第3話 ターゲットの真相

 さっき姉ちゃんが那月なつきさんに言った『今度のは涼介ってわけ?』の詳細を訊くことにした。


姉ちゃんは俺の部屋にあるベッドのふちに座っており、俺は隣にいる…。



 「この間、那月が言ってたのよ。バイトの先輩と初Hしたって」


「そうなのか…」

これが教育に悪い理由だな。


「その人の部屋でHしたらしいんだけど、酒に酔った勢いでベッドに押し倒されたみたいでね…」


酔った人の押し倒しなんて大したことないと思うが…。那月さんは自分の意志で受け入れたんだな。


「那月はそのHに満足したらしいよ。『またりたい!』って言ってたね…」


「またやれば良いんじゃないの?」

何が問題かわからん…。


「事はそう単純じゃないの。その人が後日、那月に謝ったのよ。『酔った勢いでっちゃってごめん! 2度としないから!』ってね」


その人が相手しなくなったら、どうやって“やりたい思い”を発散するんだ?


「その話を聴いた少し後だったね。『涼君と』って言い出したのは」


「ちょっと待ってくれよ! それって…」

俺の考え過ぎか?


「那月はあんたとりたいのよ。さっきのを観て確信したわ」


那月さんが俺を押し倒している時だな…。


「そういう行動はもっと後にやると思ったけど油断したよ…」


これが“ターゲット”の真相か。俺と那月さんは近所だから、すぐることができる。彼女の条件に、俺はピッタリ当てはまるだろう…。


「涼介が那月をどう思ってるかわからないけど、今の那月はHのことで頭が一杯なのよ。これからは2人きりで会わないほうが良いんじゃない?」


「えっ? 何で?」


「あんたには気になる子がいるんでしょ? 那月に手を出すなら、その子は諦めなさい。逆もまた然り。浮気者になるのは許さないから」


「わかってる…」

姉ちゃんの厳しい表情を見れば、真面目に言ってるのは一目瞭然だ。



 「もし良かったら、私があんたの女慣れを手伝うけど?」

姉ちゃんが突然、突拍子もないことを言う。


「急にどうしたんだよ?」


「涼介が将来、悪い女に引っかからないようにするためだよ。弟が情けないと、姉の私の立場がないからね…」


場合によっては、姉ちゃんだけでなく父さんと母さんにも迷惑をかけそうだ。それだけは絶対避けないと。


相手は姉ちゃんとはいえ女性だ。那月さん以外の女性と接してきた経験が皆無の俺にとって、貴重な経験になるだろう。


「…お願いしても良いか? 姉ちゃん?」


「わかった。ビシバシ教えるから覚悟しなさい!」


こうして、俺は姉ちゃんの女慣れを受けることになる…。

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