、今は抗戦状態を保ちつつ

激しい争いはしていないようで、首都としては

機能していないものの郊外では何とか生活も

できているようだった。


「軍部の反体制派へ接触しますか?」


ロパは聞いてきた。


「そうだね、でもその前に会ってみたい人が

いるんだ。」


「それは誰ですか?」


「光の教団の教主と。」


「光の教団ですか………」


ロパは考え込むような仕草を見せた。


「うん、そうなんだ………」


『知っているのだろうか?』

そう言えばラビは光の教団の教主は情報部出身

だと言っていたが………


レオルはそう思い出していたが、


「分かりました。探してみます。ここで待っていて

ください。」


と言い残し、ロパは情報を集めに行ってしまった。

その為レオルも車に戻りササーと一緒に仮眠を

取る事にした。


夜にはロパから事情を聞いたという男が

彼らのアジトらしきアパートへと案内してくれた。


「抜け情報部員用にいくつかアジトがあったん

ですよ。イーダに追われた時用にいくつもの

偽情報を重ねてね………。

そのノウハウはかつて『鴉』にいたグースと

いう人が確立していってくれたらしいです。

タクツークは内戦状態が落ち着いたとはいえ

観光客や外部から人が集まるような状態

じゃなくて、宿泊施設もろくにありませんから

ここを自由に使ってもらっていいですよ。」


案内してもらった部屋は埃まみれで、外よりマシ

程度の部屋であったが、二人はそこで横に

なることにした。


夜半過ぎロパがそのアジトに姿を現した。


「光の教団と接触ができました。

明日朝に会うことができます。」


「本当かい!?ありがとう!

こんなに早く会うことができるなんて

やはり情報部の人って凄いね。」


「………………あなたは、光の教団が元情報部の

集まりだと知っていたのですか?」


「えっ?集まり……?いや、光の教団の教主が

諜報員の人だったってことはラビから、

キラービーから聞いていたけど、その他のことは

分からなくて…………」


「そうですか、私も知りませんでした。

とても驚いてしまって。

あなたの名前を出しても、理事長の名前を出しても相手にしてもらえませんでしたが、『キラービー』の名前を出したところ会って話がしたいと

言ってもらえました。」


「そうなのか………」


「光の教団は総統暗殺の後、どうも分裂のような

ことがあったようで………、今では内戦での

負傷者の手当や難民の世話を中心に困っている

人の支援をしているようです。」


「へえ、それは素晴らしい団体なんだね。」


「ええ……………」


「?どうかしたのかい?」


「いえ、どうも色々あるようで……

その辺の話も明日あるのかもしれません。」


「そうか………」


レオルには情報部の勝手が分からない。

今はラビの助言を頼りにやり方を探っていくしか

なかったのだった。




翌朝、光の教団を訪れることになった。


「ササー巡査長も来ますか?」


レオルはササーを誘ったが、


「いや、俺には話が大き過ぎて付いていけない

ここで待っているよ。」


と断られたので、ロパと二人で向かうことに

なった。


「レオル、すまないな。お前は部下みたいな

もんだし、助けになるべきなんだが、俺には

何が起こっているのかを理解するのが精一杯で

何の役にも立ちそうになくてな………」


ササーは出て行くレオルにそう声を掛けた。


「いえ、ここまで送ってもらっただけでも

充分に助けてもらっています。

ありがとうございます。また何か頼るかも

しれませんし、それに僕自身も何が何だか

分かっていないところもあります………

でも、ラビが……ラビが繋いでくれたこの

流れを止めることはできません、

できる限りですが、やれるだけやってきます!」


レオルも内心不安で一杯であったが、

それでも自分の中にラビの思いが宿っていると

信じていた。

ササーは黙ってレオルの背中を叩いて

レオルを送り出した。

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