第207話 推し人形
イデアさんが去って1週間が経った。偽ダンジョン作りは順調に進み、あと少しで洞窟掘りが終わる。でも、その後の罠作りが大変だと思うんだけど、一段落はつきそうね。
そして、私は現在、居間でゆっくりとお茶を飲んでくつろいでいた。
「はぁー、ここんとこ、ずぅーと森の家に泊まって穴掘ってたから家帰るの久しぶりって感じ。まぁ、1週間ぶりなんだけどね」
すると、庭の方から花茶が歩いてきた。
「主人様! 主人様の好きな男の人の好み教えて!」
「ぶはぁっ! げっほ、ごっほぉ」
花茶の唐突な質問に私が飲んでいたお茶が気管に入りむせてしまった。
「主人様大丈夫!?」
「だ、い、じょうぶよ。で、花茶急にどうしたのよ」
「花茶、主人様の好きな男の人知りたいの!」
「えー」
好きな男の人かぁ、元の世界では恋愛なんてゲームでしか知らないし、私の好きな男の人も二次元だったしなぁ。うーん、花茶はそう言う事が気になるお年頃だったのね。乙女ゲーのキャラなら推しはシュトルフだけど、そう言えば、私って想像したら何でも作れるのよね? それなら、推しの1/1の原寸大フィギュア作れるんじゃない!!! まじか!? いままで全く考え付かなかったわ! これは、推し人形作りしかないわね!!!
「私の好きな男の人はこのキャラよ!」
私はシュトルフのプロフィールを必死に思い出し、シュトルフの1/1スケールのフィギュアを想像生成で作り出した。
黒髪短髪の眼鏡をかけた青い騎士服を着た青年が現れた。
「侵入者!? どうやって入ってきたの!? 主人様! 花茶の後ろに隠れて!!!」
「いや、これは人形だから動かないわよ」
「ほぇ!? この人間が人形さんなの!?」
花茶は恐る恐るシュトルフ人形を突っついてみた。
「本当だ! 動かないね!」
「ふふーん。見た目もシュト君のままだけど、なんと! 触った感じを人間ぽくすることに成功したいのよ! これが、私の最推し! きゃぁー!!! めっちゃカッコいいわ!!!」
「あれ? 主人様?」
私は推し人形があまりにも出来が良すぎてしまい、推し人形を観察し始めた。
「彼はね、氷結の騎士と呼ばれていて、最初期に仲間になってくれるのよ。氷魔法の凍結が、かなり入り易くて、範囲攻撃の
「主人様?」
「はっ!? 花茶、ごめんなさい。つい、人形が出来が良すぎて」
「主人様はこの人のこと好きなの?」
「好きだけど、この人は現実には存在しないのよね」
「現実には存在しない。ほふぇ? どう言うことなの?」
「そうねぇ。架空の人物。つまり、本の中で出てくる人ってことかな」
「主人様は架空の人が好きなんだね!」
「そうなのよ! それでね、私が一番好きなスチルは主人公に告白するシーンなんだけどね。満月をバックに膝をついて彼が告白するんだけど、もうね。最高なのよ! スチルも作れるかな? あっ、できた! これよこれ!」
私は推しのシュトルフが満月のバックに膝をついて主人公に告白している写真を花茶に見せてあげた。
「カッコいいね!」
「でしょ、でしょ、でしょ!!!! 最初はゲームを進めていく上で使いやすくて使っていたんだけど、使っていくうちに愛着湧いてきちゃってね。そして、このスチル! 私の最推しになったのよね」
「ねぇねぇ、この絵もらってもいい?」
「いいわよ! 何枚でも作れちゃうからね! はい、これ」
「わーい! 主人様ありがとう!」
「そうそう、花茶はどんな男の人が好きなの?」
「えっ!? 花茶そんなこと考えたことないよ」
「あら、そうなの? 私はてっきり好きな人ができたからこんな事聞いていたと思ってたんだけど、違うのね」
「ライ、あっ、違うよ。花茶が知りたかったから主人様に聞いたの。それじゃあ、主人様! 花茶急に走りたくなってきたから行くね!」
花茶は慌てて庭から走り去っていった。花茶、ライネルに私の好きな人聞いてこいって言われたんじゃないかしら。ライって言った時点で確定よね。これは、イデアさんの差金かなぁ? まぁ、別にいっか。それよりも、推しのクオリティが高くて最高すぎる!!!
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