第28話 猫は人には懐かない
次の日、村のメンバーを全員集めての集会をした。どうやら組織全員が集まるような集会は、この組織ができてからの五年間で初めてのことらしく、昔から所属している組織のメンバーも困惑していた。そうしていると、レオンが運転してきたトラックの荷台にスケイルズが乗って、集会を開始した。
「皆、集まってくれてありがとう。今回皆に集まってもらったのは、俺たち革命軍の『D.o.G』が警察組織の『SPEC』と激突した事についてだ。もしかしたら、知らないやつの方が多いかな。」その事実を知らなかった半人族の者は、その事実に驚愕した。
「ホントウか?ケイサツとタタカうなんてハジめてだが、ダイジョウブなのか?アイテはエリートなんだろ?」鮫の半人族の男、ロドンが尋ねた。彼はケープさんと昔からの知り合いらしい。
「あぁ、確かに個人単位での戦闘力差は大きいだろうな。何より、奴らは主にデュオで行動してる。いつもみたいにバラバラで行動したら、それこそ皆一人ずつやられてお陀仏だ。」そう言ったスケイルズは、着ていたコートのポケットからメモ用紙とペンを取り出した。
「だったらこっちは、この人数の多さで勝負するしかねぇ。持ってる物を最大限に活かすんだ。一度、人間のメンバー同士、半人族のメンバー同士でバディを組んでくれ。ケープ、そっちのグループは任せたぞ。」
「おう、任せておけ!おーい皆、一番仲がいいヤツと組んでくれよ?あとで痴話話はなしだぜ?」ケープさんの声掛けに、半人族のメンバーは状況がうまく掴めぬまま集まった。僕は、その外でやってる純人族メンバーのグループの方に行った。組み合わせは、スケイルズが率先して決めていた。
「レオン、一角。二人は主に潜入とかで一緒になるから、そこで頼む。蠅、お前は俺と一緒に作戦を練る手伝いをしてくれ。よし...あとはお前か...」
「あ、あの、僕は誰とですか?もしかして、ヒキちゃんとですか?まさか、テディさんとか...?」
「馬鹿言うな、あの二人は組織の戦闘要員じゃねぇ。一応は組織が匿ってる一般人だ。」そう言うと、スケイルズは何かを思いついたように言い出した。
「あっ...いい事思いついた!お前には一人、とってもクールでいいヤツを紹介してやるよ。」そう言うと、スケイルズは村の中でも暗がりな方へと歩いていった。
「何だよ人間、僕に何の用だ?」本能的な警戒心を切らずに、ミケはスケイルズに圧をかけながら言った。スケイルズはニコニコと笑いながら、僕を指さして言った。
「ミケ、お前のバディにコイツを推薦したいんだ。お前ら、仲良くしろよ?」その言葉に、僕とミケは目を白黒させて驚いた。
「はぁ?何でよりによってこんな弱い雑魚が僕の相棒なんだよ。いるだけで足手まといだ。そんなのいらない!僕は一人で十分だ!」ミケの訴えに、僕も重ねて言った。
「そ、そうですよ!いくらなんでも無茶苦茶過ぎますって!だってこの子、超がつく程に人間が大嫌いじゃないですか!(それに、こんなヤツと仲良く出来る気がしないよ...)」僕はスケイルズに訴えた。だが、スケイルズは僕とミケの訴えを却下した。
「お前ら二人の役割が前衛で、どっちも似たような感じなんだ。すまないが、そこで仲良くやってくれ。...っ!悪い、ちょっと行ってくる。」スケイルズは通知がきた携帯を見ながら走っていった。僕らの間には、まるで入学式初日の新しいメンツが集まった時のような得も言われない空気が漂っていた。
「あ...え、ぇっと、さ、咲田煉瓦です。よ、よろしく...」僕は声を振り絞り、そのまま軽く手を出した。ミケは、僕の手を握らず、ただ嫌な顔をして僕の事を見ていた。
「えっと、き...君の名前は...ミケで合ってるよね。出身とかは...?」そう尋ねたが、彼はそのまま踵を返し、僕に言った。
「チッ...弱い奴が僕に話しかけんな。」そうして、村の中へと消えていった。
「...っく、くぅ〜ムカつくなぁあいつ!何様だよ、ったく。」僕は出した手を強く握り、静かに一人で怒った。
「ウハハハ、いやはや、実に滑稽だ。貴様の戦闘力など、あの猫の小僧に比べたらただの木偶の坊だからな。」カルマは心の中で僕を嘲笑う。
「まぁそう躍起になるな。あれほど強がってはいるが、あの小僧も所詮はただの雑種だ。強さは、木偶の貴様と何も変わらん。」その意見に、僕は疑問を持った。
「そ、それは...どうなのかな、少なくとも、いつもの僕よりは強い気がするけど...」そう言うと、カルマは得意そうに言った。
「分かっていないな、貴様。『強さ』というのは、何も腕っぷしや魔力の量、持っている能力だけではない。それ以外の尺度がなければ、そいつの持つ全ての『強さ』というのは測れないのだ。」いつもやかましい事しか言わないカルマに珍しく正論を言われて、僕はつい黙ってしまった。そのまま僕は一人、トボトボと村を歩いていった。
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