手向けの花束

テラル

第1話 プロローグ

「………」


近くから嫌となるほど鬱陶しい蝉の声。

じんわりと滲む汗。

そして眼の前には俺が愛した人の名前が彫られた墓石。

俺はその墓石に2つの花束を添える。

周りには誰もいない。

俺は独り言で呟く。


「俺はお前を許さない。」


その声に返答はない。

俺は彼女を忘れられないでいる。

それほど俺は彼女を愛していた。

いや、今も尚、彼女を愛している。

だが、それと同じぐらい俺は彼女を…

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