信じる心を持つ勇者
和柄 雅
王子様がドラゴンと戦ってお姫様を救う物語
このお話は、王子様が冒険の旅に出て、ドラゴンに囚われたお姫様を救った物語です。
むかしむかし、あるところに王子様とお姫様がいました。
2人は幼い頃から仲が良く、大人になって、ついに結婚を約束しました。お城では、婚約パーティーの準備で毎日大忙しです。
数々の国の王様達が、お祝いの挨拶に訪れました。
ある日、ドラゴンの国の王様が挨拶に来ました。ドラゴンは、美しいものに目がありません。お姫様をひと目見たドラゴンは、たちまちお姫様を気に入りました。
「なんと美しい娘だろう、あなたは、私のお嫁さんになりなさい。私はこの人間よりもずっと強い。妻となれば、世界中の宝物を差し上げましょう、わたくしと結婚してください」
結婚が決まっているお姫様に、プロポーズをしたのです。
「お断りいたします。私のただ一人の相手は、王子だけですから」
もちろん、お姫様は即座に答えました。
「なんと失礼な! もうよい! 我が城にて結婚式をあげる!」
怒ったドラゴンは、お姫様を掴み取り、止めようとする周りの兵士達を魔法の力で跳ね除けて、天高く飛んで行きました。王子様は叫びました。
「姫! 私は勇者となりて、必ずや貴女を救います! どうか信じて! ご無事でいてください!」
こうして、王子様の大冒険は始まりました。
ドラゴンに打ち勝つには、妖精の作った魔法のお料理を食べて、魔法の体を作らなければいけません。王子様はさっそく妖精の家に向かいました。
広大な草原を歩き、ゴツゴツした岩山を越え、水飛沫でひんやり涼しい滝の裏側も通りました。香りの良い花畑の道を進むと、やがて妖精の住む森が見えてきました。
妖精の住む森は、別名お菓子の森。カラフルなキャンディの樹、お砂糖とビスケットのレンガ道、チョコレートの滝、すべてが甘くて美味しそうなお菓子でできていました。けれども、お菓子は妖精の大切な宝物。勝手に食べてしまうと最後、永遠にお菓子を食べられなくなる怖い魔法にかかると言い伝えにあります。さすが勇者の王子様、お菓子を食べたい誘惑に負けず、妖精が暮らす家に辿り着きました。
「いらっしゃい、魔法で噂はすでに聞いています。私はお菓子大好き、おかしな妖精。さぁ、温かい料理を召し上がれ。ちょっとだけなら、大事なお菓子もどうぞ」
おかしな妖精の作るお料理は、とっても美味しいものでした。体に力がみなぎり、魔法の力が溢れ出しました。お菓子ももちろん、たいへん美味しいものでした。
「さぁ、王子様、すぐに支度なさって。ドラゴンは準備が出来次第に結婚式をあげるそうです。お弁当を持って、ほらほら、出発!」
妖精は笑顔で王子様の背中を押してくれました。王子様はお礼を言って、再び旅立ちました。
今度は、大海原を大冒険です。
王子様がドラゴンの城に向かう為、波の音を聞きながら船に乗って進んでいると、深い青く澄んだ海の中から、オパール色の鱗をした人魚が歌いながら語りかけてきました。
「私は海をたゆたう、歌う人魚。あなたのことは、流れる水が教えてくれました。ドラゴンに打ち勝つには、今のままではいけません。清潔になってください。お風呂に入り、歯を磨き、汚れを落とすのです。もちろん、お召し物も綺麗で良いものに換えましょう。そうすれば、魔法の力は強くなり、清らかなペガサスも力を貸してくださるでしょう」
王子様は言われた通りに、身体中をピカピカにしました。人魚は祝福に魔法の歌を歌い、王子様に守りの魔法を与えました。そうして、姫様をお助けくださいと歌いながら、人魚は海の底に帰っていきました。
船が陸地につくと、翼の生えた輝かんばかりに純白なペガサスが、王子様の前に舞い降りました。
「私は言葉をかける、天かける綺麗好きペガサス。風の噂は聞いております。周りの良い助言を素直に聞いた、純粋で信じる心を持つ勇者様。私がお姫様の元へ貴方をお連れしましょう」
綺麗好きなペガサスは、清潔で綺麗になった王子様を背中に乗せて、ドラゴンの住む城へ飛んで連れて行ってくれました。
「急ぎましょう、城の中はこちらの方が早い!」
ペガサスは蹄を鳴らし、風のように城中を駆け巡りました。
お城では、お姫様とドラゴンの盛大な結婚式が執り行われている最中でした。
「待ちなさい! ドラゴン! 私が相手だ!」
「来たか! 姫は渡さぬぞ!」
ドラゴンと王子様の戦いが始まりました。
ドラゴンは火を吹き、ペガサスがすんでのところで避けていきます。
王子様は剣を振るい、魔法を唱えて、いくせんも刃を交えました。周りの者は、皆息を呑み見守りました。そして、夕闇が迫る頃、とうとうついに、王子様が放った魔法の一撃がドラゴンに直撃したのです。
「まさか魔法の力を使うとは。私の負けだ! 降参だ!」
ドラゴンは、晴れ晴れとした顔で王子様とお姫様に向き合いました。
「さぁ、私に勝った褒美と、結婚の祝いだ。少しばかり、世界の宝を分けて進ぜよう。姫、どうか王子と幸せに」
そして、ドラゴンは魔法を唱え、お城ごと、元あったドラゴンの国へ帰っていきました。
美しい夕日が照らす中、黄金の平原に勇者達は降り立ちました。
「姫、ご心配をおかけしました。お怪我はありませんか?」
「あぁ、王子様。私は無事です。あなたの言葉を信じてお待ちしておりました。来てくれて本当にありがとう」
白馬に乗った王子様は、とうとうドラゴンに打ち勝ち、お姫様を救い出したのです。
宝を携えた王子様は姫を抱えて、ペガサスに乗り、結婚式の準備を行っているお城に飛んで帰りました。
皆が喜び、歓声が湧きました。そして、美味しいごちそうたくさんの宴が毎日開かれました。
王子様、万歳! おかしな妖精も、歌う人魚も、綺麗好きペガサスも祝福にお城へ訪れました。
こうして、王子様とお姫様の盛大な結婚式が行われ、2人はいつまでも幸せに暮らしました。
ドラゴンも、戻った国で素敵な方と出会い、結婚して幸せに暮らしたとさ。
めでたし、めでたし。
信じる心を持つ勇者 和柄 雅 @wagara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます