現代に逆行転生したけど神様から無理難題を押し付けられた件

鷹鞘

第1話


 人には限界というものがある。

 どれだけ努力をしても辿り着ける終着点は決まっている。


 どれだけ走って柔軟性や筋力を鍛えようとも100mを5秒で走り抜けることなど不可能だし、

 砲丸を50mも投げれる筋肉バカはいない。


『努力することに意味がある』


 これはとてもいい言葉だ。


 結果よりも努力を続けることに意味がある。

 そしてその努力は一生ものの『誇り』という宝物になる。


『限界を超えろ』


 ごみみてぇな言葉だ。

 本当にクソだ。

 まだうんこの方がマシな響きだ。


 超えれないんだよ。


 みんなが超えたと意識しているものは限界ではなく、その前にあるただの小さな壁たちだ。


 限界は越えれないから限界と言うんだ。


「わかったかあほが」


「……え?何が?」


「………」


 一人と一神の間には微妙な空気が流れる。


 ここは死と生の狭間。



 神が死に、僕のところに来…「死んだのは君でしょ」……そうなんだけどさ、もっとオブラートに包もうよ。


 まったくデリカシーのない神である。


「勝手に神を殺した君もどうかと思うけどね。あとアホって言っていいと思ってる?」


「…ごほんっ。僕はどうなるんですか?」


 再スタートだ。

 テンプレだとこの後に続く言葉は、異世界転生だ。


 君は死んでしまったんだ。

 それも神の手違いで…ごめんね。

 と、ここで一発ぶん殴りたいところだが、あえて拳を握り締め、堪えることにより貸しを一つ作る。

 そして次は

 チートを持って転生させてあげようという一言。

 ここで「うひゃあああ!」と下品に舞い上がるのは三流のゴミがすることである。

 僕ならばここで値切りに値切りそれでもだめなら人としての尊厳を捨てて土下座をし、さらに良いチートがもらえるよう媚を売る。

 そして最後に、貸し一つを神の顔面に叩きつけ無敵の…限界を越えれる体をもらう。

 なんて素晴らしき戦略。


「我ながらグッジョブ…」


「そうはなんないし君神経図太くない?」


「よく言われます…」


「…なんか君と話してると疲れるからぱぱっと要件済ませるね?」


 ひどい神もいたもんだ…と思ったと同時に、言葉が頭の中に流れ込んできた。


 君は死んだ。異世界転生はない。ただ過去に…逆行転生ならさせてあげれる。ただしそれにも条件があって、「いらないです。安楽死させてください」無理。強制。「…条件どこいったコラァ」んで、逆行転生させてあげるけど君にはある試練をクリアしてもらう。これが条件ね。

 現代にあるダンジョンの中でも…「無理。まじ無理。絶対無理」はははっ…


「君には『四大ボス』の討伐を命じる」


「嫌に決まってんだろ馬鹿かお前は」


 この神は頭がおかしいのか。

 人間がどう足掻いても勝てない存在を討伐しろなんて…頭は大丈夫ですか?


「次、神を冒涜したら……わかるよね?」


 周囲の気温が冷えたように感じたが…これは神による殺気もとい神聖力によるものだ。


 さす神です。

 ここまでの濃密な気はなかなかお目にかかれなく、人ではこの領域にはいけない。

 まさしく人ならざるもので、僕が行きたかったステージ。


「君は強さにとても貪欲だ。どんな人よりも、亜人よりもモンスターよりも。君が一番本気だった。そのせいか相対する絶対的な理不尽に心が折れて捻くれてしまったんだね。かわいそうに…」


「もともとひねくれてますが何か?」


「はははっ前まで限界を超えるって口癖のように言ってたじゃないか。純情ボーイ」


「殴っていい?もう拳が震えてロケットみたく発射しそう。今にもその笑顔を歪ませたい」


「これはゴッドジョークだよ。それより話の続きしてもいいかい?」


「だめに………なんで君を選んだかはさっき僕が言った通りだ。君が一番可能性がある。それとどうして四大ボスを討伐してほしいかと言うと、僕は地球を管理する神だ。人を愛している慈愛の神だから、みんなには滅んでほしくないし、君みたいに生意気な捻くれ者も案外好きなんだ。だから、滅ぼされる前に滅ぼしてほしい。このままいくと現代は…あと数十年で終わりを迎えるから。


(!?!?)


 それは神のみ知る未来の情報だった。


 現代が滅ぶ。


 それもあと数十年で。


「……ジョーク?」


「…これはほぼ確定した未来だよ。だからそれを変えるために僕がイレギュラーを送り込むんだよ?わかったかい?」


「……いやいや。ちょっと真面目な話しちゃうけど…さ、僕って才能ないんだよ。自分で言うのもなんだけどさ、くそほど努力したんだよ。本当に…意味わかんネェほど頑張ったんだよ。でもさぁ…才能には勝てねぇしよ…モンスターはクソ強いしよぉ……亜人なんて人の上位互換だしよぉ……勝ってるものが一つもねぇんだわ」


 現代には数百年前に突如として異世界からきたダンジョンや亜人、モンスターがいる。

 世界中に出現したダンジョンには常識では考えられないほどの化け物たちが蠢き、それを苦もなく倒す人間の上位互換である亜人が存在するのだ。


 そして、純血種というのが存在し、そいつらは正真正銘の怪物だった。

 しかし、その怪物たちですら倒せないモンスターが存在する。


 それこそが


『四大ボス』である。


 世界最悪のダンジョン。


 破滅級にいるボスたちの総称だ。



(それを純血種どころか…混血種にすら手も足も出ない僕が…どうしろと?気力だけでは何もできないんだよ)


「はいっナイーブにならなーい」


 どこから出したのか、神の手にはハリセンがあり、頭をバシバシと叩かれた。



「…そんなこと言われても…」


 バシバシ…


「人は最弱なんだよ」


 バシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシ


「…どんだけ叩くのぉ!?」


 秒間何回叩いてくんのこの神!?

 にっこり笑顔でひたすらクリティカル入れてくるんだけど!?


 バチィィン!


 一際強く叩かれ、弾き飛ばされた僕だが、いつの間にか椅子に座っていた。


(…痛くもないし本当に不思議空間…)


「僕がなんの準備もせずに雑魚を逆行転生させると思うかい?」


「思わないけど…雑魚って言うな。ちょっと弱いって言え」


「ちょっと弱い君wwを逆行転生させるわけないでしょう」


「wつけるな」


「草」


「草言うな」


 現代に染まりきってる神様を本当に信用してもいいのだろうか。

 こんなふざけ散らかしたやつ普通信用しないしぶん殴りたいと思うのが一般常識ではないだろうか。


「まぁまぁ、ちょっと落ち着こうね?君は逆行転生するけど、もちろん神からの依頼だから特典が付与されるよ」


 そうして説明されたものは以下のものだった。


 一、記憶を持ったまま転生


 二、才能を二つ付与


 三、神様の仏壇を違和感なく日常に溶け込ませる能力




 全然いい。

 めっちゃ好条件。

 これなら才能次第で強くなれる可能性がある。

 しかし三番はなんだろうか。

 仏壇?

 困った時に相談できるとか通信ができるみたいなものだろうか。

 未来の事象を教えてくれるとか?

 それで僕が防ぐ的な?


「甘味をお供えするようだよ」


「食いしん坊かおまえ」


「はははっ…神界にはああいったものはないからね…是非待ってるよ」


(…気が向いたらね…)



「うんうん。意外と転生はノリ気な感じかな?あ、言い忘れてたけど四大ボス討伐できずに死んだら地獄のさらにその奥、深層地獄で一生悶え苦し…じゃなくて熱々の刺激的な毎日が待ってるからね!是非頑張るんだよ」


「やっぱ普通に成仏…「もう無理⭐︎ それじゃあ頑張ってねぇ〜」…お…ぃぃぃぃ!」



 ーーーーテメェ一言多いんだよボケがぁああ!


 そう叫び僕、鷹倉 王人(ノウト)の意識は消えた。




読んでいただいてありがとうございます。

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