夜の子達は朝に仕える

白灰黒ノ猫コ

第1話→終わり。 土下座。 お姉さん。

 止まらない。 止まらない。 止まらない。


 誰かが五月蝿く騒いでる。

 あぁ……本当に五月蝿い。 すっごく眠いんだよ……もう眠いんだ。


 体から熱が血液と共に溶け出していくのがわかる。 眠くて、寒い……そして、とても痛い。


 もう、瞼を開ける力すらなくて……呼吸も辛いな。

 ねぇ、もう寝かせてよ。


 誰の声だかわかんないけど、すごく怒鳴って私のお腹を必死に押さえてる。


「ダメ!ダメぇ!!お願い……息をして!お願いだから止まってよぉ!!」


 真っ赤に染まったタオルで必死に傷跡を押さえても血は止まらない。

 呼吸も浅くなってきた。 急激に熱も冷め始めている。

 必死に手当てする彼女だってわかってるはず、もう助からないんだって。

 それでも彼女は必死に、祈るように手当てを続ける。


「お願いします!!誰か、助けて下さい……お願いです、私の妹を助けて下さい!!」


 あぁ、なんだ。 この声、お義姉ちゃんか。


「ぁ……ゔ、ぇ、あ……ゴポッ」


 声を出そうするけど……無理だ。 血が込み上げてくるのと、もう話すだけの力が私の身体には残ってないみたい。


「お願い……お願いです、神様神様神様ぁあ……妹を助けて下さいぃ!!」


 私が最後に聞いたのは……とても悲痛なお義姉ちゃんの絶叫だった。












「そんで?どうしてお姉さんは土下座をしているんですか?」


 今、私はとっても困ってる。 なんでかと言うと、めっちゃくちゃ綺麗なお姉さんが目の前で地面に額が減り込むんじゃないかってくらいに土下座しているから。


「大変、大変申し訳ございません!!」


 いや……いきなり目が覚めるなり、知らんお姉さんの土下座を見せられて困るんですが?


「あの……とにかく、説明してくれません?」


 お姉さんの方をなるべく優しめに掴み、土下座を辞めさせようとするも……お姉さんはびくともしない。


「うぐぅ、ごめんなさいごめんなさい……本当にごめんなざいぃいい!!」


 土下座を止めるどころか……お姉さんはいきなり泣き出し余計に額を地面にめり込ませた。


 いやいや……まずは説明せいよ? っとツッコミたくなったけど、大人のマジ泣きに引いてしまったのと弄ると余計に面倒臭くなりそうだったので、とりあえず様子見することにした。


 それから様子見する事、約2時間。

 まだお姉さんは泣いている。 ものすっごく泣いている。


「……ねぇ」


 イライラするなぁ。


「ごめん、なざい、ごべんなざぃ」


 イライラ、イライラ、イライラ。


「いい加減にしろぉ!!」


 私はキレた。 盛大にキレた。

 土下座するお姉さんの大きくて形のいいお尻を目一杯蹴り上げてやった。


「ひぎぃいいいい!?」


 あ、やば……かなり良いところに蹴りが入っちゃったかも。

 私の怒りの一撃が余程痛かったのか、お姉さんは声にならない声で呻き痙攣している。


「あびゃびゃ……ひぎぃ」


 そしてしばらくすると……お姉さんは……盛大に失禁しながら失神してしまった。


「……どうすんの、これ?」


 目の前の惨状に私は立ち尽くすしかなかったのである。




  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜の子達は朝に仕える 白灰黒ノ猫コ @shirohaikuro5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る