第12話 じゃあまた学校で
映画が終わる。照明が点くと、大きな拍手が劇場に割れんばかりに響き渡った。
するとすぐに、MCとキャストたちがスクリーンの前に立つ。
「明日香ちゃん、救われてよかった〜〜」
横の優衣が鼻をすすり、嗚咽をもらす。
「これ、いる?」
と、差し出したハンカチを、
「うん。ありがとう」
受け取って涙を拭いた。
かく言う睦目もぽほぽろと、目尻から涙が零れ落ちる。
収まりきらない感情が、水となって目から溢れた。
「……ほら、睦目くんも泣いてるじゃん」
そう優衣はハンカチを持った手を目の下へ伸ばし、拭ってくれた。
そうして後日談トークとして、キャスト達による様々な舞台裏が語られることになった。
大変だったこと、難しかったこと、楽しかったこと。
最後に全員で写真撮影をし、無事、特別披露上映は終わりを迎えた。
すっかり暗くなった外は街の明かりで彩っている。
冷めやらぬ興奮の中、優衣の提案で近くのレストランで夕食をとった。
そこで映画についてお互いに意見を交換して、雑談をしていたらあっという間に二二時。
さすがに帰ろう、となって二人は電車に乗り込む。そして睦目は乗り換えのため、途中の駅で降りた。
「今日はありがとうね睦目くん。楽しかった。じゃあまた学校で」
「うん。じゃあね」
別れ際、互いに挨拶を交わした。
帰宅した睦目はシャワーを浴び、諸々の支度を済ませてから、布団へ潜り目を閉じる。
しかし腹の中の異物は朝になっても、消えることはなかった。
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