サレ妻は復讐する為に舞い戻った。~二度目は夫に殺されたい~
三愛紫月
第1話 2023年11月9日《修正済》
身体中から、汗という汗が吹き出していた。
「
「あっ、大丈夫よ。もう、起きるわ」
隣で声をかけてきた夫に話し、私は寝室を出た。
洗面所に行き、顔を洗う。
脇腹辺りを触ったり、胸の辺りを触るけれど……。
私の身体に異常は見られない。
キッチンに行き、蛇口を浄水に合わせてから水をごくごくと飲む。
大量にかいた汗のせいで、私の身体は水分を欲しがっているのがわかる。
「はぁーー。おはよ。これ、スマホ」
「あ、ありがとう」
私は、夫からスマホを受け取った。
「パジャマ着替えるかシャワー浴びたら?風邪ひくよ」
「あっ、うん。そうだね。着替える」
私は、寝室に行きタンスから部屋着を取る。
動揺が、バレてはいけない。
夫から受け取ったスマホの画面を見つめる。
8月9日……。
何年の?調べると2023年なのは間違いなかった。
ちょっと待って……。
って事は、三ヶ月しかないの?
私は、何度もスマホの画面を見つめた。
日付は、全く変わらない。
神様が私にくれた時間は、たった三ヶ月って事なのね。
「京花、俺早いから朝御飯、まだなら買ってくよ」
「あっ、うん。今日は、そうしてもらえると助かる」
「わかった」
私は、ソワソワとしながら寝室に向かう。
暫くすると夫の足音が寝室に近づいてくる。
「ってか、今日仕事休みなよ。あんなに汗かいてたんだから……。風邪なら、弁当屋は無理だろ?」
「わかってる。後で、かけとくわ」
「じゃあ、着替えたら行くから」
「うん。行ってらっしゃい」
夫は、スーツをとって着替えるとすぐに家から出て行く。
私は、夫を見送った後、すぐに洗面所に行きパジャマを脱いだ。
若い頃と違って、プヨプヨとした腹回りに、傷1つないのがわかった。
垂れた胸にも傷はない。
「よかった。生きてる」
私は、安心した。
部屋着に着替えながら……。
私は、何故か過去に戻ってきたのだと思った。
だって、私は…………。
2023年11月9日。
夫の愛人によって殺されるのだから……。
殺された理由は、私が離婚に応じなかったから……。
あの時、素直に離婚に応じるべきだったのかも知れない。
でも、出来なかった。
あの日、私は光の宿らない目で夫の
『やっぱり、私はあなたが好き』
そう思ったから、またここに戻ってきた。
私の【死】を回避する為にたった【3ヶ月】で何が出来るのだろうか?
ベッドにゴロンと横になり、私は目を瞑り考える。
・
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・
・
【2023年11月9日】
大量の食材と共に帰宅した私は、玄関の鍵を閉め忘れた。
「ふぅーー。これで、2週間はいけるかなーー。あっ!!鍵閉めたっけ?」
冷蔵庫に食材を入れた私は、パタパタとスリッパの音をたてながら玄関に向かう。
鍵は、縦になっていた。
やっぱり、鍵を閉め忘れていた。
玄関の鍵を閉めようと近づいた瞬間だった。
ガチャリ……。
玄関の扉が開く。
「あの、どちら様ですか?」
私は、家に入ってくる人に声をかけた。
その瞬間だった。
ザッ……。
振り下ろされた何かによって、腕に鈍い痛みが走る。
「や、やーー」
私は、痛みと出血にパニックになりながらリビングへ滑りながら走って行く。
「いい加減、別れてくれない?子供も出来ないくせに、強情をはる意味がわからないのよ。あんたみたいな奴は、死んで当然なのよ」
雨でもないのに、真っ黒なレインコートを来ている。
その姿を見て、この女が、私を確実に殺そうとやってきたのがわかった。
「お腹の子の父親は、優太朗さんなのよ。子供が大きくなっていくのに父親がいないなんて可哀想でしょ?あんたさえいなければ、あんたさえいなければ……」
逃げようとする度に、刃物が何度も何度も振り下ろされて……。
ドタッ……。
体が鈍くなり、私は床に倒れてしまった。
それでも私に馬乗りになり、何度も何度も刃物を突き刺してくる。
私の眼光は、最後の瞬間までそいつを捉え続けた。
ニュースで聞いた事のあるめった刺し状態とは、この事なのがわかる。
もうすぐ、死ぬ。
それだけが、わかった時。
夫が、帰宅した…………。
「
「優太朗さん。この人が悪いのよ。だって、お腹に赤ちゃんがいるのを話したのに優太朗さんと離婚してくれないんだから……」
夫は、彼女ではなく私に近づく。
そして、私を抱えあげる。
「ねぇーー。優太朗さん」
「触るな!!!」
夫の怒鳴り声に浮気相手の女は、驚いた顔をする。
「優太朗さん……私を愛してるんでしょう?」
「こんなの人殺しじゃないか!京花と離婚したとしても、俺は京花には死んで欲しくない。生きていて欲しいんだ。こんな形で別れて平気で君とお腹の子供を育てられるとでも思ってるのか?もし、そう思っているなら君はどこかおかしいよ」
「黙れ……」
「黙るわけないだろ!10年も連れ添った妻を殺されてるんだ!もう少し待って欲しいって言っただろ?どうして、わかってくれなかったんだよ」
「黙れーーーー」
・
・
・
・
・
ハッ!!!!!?
どうやら私は、一瞬寝落ちしてしまったようだ。
あの日、光を失くした私の頬に優太朗の涙が当たったのを覚えている。
抱きしめてくれた、優太朗の温もりも……。
冷たくなった私の体にしっかりと伝わっていた。
だけど、私はあの後、優太朗に何が起こったのか知らない。
だって、目が覚めたらここにいたから……。
興奮していた彼女が、もしも優太朗を……。
考えただけで、涙と震えが止まらなくなる。
私は、【優太朗を愛してる】
だからこそ、優太朗には生きて欲しい。
その為に、私が出来る事をしよう。
私は、愛する優太朗の為に【復讐】を誓った。
それは、簡単な【復讐】
私が殺されるだけの【簡単】な事……。
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