【#4】つながりの拡散と途絶-EPISODE 2053 SEASON1-006「スター・ライト」から

■RiPoPの登場

 EPISODE.2053 SEASON1-006「スター・ライト」にはアイドルどうしの"バチバチ感"が終始漂っている。「Asterline」の七々星アイ・一ノ瀬マイ・朝凪シオネ、「LuSyDolls」「RiPoP」の恋渕カレン・一ノ瀬ミオリの間には、「切磋琢磨」という爽快感あふれる言葉では説明しきれない、異様な関係性がみられる。


 それは777☆SISTERSにとっての4UやKARAKURIのような「ライバル」ではなく、AXiSのような「エネミー」でもない。お互いに研鑽を深めるわけでも、私怨をもって完膚なきまでに叩き潰そうとするわけでもない。「商売敵」という言葉がふさわしいだろうか。もしくは「コンペティター(競合)」。いずれにせよ、両者の間には、バチバチと激しい火花を散らすような緊迫した空気が流れている。


 今回のエピソードでお披露目となったカレンとミオリはLuSyDollsに所属するアイドルである。LuSyDollsはTokyo-7thを席巻しているトップスタジオで、業界の中でも多くのアイドルを抱える。ピラミッド型の組織形態が特徴で、メンバー間の上下関係も厳しい。その厳しさは「LuSyDollsのトップがカレン。最下位の候補生がミオリ。わかる? 候補生のブンザイでカレンに話しかけないで」というやり取りからも垣間見える。グループ内の序列は絶対のようだ。


 そのトップに立つカレンは、常に自分がNo.1であること、頂点に立ち続けることを望んでいる。その分、パフォーマンスに懸ける意識は高く、「世界で一番カワイイ」を信念に常に可愛く、気高くあろうとしている。


 それゆえに他者に対してもどこか強気で、「シーサイドフェスティバル」で星影アイが乱入した映像を目にし、「徹底的にコテンパンにして誰がトップにふさわしいか教えてあげる」と独り言ちる、「Tokyo-Twinkleフェス」でAsterlineのパフォーマンスに圧倒されたメンバーに対し、「これくらいじゃないと、倒しがいがない」と言い放つなど、攻撃的な態度を取ることが多い。


 一方のミオリは一ノ瀬マイの妹である。ミオリ自身、アイドル活動をしている姉を尊敬し、また、マイもミオリがLuSyDollsの研修生となったことを自分のことのように喜ぶなど、姉妹仲は円満のようだ。純粋であるがゆえにカレンの怒りを買うこともしばしばだが、持ち前の前向きな性格が奏功し、軋轢を生むことなくコミュニケーションを取っている。


 この2人によって結成されたのがRiPoPである。LuSyDolls同様「カワイイ」を売りにしたパフォーマンスが持ち味で、初ステージのTokyo-Twinkleフェスでも一瞬にして観客を魅了。その後の人気投票でも他のユニットの追随を許さない圧倒的多数の票を獲得し、次のステージへと歩みを進めた。

 本エピソードの見どころの一つは、こういったRiPoPのキュートさ、そしてカレンとミオリのストイックかつオフェンシブな姿勢にある。


■Asterlineの挫折

 そんなRiPoPの前に敗北してしまったのがAsterlineである。資金繰りに窮するナナスタWで、一日でも長く活動するべくTokyo-Twinkleフェスに出場したが、その夢は早々に絶たれてしまった。


 Asterlineが直面した挫折は、主に二つある。一つはたったいま述べたTokyo-Twinkleフェスの敗退。そしてもう一つは「つながりの輪」の途絶である。


 RiPoPが「世界で一番カワイイ」を掲げているように、Asterlineもまた「つながりの輪を広げる」ことをモットーにしており、これまでにもさまざまな人とのつながりを生み出してきた。アイドル部のメンバー、商店街の人々、地方村の少年少女に老人たち……。ありとあらゆるつながりが連鎖し、多くの人々に勇気や活力を与える。ここにAsterlineの存在意義がある。


 本エピソードでも、第4話でマイがミオリに「アイドルはみんなをつなぐ」「いろんな人と輪を広げたら、きっとすごいことが起きる」と熱心に語っている。その輪のなかには、もちろんLuSyDollsやRiPoPといったアイドルたちも含まれるだろう。


 しかし、RiPoPはAsterlineに対立する存在として立ちはだかる。特にTokyo-Twinkleフェスでの対決後、カレンがAsterlineに対し捨て台詞を吐いて立ち去るなど、雰囲気は険悪。このような状況で、「つながりの輪を広げる」ことなど夢のまた夢だ。


 ここにAsterlineの課題がある。2034年とは異なり、2053年はアイドル全盛期。ハコスタどうしが激しい競争を繰り広げ、人気を獲得できなかったアイドルは淘汰されてしまう。そんな弱肉強食の理によって成り立っているのが、今のアイドル業界なのだ。言うなれば「アイドル戦国時代」。このような状況のなかで、 Asterlineが思い描くようなつながりの輪を作り続けることは、果たして可能だろうか。


 彼女らを応援してくれるファンに限って言えば、それは容易に実現できるだろう。しかし、前掲のマイの発言にもあるように、Asterlineが念頭に置くのは「みんな」とのつながりである。誰一人として漏れてはいけないし、欠けてはならない。あまねく人びととつながり、輪を広げることこそ、Asterlineの矜持なのだから。


 彼女らのモットーである「つながり」が、果たしてアイドル戦国時代においてどこまで広げることができるのか。カレンやミオリは言うに及ばず、本話には登場していない月城ユウ、タン・シヨン、フラナ・リンといった別のアイドルとどのようなつながりを構築していくのか……。この行方を楽しみに、次回のエピソードを待ちたいと思う。

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