タヌキング、あしたのジョーに憧れて

タヌキング

燃えて燃えて……そして最後は灰になる

【あしたのジョー】という作品がある。

皆んなも名前ぐらいは聞いたことはあるかもしれないが、有名なボクシング漫画である。

主人公の破天荒な青年の矢吹 丈(やぶき じょう)がトレーナーの丹下 団平(たんげ だんぺい)と出会い、プロボクサーとして成り上がっていくストーリーである。

話を聞くと何処にでもありそうなスポーツ漫画のようだが、蓋を開けてみると一癖も二癖もある荒々しくて常軌を逸した作品である。


私が初めて【あしたのジョー】と出会ったのは、小学生五年生の時でありBSのテレビ放送で劇場版あしたのジョー2のクライマックス付近から見ることになった。何となく暇つぶし感覚にボーッと見ていたのだが、すぐに私の胸は高鳴った。

バンタム級の世界チャンピオンのホセメンドーサに猛攻で、なす術なくやられるマットに何度も倒れるジョー、彼は数々の激闘でパンチドランカー症候群を患っており、これ以上戦えば命の危険すらあった。だが彼は立った、何度も何度も、執念深く、心を熱く燃焼させながら。

私はその姿にすっかり魅了され、テレビに釘付けになってしまった。

実は私はテレビのアニメの特番などで勝敗と結末を知ってはいたのだが、そんなことはどうでも良かった。彼の生き様がとにかく格好良かった、一人の男としてこうありたいと強く羨望した。見終わった後に見様見真似でシャドーボクシングまで始めてしまったぐらいである。


すっかりジョーに魅了されてしまった私は、いつかはジョーの様にカッコいい男になりたいと思っていたが、これまたBSのあしたのジョーの特番で、炎の漫画家である島本和彦さんがこんなことを言っていた。


『ジョーに憧れている者はマンモス西にしかなれない、力石 徹(りきいし とおる)に憧れている者が矢吹 丈なれるのだ。』


これを聞いてなるほどなと思った。

マンモス西はジョーの友達であり、ジョーに憧れていた彼はプロボクサーを目指した。

力石 徹はジョーのライバルであり、少年院での彼との出会いが、ジョーがプロボクサーになる決意をさせた。

つまり、ジョーに憧れているその時点でジョーにはなれないということである。

普通ならここで力石を目指そうとするのが普通かもしれないが、どうしたって私はジョーが好きである。

ならばジョーに憧れるマンモス西で良いかと、自分なりの結論を得た。


私には、ジョーで一番好きなセリフがある。

それはガールフレンドの紀(のり)ちゃんから、どうして厳しい減量までしてボクサーとして頑張るの?他の人は楽しい青春を謳歌してるというのに

という質問に対しての返答であった。


「ほんの瞬間にせよ、眩しいほど真っ赤に燃え上がるんだ……そしてあとには真っ白な灰だけが残る。燃え滓なんか残りゃしない……真っ白な灰だけだ。」


この苛烈な言葉を聞いた紀ちゃんは、ジョーへの恋慕の気持ちを断ち切り、違う道へ進んでしまう。

格好良すぎるこの言葉に、男として私は多大なる影響を受け、たまに思い出して自分を奮起させることもある。

燃えて燃えて灰になる。そんな人生を送ってみたいものだ。


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タヌキング、あしたのジョーに憧れて タヌキング @kibamusi

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