第190話 獣はメイド達に感謝する 前編

 私は2日間の激務をやり遂げ家に帰宅することができました。


 夜に急に呼ばれたかと思えば、人魚姫の接待。その後、エルフの国との共同開発中の転移魔法陣の試運転に参加したら、何故だが竜谷ドラゴンバレーに飛ばされてしまい。やっと、帰ってきたのに、これはどういう事なのですかね!


 倉庫に大切に保管していた荷車には砂糖袋がびっしりと積まれ。私がもらった懐中時計を使いメイド達は凪さんと楽しく会話している。なんで、私よりもメイド達の方が凪さんと仲良くなっているんですか!!!


「イデア様お帰りなさいませ」


「あ! イデアさんおかえりなさい」


 半透明の凪さんが笑顔で、私に手を振ってくれました。


 はぁーああ!!! 今までの苦労が凪さんの笑顔パワーで一瞬にして癒されてしまいましたぁーあー!

凪さん、んぅーーんなっぎぃっさぁっぁん!!!

好きぃ!!!!!! 私の心は全て貴方のものです!!!

 

「カルグガクハァ(ダメだこりゃ)」


 クティスは凪さんの笑顔に悶え喜ぶイデアを見て呆れていた。


「あの、どうして凪さんはメイド達と仲良くなっているのですか? それに、どうして荷車一杯に砂糖なのですか?」


「砂糖が沢山欲しくて一昨日連絡したんだけど、イデアさんが家にいないっていうから、砂糖の調達をメイドさんにお願いしたのよ。それで、話が弾んで仲良くなったのよ」


「はい、凪様の言うとおりでございます。それに、イデア様少しよろしいですか」


 チェルーシルが私の耳元で囁いた。


「イデア様、凪様はイデア様の事をイケメンと言っていました。それはすなわち凪様はイデア様を異性として認識しているという事。つまり、イデア様の行動次第で凪様と結婚できる可能性があります」


 凪さんと結婚できる可能性がある。そりゃあ! 私はどんな手を使っても凪さんと結婚しますよ。チェルーシルに言われなくたって‥‥。本当に凪さんは私の事をイケメンと言ってくれたのですか! いや、待ってください。思い出せば私の事をクソイケメンと言っていました。クソと言われて悲しかったですが、イケメンと言われていますよね? もう! 凪さん! 嫌がる素振りが多すぎて、凪さんは私の顔は好みではないと考えていましたが、違ったのですね!


「チェルーシル後で凪さんとの会話を詳しく聞きますからね」


「かしこまりました」


「なぎさーん!!!! 貴方のイデアが帰ってきましたよー!!!!」


「カルグ(ダメだよ)」


「勝手にメイドさんと話しつけてごめんなさいね」


「いいえ、私が帰ってきてからじゃ準備は間に合いませんでしたからね。明日、明日は! 凪さんの元へ行けます。 凪さんと離れたからというもの私はとても寂しくて、寒くて、さっきまで竜谷ドラゴンバレーに飛ばされて一生懸命帰ってきたんですよ! 凪さん褒めてください!!!!」


「ドラゴンバレーに飛ばされたって言われても、うーん、よく頑張って帰ってきましたね。偉い偉い」


 凪さんは手を出してくれました。


「なぎさーん! はぁー。早く貴方と元へ行きたい。優しく温かな貴方の手を感じたいです」


「それじゃあ、明日砂糖よろしくね!」


「あっ、待ってください! 私はもっと凪さんと話した」


 懐中時計から光が消え、凪さんの姿は消えてなくなりました。


「イデア様、凪様の情報をお話ししたいのですが、今話した方がよろしいですか?」


「凪さんと話した者! 皆! 私の執務室に集合です!」


「かしこまりました」


 その後、私は凪さんと話したことのあるメイドを執務室に呼び出し、1人ずつ話を聞きました。


「エーデルは最初に凪さんと会話したのですね」


「はい! 最初、凪様を怒らせてしまいましたが、今じゃ、凪様と友達になりました!」


「で、凪さんの好きな異性のタイプは分かりましたか」


「ん? 好きな異性のタイプですか? 私はイデア様の事を考えてイデア様がどれだけ偉大なお方が凪様に話していました!!!」


「それは、よろしい。私の好感度を上げる戦略をしたという事ですね。金貨1枚あげちゃいましょう」


 私は机の引き出しにしまっていた金貨袋から金貨を取り出しエーデルに一枚あげました。


「えー! 金貨もらっちゃっていいんですか!」


「これからも、私がどれほど偉大であるかを凪さんに伝えてください。それでは、次にメルトを呼んできてください」


 エーデルが執務室から出ると、次はメルトが入ってきました。


「それでは、メルトは凪さんとどんな会話をしたのですか」


「イデア様が奥様達をどれだけ愛していたかをお伝えしました。凪様はイデア様の奥様の話は興味がなかったみたいであまり話せませんでした。頭蓋骨を見せたら何故だが凪様は引いているようでしたね」


「メルト、今すぐに廊下全てに雑巾掛けしてきなさい」


「えー!!! どうして雑巾掛けなんですか! エーデルは金貨貰ってたのに」


「はい、つべこべ言わずに雑巾掛けゴー!」


「はーい」


 メルトは渋々執務室から出ていった。


 チェルーシルとメテラールト、サファイ、ターレと話さなければいけませんね。

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