弱小貴族の暗躍者〜歴代最強の力を持った少年が『大罪』を従え平穏を求めて暗躍する〜

あおぞら

第1章 学園襲撃編

第1話 弱小貴族の子息にして裏社会の王

 どの世界にも、表があれば裏がある。

 まるで、表裏一体のコインの様に。

 そして、それは何処に行っても変わることはないらしい。

 

 俺の住むこの世界にも裏があった。

 そして俺の生まれた家にも、残念なことに表と裏がある。


 表では、サイコロの5の様に並んだ五大陸の真ん中に存在し、他の4大陸より大きい人間の住む大陸———ヒュー大陸の最東端に位置する小国のしがない子爵の息子。

 特に秀でた才能もなく、逆に特に劣る箇所もない普通の子供。

 耳にギリギリ掛かる程度のボサボサの黒髪に、死んだ魚の様な霞んだ黒い瞳。

 貴族のため、顔は整っているが、決して誰もが振り向く程の美貌と言うわけでもない。

 身長も175センチで、体格も少しがっしりしている程度。


 それが俺———アルク・ドミネイターだ。


 しかし先程も言った様に、これはあくまで俺の表の姿。

 裏の姿はまた別にある。


 そして今日は1ヶ月に1度の裏の姿を使う日であり、私的に1番憂鬱な日でもある。


 服装は、顔の3分の2くらい隠れるフード付きの真っ黒のマント。

 その中は普通に通っている学園の制服だが、絶対バレない。

 マントの中まで見られることがそもそも皆無だからだ。


 場所は俺の屋敷の地下深くに作られた、出入り口のない部屋。

 その部屋には1つの大きな円形の机と、7つの椅子、1つの王座の様な特別感溢れる椅子の全部で9つしか置かれていない。

 更にこの部屋に入るには『転移の指輪』と呼ばれる我が家に伝わる魔導具が必要なため、普通の者は入れず、俺と秘書を含めた全部で9人しか入ることが出来ない、世界でも有数の秘密基地である。

 

 昔は此処に来るのも興奮していたが……今では『転移の指輪』を付けるのさえ憂鬱に感じてしまう。


 はぁ、歳かな……まだ17歳だけど。


 因みに此処に来ることを認められた者達は、表裏共に有名な超危険人物達ばかりだ。

 何でも、過去に世界に反旗を翻した超越者達の力にして禁忌とされる———『大罪』を振るう者達だからである。


 そんな奴らだからか、中々集まらない。

 

 ほんと、こんな面倒なこと放って、平穏な生活を送りたいよ。


 俺は、一切口を開かずひたすら俺の背後に直立している秘書兼我が家のメイド長———クレアに問い掛ける。


「開始まで後何分だ?」

「あと5分です」


 どうやらあと5分しかないらしい。

 まだ1人も来ていないけど。

 ほんと、何でこうも時間守らない奴らしかいないのかね。

 10分前行動とか基本中の基本なのに。


「「…………」」


 殆どの何もない部屋に、ただ俺が机を指で叩く音だけが響く。

 そして残り3分となった時———遂に1人目が現れた。


「お、遅れて申し訳ありません、主様っ———って誰も来ていないじゃないですか! 主様、私が今から責任を持って連れて来ます! 何としても間に合わせます!」

「いや、その必要はない。相変わらずお前が1番だ、アメリア」


 最初に来たのは、燃える様な真っ赤に染まった髪を腰まで伸ばした20代前半の美女。

 たわわに実った巨大な胸部に、キュッとくびれた腰、太ももは少しむちっとしているが太すぎず、逆にそれがエロい。


 彼女の名前はアメリア。

 『大罪』の1つ———『傲慢』の力の所有者である。


 余談だが、彼女の美貌は100人に100人の男子が振り向くほどで、俺も最初に会った時は度肝を抜かれた。

 今では大分慣れて平常心を保てる様になったが……それまでの事はもう思い出したくもない。


「「———主様ーー!」」

「よく来たな、リリー、ルド」

「今日は間に合ったよー!」

「ギリギリだったけどな。主様、僕がリリーを叩き起こしたんだ、凄いでしょ!」

「ああ、凄いな。よくリリーを起こした」 

「えへへ……ふっ、やっぱり僕の方が主様のお役に立てる」

「むぅぅぅ……リリーは朝が弱いだけなの!」


 次に喧嘩しながら来たのは、俺よりも小さい双子の男女。

 白髪の女の子がリリー、俺と同じ黒髪の男の子がルドだ。


 そして勿論だが———2人共『大罪』の1つである『暴食』の所持者だ。


 正直12歳の子供に『大罪』を所有させるとか頭おかしいと思うが、『大罪』自身が決めたことなので、俺からは口出し出来ない。


 因みに2人とも俺の部下であるが、表でも交流がそれなりにあるため、俺的には弟と妹の様に感じている。

 2人も俺のことを表では『お兄ちゃん』って言ってくれるので、その認識で間違いではないと思いたい。


 そんな2人を皮切りに、残り1分で続々と『大罪』の所有者達が集まり出した。


「悪い主、少し遅れたわ。戦争に勝手に乱入したら中々終わらなくてなぁ……俺も歳か」

「アルク様ぁ〜! 貴方様の正妻、エレナがやって来ましたわよ〜!」

「黙れ淫乱女。気安く主人に触れるな。殺すぞ」

「あぁ……あと5時間くらい寝かせて……」


 全身傷だらけの40代のムキムキイケおじに、肌面積の少ない服に身を包み妖艶な雰囲気を纏った美女、俺と同程度の年齢の仮面を被った少年(素顔超絶イケメン)、眠たそうにあくびを殺すパジャマ姿の少女と、俺なんかよりよっぽど個性まみれの奴らが現れた。

 

「『強欲』はどうした?」

「んぁ? 強欲の奴はどうせまたコソコソと主を謀ろうと頑張ってんだろ」


 ムキムキ全身傷イケおじ———デイビッドは椅子に座りながら『アイツも無駄なことするよな。あんなに良い才能持ってんのによ』と、何処か羨ましそうに言う。

 この様子から分かる通り、デイビッドは『嫉妬』の所持者である。


 その他にも妖艶な美女は『色欲』を、仮面のイケメンは『憤怒』、パジャマ姿のそばかす美少女は『怠惰』を所持している。

 他にも『強欲』もいるのだが、彼女は相変わらず俺の呼び出しに全く参加しない。


 そろそろ一度叱っておかないといけないかもな……面倒だけど。

 まぁそれは後々考えるとして……とっとと始めるとしよう。


 俺がクレアに目で合図すると、俺の合図の意味を正確に読み取ったクレアが一歩前に出て告げる。


「これより定期報告会を始めます。始めに我らが主———アルク様からのお言葉です」


 さて、そろそろ俺の正体にお気付きだろう。


 裏社会と表社会どちらともで最も有名な7人の『大罪』の力を宿した者達の王であり、世界でも各国の国王や次期国王程度しか知られておらず、その王の正体が冴えない子息だと知っているのは我が国の王のみである。


 そして———特別な力を持ったドミネイター家が代々受け継いで来た裏社会の支配者。




 名を———『大罪王』と言う。




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 カクヨムコンテスト用の作品です。

 なので10万字以上は確定で書きます。


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