君と婚約破棄させてもらう!!

うにどん

本編

「今この場にて僕はジュリエットに婚約破棄を告げる!!」


 学園の卒業パーティーにてこの国の第三王子・アルフレッドは婚約者である侯爵令嬢・ジュリエットに婚約破棄を告げた。

 アルフレッドの隣にはか弱そうな雰囲気を漂わせる男爵令嬢。

 誰しもが困惑しザワついてる中、婚約破棄を告げられたにも関わらず冷静でいるジュリエットは扇で顔を隠し笑みを浮かべた。


――上手くいった。


 必死にニヤける顔を隠しながらジュリエットは。


「あら、どうして? 婚約破棄をする理由はありますの?」


 冷静を装いながらアルフレッドに続きを促す。


「慌てていたから婚約破棄の理由を言うのを忘れていたよ。婚約破棄をする理由、それは


 君の不貞だよ」


 アルフレッドの氷のように冷たい声が会場に響く。


 不貞と言われ目を見開くジュリエットに構うことなくアルフレッドは続ける。


「君は僕の側近候補であるロミオと関係を持ち、此方にいる男爵令嬢を脅し僕に近づけさせ僕の有責で婚約破棄をしようと目論んだ。違うか?」

「じょ、冗談は止して下さい!! 私が不貞!? 私が貴方以外の男に現を抜かしたというのですか!?」


 叫び否定するジュリエットを無視しアルフレッドは口を閉じるのをやめない。

 周囲は一気にザワつきジュリエットを見る。

 ジュリエットは淑女の手本と呼ばれる程の令嬢だ、その令嬢が不貞。とんでもないスキャンダルに周囲は注目するしかなかった。


「君は僕が気に入らなかった、顔も頭も兄たちと比べて平凡で何一つ魅力もない、だから僕より魅力的なロミオの方が自分の婚約者に相応しいと考え、実行に移した」

「いい加減にしてください!! そんな嘘をベラベラと!!」

「言っておくけど、男爵令嬢の彼女そしてロミオから既に話は聞いてるし証拠も揃えてある、それでも抗うか?」


 アルフレッドは近くの兵士に目配せすると拘束されたロミオが。

 服はボロボロ、殴られたのは顔は膨れ上がり自慢の美貌は台無しに。そんな姿のロミオにジュリエットはロミオ!!!!!! と叫び近寄ろうとしたが他の兵士に阻止されてしまう。


「じゅ、ジュリエット、すまない。真実を吐くまでずっと殴られ続けられた、耐えられなくて全てを話してしまった」

「ああ、ロミオ・・・・・・。酷い!! 酷いわ!! をよくも!!!!!!」

「私のロミオね、つまり不貞を認めるって事で良いね?」

「あっ・・・・・・」


 ニッコリと笑うアルフレッドに対し失言したジュリエットは顔を青ざめさせた。

 もちろん、周囲にも彼女の失言は聞こえており、皆、ジュリエットに冷ややかな視線を送る。


「淑女の手本と呼ばれていた人が不貞だなんて」

「ええ、残念ですわ」

「私、憧れていましたのに」


 特に高位貴族令嬢達の視線は冷たいものだ。

 だが、ジュリエットにはそんな事に気付く余裕はなく自ら不貞を暴露してしまった事実に打ちひしがれ、膝から崩れ落ちていた。


「詳しい事は後日、改めて話し合おう。さて、折角の卒業パーティーを台無しにしてすまない!! この場に用意した食事は王家つまり僕からのせめてもの詫びだ!! 思う存分堪能してくれ!!」


 一仕事終えたアルフレッドは会場にいる全員にそう話すと去って行った。





「はあ~・・・・・・。疲れた」

「アルフレッドお疲れ様だな」

「ジュース飲むか?」


 学園から用意された控え室に入るとアルフレッドは椅子に深く腰掛る。

 そんなアルフレッドに控え室に待っていた兄たちが労いの言葉をかけた。


「これであの二人、ジュリエットとロミオの顔を見なくて良いと思うと心は晴れやかだけど疲れるね~」

「あの二人は口には出さなかったが態度でお前を見下していたのは解っていたからな」


 アルフレッドは生まれた頃から跡継ぎのいない大公爵の跡を継ぐために育てられ、生まれた時からジュリエットとの婚約は決まっていた。

 だから、ジュリエットと仲良くしようと頑張っていたが彼女はアルフレッドを拒否し顔も頭も良い側近候補のロミオに靡いたのだ。

 ロミオもロミオで彼女と結婚すれば大公爵になれると欲を出し彼女の誘いに乗り、自分のファンの一人である男爵令嬢の弱みを握りアルフレッドにけしかけた。

 二人ともアルフレッドは自分達より劣るから気付かないと思っていたのだろう、その結果が今日の婚約破棄になるわけだが。


「これからどうなるんだろうな、僕の婚約者」

「父上はすでに何人か候補を出しているらしい」

「しばらくはお見合い三昧だな」

「うげ~」


 兄たちからそう言われたアルフレッドは今後の事を思い苦い顔をするのであった。


 後日の話し合いの結果、ジュリエットは国で一番過酷と言われている修道院、ロミオは女人禁制の修道院に幽閉が決まり、送られていった。

 ジュリエットはロミオに会えない寂しさから毎日泣き崩れ、ロミオは男しか居ない環境に泣き崩れる日々だったという。

 アルフレッドはお見合い相手の中で気の合う貴族令嬢を見つけ、結婚し、穏やかな生活を送った。

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