胡蝶日記

ちくましゃん

第1話 9月第1週

9月1日

「ここは…?」私が目を覚ますと、目の前にはビスケット柄をした天井があった。私は綿みたいな布団にくるまれ、お菓子の家みたいな装飾の家の中にいた。「誰かいますか?」そう言うと奥からどことなくムニムニした人が来た。私は起き上がる。…体がベトベトする。ここはお菓子の家だった…。


9月2日

「起きたか?」私が目覚めると、目の前にグミ男がいた。夢じゃなかった…。私は頭を抱える。手がベトベトする。…気持ち悪い。「…お話の前に、シャワー借りても良いですか?」「えぇ、構いませんよ。」飴で出来たシャワールームに入り、蛇口を捻る。…降ってきたのは大量のシリカゲルだった。


9月3日

主人から大量の菓子をもらった私はベトつく体を動かしながら町を練り歩いていた。あのビルは煎餅、あの商店街はビスケット…。通りを抜けると川を見つけた。その川は心なしかいつもより青い気がした。これは何で出来てるんだろ?私は手を伸ばした。「見つけた。」ソラがこの世界に来た。


9月4日

木造の橋を渡った先は八重洲口前のような高層ビル群になっていた。私はソラの手を握る。ソラは一瞬ビクッとした後、優しく強く握り返してくれた。愛犬を探さなきゃ。「あのビル、入ってみようぜ。」その扉は何故か手動のものだった。2人で扉を開けた。…そこは新緑生い茂る草原だった。


9月5日

え…なんで…私たちは恐る恐る中に入る。周りを見渡し、後ろを振り返ると、そこに扉はなかった。「…えどうやって帰るの?!」扉があった場所をうろうろしてみるが、何も手応えがない。「ソラ…どうしよう…?」そこで私はやっと気づいた。ソラがいなくなっていた。世界が無機質のようだった。


9月6日

「ソラ…どこ?」私は周囲を見渡したが、草原以外の何も見つからなかった。フラフラと私は歩きだす。草は腰ぐらいの長さまであって地面はほのかに温かかった。それは唐突だった。急に地面が1mほど落ちたのだ。私は必死に草を掴んで飛ばされないように耐えた。「なんなの…」答えは出なかった。


9月7日

どうにかここから脱出しなければ。命がいくつあっても足りない。私は必死に草を掴みながら呟いた。「帰りたい…!」カラーン…。空から鐘の音が聞こえたのはその時だった。急に周りの草が私の身長の2倍ほどまで伸びた。どこかから唸り声のような地響きが聞こえる。次の瞬間、私は家の中にいた。


コラム:情報を整理しよう

都市開発によって取り壊された公園。その公園のシンボルだった大木の根元には人間が入れるほどの大きさの穴があり、その穴に入るといつも私たちが住んでいる世界とは別の世界に侵入することが出来る。この世界で今分かっていることはお菓子の地区とビジネス街の地区が隣で並んでいること、ペッパーやはっちゃんがこの世界にいるかもしれないということ。そんなところだ。んじゃ、今回はこれにて終了、またね!

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胡蝶日記 ちくましゃん @shosetsu_zen

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