第31話 演技の道化師
「...うっ、ここは...?」数メートル先すら見えない暗闇の中で、僕は目が覚めた。すぐ横には、同時期に起きたレオンがいた。
「はぁ、大丈夫か煉瓦?...ここは一体、どこだ?一応、動くことは出来るみたいだな。」今の状況を確認しながら、僕らは周りを調べた。その時、上から無数のスポットライトが僕らを照らし出した。
「っ、眩しっ!!」光に驚いていると、遠くからさっき聞こえた幼い声がした。
「(*^_^*)エヘヘ!二人とも、ようこそ!ワタシの『
「だ、誰だお前、『SPEC』の奴か?そんなのはどうでもいい。早くここから出してもらおうか?」レオンは怒り口調でアントワネットに頼んだ。しかし彼女はキョトンとした顔で答えた。
「ナンで?(?_?)ワタシはミンナとアソビたいんだよ!さ、早くイッショに演劇しようヨ!(^o^)」そういって彼女が手を叩いた瞬間、僕らはステージに強制的に移動させられた。
「えっ!?な、なんで...!?」
「さっき言ってた感じ...今のも、あの子の能力だろうな。この能力の空間内では、おそらく俺等は彼女の支配下にある。どんな事をしても、多分無駄なんだろう。」レオンはそう言うと、ため息をついて彼女に尋ねた。
「はぁ...分かった分かった、お前と遊んでやるよ。それで、俺らはお前と何をすれば良いんだ?演劇って言ったって、台本はどうするんだよ?」そう言うと、アントワネットはウキウキで答えた。
「それならマカセテ!(^^♪ワタシが今から演劇の設定を決めるから、二人はその決められたキャラを演じてね?(*゚∀゚)それじゃあ行くよ、それ〜!!」その瞬間、周りの景色が夜の暗がりの裏町に変わった。それと同時に、僕らにはそれぞれアイテムが渡された。僕には『被害者B』と書かれたカードとセリフが書かれた紙、レオンには『
「はっ...?猟奇殺人犯って事は...も、もしかして!このナイフで、今から俺があいつを殺さなきゃいけないのか!?」レオンは驚き、アントワネットに尋ねた。
「そうだヨ?(・・? 二人には今から、サスペンス劇のワンシーンを演じてもらうから、その持ってるナイフで彼を殺してもらうよ。」
「ふざけんな、そんなの...!」レオンが言うのに重ねるように、少女は言った。
「ダイジョーブダイジョウブ!(*^^*)ココで傷ついても、後で出れれば治るからネ!ワタシが満足したら開放シテあげる。ちゃんと約束シテもいいヨ?(・・?」アントワネットは首を傾げて言った。
それを聞いたレオンは、少し動揺した表情をしていた。
「れ、レオン?どうしたんだよ。ここで傷ついても治るから、気にせずに僕をヤればいいんじゃないか?そうしないと終わらないみたいだし...」
「あ、あぁ...そ、そうだな...(このナイフ、本物の刃がついてる...これでヤッて、本当に大丈夫なのか?それにもし、直せるのが傷だけだった場合、コイツを殺したら...)」レオンは持っていたナイフを見て考えていた。そう、実はこれがアントワネットの戦略だったのだ。
「(えへへヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ、このままこの人が相方をコロせば、相手は勝手に一人にナル。後は無限に続くワタシの劇の中に閉じ込めれば、この人はきっとオカシクなって、自分のナイフで勝手にシぬ。もしこのままヤラなくても、この空間からはニゲられない。これがワタシの『
数十秒考えた後、レオンは僕に言った。「...ふぅ、分かった。やるよ。...行くぞ、煉瓦。」そう言うと、レオンはナイフを構えて僕に向かって走り出した。
「よし!えぇっと...『な、何だお前は!や、止めろぉ!!』」カードに書いてある台本のセリフを一生懸命に言う僕の腹を、レオンは持っていたナイフで切りつけた。その瞬間、僕の服は赤くなり、お腹からは赤い鮮血が滴った。そのまま僕はレオンに何度も切りつけられた。
「アハハっ!スゴイ、いい演技ダワ!!(^o^) そのままサイゴまでヤッちゃって!(^^)」アントワネットは笑いながら僕らの劇を見ていた。そのまま切りつけられた僕は血まみれになって地面に倒れる。
「はぁ...はぁ...」レオンは倒れていた僕の上に馬乗りになり、僕にトドメを刺して息を切らしていた。僕はぐったりとして動かない。
「よし、いいわ。このシーンはこれでオッケー。それじゃ、次の劇に行きましょうか?(^^)」アントワネットはニヤニヤしながら周りの景色を変えようとした。
「おいおい、あれで満足しなかったのか?欲張りな監督さんだな〜。」その時、アントワネットの後ろに、突如ナイフを構えたレオンが現れたのだ。
「えっ!?(・.・;)な、ナンで!?」そのままアントワネットはレオンに腕を切りつけられた。
「イヤぁぁああ!!痛い、痛いよぉ!!(ノД`)シクシク」そのまま、アントワネットは痛みで後ろに倒れながらも、レオンに質問をした。
「な、ナンで...?なんでいるの?じゃ、じゃぁ、あの人を殺したのは誰ナノよ!?」
「殺してないよ、俺と煉瓦が演技したんだ。お前を欺くためにな。」
...〜実は最初に切りつけられた時、僕は全く痛くないことに気がついていた。
「(あ、あれ?痛くない。何でだ?)」そう思っていると、耳元でレオンが僕に伝えてきた。
「今から俺があの子を倒す。お前は殺されるふりをしていてくれ。」そう言うと、レオンは能力で作った自分の魔力だけの思念体を動かしながら、背景の景色に同化してアントワネットに気付かれずに近づいていたのだ。
「ナイフは俺の持ってた血糊付きの刃のないナイフに最初すり替えておいたんだ。結構リアルだよな、あのナイフと血糊。普通に使ったら、女優さんが気絶するレベルだぜ。」そうしてトリックを説明し終えたレオンは、本物のナイフを構えながらアントワネットに歩み寄った。
「さぁて、今からお前が出来る行動は2つだ。1つは俺等を閉じ込めるためにこのまま死ぬ。もう1つは生き残るために俺等を開放する。どっちにする?」
「えぇ?う、うぅ~ん...(。ŏ﹏ŏ)」悩んでいる彼女の足に、レオンは躊躇なくナイフを刺した。その痛みに、アントワネットは再び悲痛な叫び声を上げた。
「イヤぁぁああ!!止めて、痛いよぉ...(:_;)」そう言うと、レオンは鬼の形相でまくし立てた。
「それなら早く俺等を開放しろ!死にたくないんならなぁ!さ、次はもう一方の足だ!3...2...1...」そう言ってナイフを振り上げた。
「嫌、嫌、イヤぁああ!!!」
次の瞬間、周りの景色は元に戻り、持っていたナイフもカードも彼女も跡形もなく消えた。
「...ふぅ、なんとか勝てたな。」レオンはため息を1回ついて、血糊にまみれている僕にケラケラと笑いながら近づいてきた。
「お前...w、ヤラれる演技下手すぎかよw大根役者過ぎて笑うところだったわw」
「そんな、突然言われて出来たら苦労しないよ!」そうしていると、奥の路地に向かって這いずっているアントワネットを見つけた。
「ハァ...ハァ...に、ニゲなきゃ...!(;´Д`)こ、殺される...!」
「あ!あいつ、逃げようとしてる!」僕は急いで彼女を追おうとした。
「いや、任せろ。今1つ、良いことを思いついた。」すると、レオンはアントワネットに言った。
「おい、お前。」アントワネットに問いかけると、レオンは次に、悪意に満ちた顔を作り、不敵な笑みで言った。
「また来なよぉ、その時は別の劇でお前を殺してやる。」
「ひ、ヒィ!イヤぁああ!!。゚(゚´Д`゚)゚。」アントワネットは恐怖で泣きながら逃げていった。
「ハハハッ!まだまだ演技の腕は落ちてないか。良かった...なんか言われる所だったぜ...」レオンは笑いつつ、首からかけていた光る銀の鏡の入ったネックレスに目線を落として呟いた。
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