【#7】ナナシス10周年に寄せて―ナナシス楽曲と私―

■ナナシス10周年に寄せて

 10年前の今日、「Tokyo 7th シスターズ」(ナナシス)は産声を上げました。10年という月日は短いようで長く、一瞬のうちに過ぎ去ったように感じるものの、その間に多くのファン(支配人)を獲得し、スマホゲームそしてアイドル作品としての進化を遂げ、存在感を高めてきました。その濃密な歴史は、1000を超えるエピソード(サブエピソード、イベントエピソード含む)、150を超える楽曲、20回近く開催してきたライブイベントが証明しているように思います。

 

 この10年間、ナナシスは常に私の身近なところにありました。もちろん、24時間365日、ずっとナナシスのことを考えていたわけではありませんが、健やかなるとき、病めるとき、度重なる困難に直面してきたとき、何もかもが嫌になって投げ出したくなったとき……。折に触れて耳にしてきたのはナナシスの楽曲だったのです。

 

 この記事では、ナナシス楽曲の中から特に私自身の生活に影響を与えたものを3曲ピックアップし、振り返っていきます。こうした私的なことを書くのはあまり得意ではないのですが、ナナシス10周年を言い訳にいろいろと綴っていきたいと思います。


■ナナシスとのファーストコンタクト――Ni+CORA「オ・モ・イ アプローチ」

 ナナシスのアプリをインストールしたのは2014年9月21日。あるアニメイベントの帰り道でした。当時、とある女性声優さんのファンをしていた私は、ナナシスのキャラクターのCVに、その女性声優さんが抜擢されたことを知ります。むろん、すぐさまアップルストアを開き、「ナナシス」と検索。気づけば「入手」ボタンをタップしていました。

 

 インストールが終わり、さっそくアプリを起動。オープニングムービーが流れ終わり、チュートリアルやメインエピソードを進めるなかで、ふと思うわけです。「逝橋エイはいつ登場するの?」「ひょっとして、相当やりこまないとダメ?」と。飽き性で一つの物事に没頭することの少ない私にとって、アプリゲームをやりこむ行為はある意味、修行(苦行?)に近いものを感じたのです。

 

 とはいえ、せっかくインストールしたわけですから、いろいろと触らないと損と思い、リズムゲームで遊んでみることにしました。当時のナナシスのリズムゲーム要素は、知る人ぞ知る「ソロステージ」。画面の四方八方から流れてくる星をタップしてスコアを稼ぐというつくりでした。

 

 とりあえず適当に楽曲を選んでプレイしてみよう。何がいいだろう。「オ・モ・イ アプローチ」。この曲でいいか――。そう気軽な気持ちで始めたと思います。ただ、ソロステージがスタートし、流れ始めた曲を耳にしたとき、私の中に名状しがたい思いが沸き上がったのです。「この曲……ヤバいぞ!」。

 

 ムーディーかつダンサブルなメロディーライン。ティーンエージャーのキュートでビターな恋心を表現した繊細な歌詞。Ni+CORAの天堂寺ムスビとアレサンドラ・スース演じる高田憂希さん、大西沙織さんの歌声……。「オ・モ・イアプローチ」を構成するすべての要素が、私のストライクゾーンを抉ってきたのです。 

 

 以来、私は毎日アプリを起動しては「オ・モ・イアプローチ」をプレイしていました。それはソロステージをやりこむというよりも、ただひたすらに「オ・モ・イアプローチ」が聴きたい。その一心でした。当時は楽曲配信などなく、CD化すらされていなかったので、ソロステージかユーチューブでしか、「オ・モ・イアプローチ」を聞く術がなかったのです。


 その後も何かの作業をするとき、「オ・モ・イアプローチ」を選曲することが多いです。あのとき「オ・モ・イアプローチ」という曲と出会わなければ、これほどまでにナナシスにハマり、10年間も推し続けることはなかったでしょう。


■旅立ちの日の朝に――サンボンリボン「Clover×Clover」

「Clover×Clover」は「たいくつりぼん」に続く、サンボンリボン2番目の楽曲で、2015年4月にゲーム内実装されました。この年は初のライブイベント「H-A-J-I-M-A-L-I-V-E!!」を成功させるなど、ナナシスにとって飛躍の一年となった一方、私自身の人生においても環境が激変した一年でもありました。


 2015年4月、私は社会人の仲間入りを果たしました。これまでは、両親などいわゆる「大人」に守られて生きてきたわけですが、これからは自分自身が「大人」として、自立しなければなりません。社会人として自立した生活ができるか。就職した会社や仕事にうまく馴染めるのか……。ご多分に漏れずこの私も、期待と不安が入り混じる中で新生活がスタートしたのです。


 就職先は全国に事業所がある会社でした。配属前には職種や配属先の希望を伝えますが、もちろん希望どおり進む人とそうでない人が出てきます。私の場合は後者でした。希望とまったく異なる職種を言い渡され、地元から離れた場所にある事業所への勤務を命じられました。なじみのある土地を離れ、初めての1人暮らしを余儀なくされたのです。


 地元を離れる日、私は配属地へ向かうために最寄り駅から特急電車に乗りました。期待と不安、相反する二つの感情を抱えたまま、車窓から見える風景に目をやり、おもむろに音楽プレイヤーを起動すると、流れてきたのは「Clover×Clover」です。旅立ちを迎えようとする、今の自分にふさわしい一曲でした。


 公式HPでも紹介されているように、「Clover×Clover」は「旅立ち」を表現した楽曲です。環境が変わったり、慣れ親しんだ土地を離れるときは、どうしても不安が募るものです。この曲の醍醐味は、そうした不安を抱えながらも決してうつむくことなく、未来への道のりをしっかりと歩もうとする力強さにあると感じます。


 とはいえ、私はこの曲の主人公のように「環境を変えてでも叶えたい夢」とか、「住み慣れた土地を離れて旅立つ覚悟」を備えていたわけではありません。地元を離れることになったのはあくまでも会社の都合です。ただ、「慣れ親しんだ土地を離れても、ひたすらに前を向く」、ただその一点において私はこの曲に共感し、背中を押されました。そして、「いろいろ不安はあるけれども、新しい土地での生活をかんばっていこう」。そう心に決めたのです。


 今ではもう社会人生活9年目。もう間もなく、10年目に入ろうとしています。今は職種も勤務地も変わり、当時とはまったく別の環境に身を置いていますが、「Clover×Clover」を聴くたびに、あのときの希望と不安、一抹の寂しさやノスタルジー等々、雑多に入り混じった感情が昨日のことのように蘇ってくるのです。


■正念場でエールを送る――777☆SISTERS「FUNBARE☆RUNNER」

 サンボンリボンの「Clover×Clover」に背中を押されて故郷を発ち、新しい土地で社会人生活を送ることなった私。当時は営業職でしたが、社会人としての基礎、基本がなっておらず、上司や先輩から怒られてばかりの日々を過ごしていました。仕事の鬱憤がプライベートにも及び、休日はアクティブに動くことすらできない毎日。溜まりに溜まったフラストレーションが体調にまで影響するなど、まさに負のスパイラルに陥っていたのです。


 このままで大丈夫か――そう自問自答してばかりいた私が、当時ヘビロテしていたのが777☆SISTERSの「FUNBARE☆RUNNER」です。この曲はアップテンポの曲調で、タイトル通り「踏ん張れ!」と聴く者にエールを送る、パワフルなエネルギーを帯びた楽曲です。ライブでのバトンリレーをほうふつとさせる振り付けも印象的ですね。


 とりわけ勇気づけられたのは歌詞です。社会人として走り出した私には、春一番レベルの猛烈な向かい風が吹いており、足元には障害物があたり一面に散らばっていました。一歩踏み出すのも容易ではなく、勇気を振り絞って歩みを進めたとしても、障害物につまずいて転んでしまうこともしばしば。そんな当時の境遇が、 「FUNBARE☆RUNNER」の歌詞とオーバーラップしたのです。


 特に気に入っているのが「背中にエール」というフレーズ。前に立ってリードするのではなく、横から「頑張れ」と声をかけるのではなく、後ろから見守る姿勢がいかにも「ナナシスらしい」というか。思うような成果を残せず、周囲の失望ばかり買ってしまう日々でしたが、それでも挫けることなく前を向くことができたのは、この曲に支えられたからにほかなりません。


 その後、ある程度仕事に慣れ、自分なりの要領を覚えてからも、「FUNBARE☆RUNNER」は私の勝負曲でした。大事な商談やクレーム対応に向かう道中など、ありとあらゆるシチュエーションでこの曲を聞き、そのつど勇気をチャージしました。いかなる逆境に直面しても「踏ん張る」力強さをもたらしてくれる、それが「FUNBARE☆RUNNER」が持つ魅力なのかもしれません。


■おわりに――ナナシスと「普遍性」

 この記事では「オ・モ・イアプローチ」「Clover×Clover」「FUNBARE☆RUNNER」の3曲と、これらにまつわる思い出を「ナナシス10周年」を言い訳に振り返ってきました。もちろん、この3曲以外にも私の背中を押してくれた楽曲は山ほどあります。ただ、挙げ始めるとキリがないので、詳細はまた別の機会に譲りたいと思います。

 

 ナナシスに励まされてきたのは、私だけではないことでしょう。とりわけ、何かの課題や壁にぶち当たったとき、はたまた、人生でくじけそうになったときに、ナナシスの曲が前を向くためのエネルギーをもたらしてくれます。実際に、昨日放送された10周年特番でも、「ナナシス楽曲に背中を押された」というお便りが多数寄せられていました。


 これはなぜか。それはナナシス楽曲が「普遍性を帯びているから」というのが個人的な見解です。


 人生は決して平たんではありません。順風満帆そうに見えても、誰もが何かしらの逆境に直面している(していた)のです。壁。困難。逆風。これらは誰もが遭遇する普遍的なライフイベントなのです。そんな逆境に直面して心折れそうなときに、そっと寄り添い、背中を押してくれるのが、ナナシスでありナナシスの楽曲です。そう考えると、ナナシスの曲には高い普遍性が備わっていると思えてなりません。


 冒頭にも書きましたが、10年という月日はあっという間に過ぎたように感じます。長いようで短く、短いようで長い10年間でしたが、ナナシスを推し続けた時間は私にとって貴重な財産と言っても過言ではありません。


 とはいえ、冒頭でも書いたとおり、この10年間常にナナシスのことが念頭にあったわけでもありません。別作品やコンテンツに熱中し、楽曲を聴いたりゲームをプレイしたりする機会が少なくなったこともありましたが、ナナシスそのものに飽きたり、アプリをアンインストールしたりすることはありませんでした。


 つかず離れず、適度な距離感を保ちながら楽しんできたからこそ、こうして10周年をともに祝うことができたのでしょう。なので、これからもこのスタンスで、ナナシスを楽しんでいきたいと思います。

 

 ともあれ、10周年を迎えたナナシスに心から祝福の意を表したいと思います。

 ナナシス10周年、本当におめでとうございます。

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