不到

てると

はしがき

 ここに人間未満の男が一人ある。歳の頃は二十七であり、恋愛経験はなく、就労したためしも、ほとんどない。人生経験と言えば、やむなく散々な目に遭ってきたという程度の、ひたすら他に依存する経験だけである。そんな男が何をしようというのか、良からぬことを企んでいる。恐らく、人生ままならぬ者の最後の、あの、最後の悪あがきなのだろう。

 男は生まれながらにも生まれた後からのことにしても、人生の責め苦に苛まれていた。やがて男は誰をも寄せ付けない部屋の隅で、世界を変えられると信じた。男は部屋から飛び出した。その行路は帰り道のある散歩では済まなかった。

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