王国軍 vs 異世界軍 winner is 俺!?

老いた羊さん

プロローグ

プロローグ1 in the Earth

都内某所


「先日、T島に出現した、通称『ポータル』ですが、K国がT島ごと所有権を主張しています。我が国は一刻も早く、領土を奪われる可能性を排除すべきです。即刻自衛隊を出動させ、何としてでもK国のT島への上陸の阻止と、現地調査員の安全を確保すべきです。」


 白髪の初老の男性に向かい、若い眼鏡の女性が唾を飛ばしつつ熱弁する。


「しかしだね、うん、これは難しい問題だよ。正直現地調査員が未だ活動を容認されていることが信じられないね、私には。まったく、安保理は何を考えているんだか...」


「待機と言われても、安全の確保位はしていいと想いますが?」


「ただねえ、少しでも武力を保有する船を今近づけるわけにはいかないんだよ。たとえ今あそこがK国海軍の艦隊に包囲されているとはいえね。軍事行動と取られてしまうかもしれないじゃないか。あちらも待機命令が下っているわけだしね。」


「しかし...」


 いま全地球上に出されている指示は「待機せよ。何もするな。」である。


 アメリカ某所

(脳内で翻訳されています。)


「先日我が国の海上保安庁が発見した謎の闇、通称『ポータル』についてですが、我が国の領土に発生した以上、我が国の保有物である、と主張します。直ちに他国は我が国の領海から離脱し、ポータルの所有を主張するのを控えていただきたい。」


 眼鏡の奥の黒い瞳が痩せ型の黒髪の中年男性をとらえる。


「そもそも、T島は我がK国のものである。日本の領土であるということ自体が間違いだ。そちらこそ、何もするな、と言われているのに調査団を上陸させているとは何事だ。すぐにT島から離脱することを薦める。不法入国者を強制排除など面倒だからな。」


「もう、面倒くさいから、T島?国連管理の無国籍地帯にしてポータルの所有者なし、でいいじゃないんですか?」


 金髪の提案に賛同の声が上がる。

 皆、ポータルを解析し、秘密を暴き、自国の技術発展に活用したいのだろう。


「いや、しかしですね。我が国の大切な領土を国連に献上せよ、というのはあまりにも我が国にとって損失が大きい。そう簡単には認めることはできません。」


 ポータル所有への利益を考えると、共同管理、みんなのものと言う考えには賛同できないようだ。また、その同盟国もコネを使って研究に参加できると考えたのだろうか、単一国での所有派と、共同管理派で2極化することとなった。

 意外にもこの議論に決着をつけたのは、ある一つの報告であった。


「ポータルから未確認生物、いや、ドラゴンが出現し、口から火を吐いてあたりを燃やした、と。現地にいる人間と艦隊の安否は不明です...また、今そのドラゴンがどこにいるかも不明とのことです。」


 誰もが思った。これいらない、と。こんな危険なものを所有するリスクと、得られる利益を天秤にかけるとどちらに傾くか、それは明白だった。


皆所有権は他国が持ち、責任を持って管理するよう薦める。ただ日本を除いては。

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