第9話

「あれがリトルデーモンだ!」


「どこがリトルだ! 二メートルはあるだろ! この世界はネーミングがおかしい!!」


 真っ黒のそれが羽ばたきながら、こちらに突進してくる。 


(速い!?)

  

 目の前まで来てその腕を振り下ろす。 巨大な刃物のような爪が見える。


 ガキン!! 


 鋭い爪を剣で受け止めた。 


「ぐっ、重い!! こいつ力も強いぞ! フェアネスソウル!」


 少し力がよわまった。 だが次々と攻撃を繰り出してくる。


(くそ! 力は弱まったけど、あまり影響がない! 力の差がそれほどじゃなかったのか!)


「ダークブレイクショット......」


 黒い何か球のようなものを手のひらからうってきた。


「ぐわぁ!!」


 俺は吹き飛ばされた。 何度も黒い砲撃を放ってくる。


(なんだこいつ! 何発うってくんだ!)


 かわしながら近寄ろうとすると距離をとって攻撃してくる。


「近づけん!」


「仕方無いな! 余にまかせよ! インフェルノバーン」


 そういうとディンはおおきな炎を手のひらに集める。 そして炎が収束して光のようになると高速でリトルデーモンの体を貫きその体をやきつくした。


「す、すげえ! これが魔王の魔法か!」


「くっくっく、余の前に一切の敵はないわ! わーーっはっはっは......」


 高笑いするディンはそのまままえのめりに倒れた。


「ど、どうした!?」


「た、助けて...... 調子にのって強い魔法使ったら魔力がなくなっちゃった......」


「やっぱり、安定のアホの子だったか」


「誰が! アホの子だ...... だ、だめだ、力が......」


 あきれながら、ディンを背負い戻る。


「どうだサキミ! 余の魔法はリトルデーモンを一撃でほふったわ!」


「ああ、今おれに背負われてなきゃかっこいいがな」


 魔力を失くして動けなくなったディンを背負いながら俺はいった。


「し、しかたあるまい! 昔のように魔法を使ってしまったら、魔力がなくなってしまったのだからな! それより、苦戦したのはお主がリトルデーモンにフェアネスソウルを使ったからだぞ!」


「ん? どういうことだ」


「フェアネスソウルは平均化の魔法だ。 相手とお主の能力を合わせわけ平均化する。 それはつまり相手もお主より劣っていれば、お主の能力の恩恵をえられるということ......」


「......そうか、俺は魔力が多い! だからあいつ魔法を連発してきたのか!」


「そうだ。 しかも魔力は能力を引き上げる。 知恵あるものはその魔力を筋力などに転嫁して前よりつよくなるやもしれん」


「まずいな...... 使うとこちらが不利になるかも...... か」


「相手次第だ。 ゆえにその場合の対処を考えておけよ」


「そういわれてもな...... 剣なんて簡単に上達せんぞ。 となると魔法だが...... あっ、そういやさっきのリトルデーモンを倒したとき、その部屋にあった巻物、なんか魔法書いてたんだっけ?」


「うむ、スクロールだな。 魔法を会得できるアイテムだ。 サキミが使え」


「いいのか」


「余も持っている。 かなり上級魔法だ。 ほれ」


 背中から巻物を渡してくる。 受け取り広げると、何か文字列と図形がびっちり書いてある。 


「それに意識を集中せよ。 魔力で読むのだ」


 ディンにいわれるままに目を閉じて、集中してみる。


 文字列や図形が頭にはいってくる。 目を開けるとスクロールはなにも書かれていない。


「これで魔法が使えるぞ」


「なるほど、こういうことか」


 ギルドに戻り、いつものようにアラミアさん以下ギルドメンバーの驚く姿をみて、報酬を受け帰った。


「百万か! やっとまた貧乏脱出だ! こんどこそライフラインを整備するぞ!」


「おお! 包丁もかえるな!」


 アパートにもどるとネメイオがいた。


「アパートにライフラインを引いてくれ!」


「わかりました。 えーと、浄水場から水、町からパイプによってここまで繋げて、あとは電気を引いて、そして下水を繋げて、それらの維持管理費で百万ゴールドですね」


「えーー!!」


「仕方無いでしょう。 町まで遠いし、あなたの建物は規格外ですので、機器の調整も必要なので必要経費が増えるのです」


 そういって手をこちらに出した。


 目を潤ませながら俺はカードを手渡す。


 三日間ねこんだ。



「やっと立ち直った」


 復活し新たに依頼を受けに、ギルドに向かう。


「今回は早かったな」


「ああ、さすがに三度目ともなるとな...... しかしこれでアパートに人を呼べる!」


「うむ、家賃がえられるな」


「ついに念願の不労所得だ!! だがここからある程度の運用費はかかる。 ランニングコストだ」


「ふむ、しかし町からそこそこ遠いのは気になるがな......」


 ディンはそういって腕をくんで考えている。


「そこは確かに、しかし我々ならばモンスターの脅威を排除できる!」


「それはかなりセールスポイントになる! 町でもたまにモンスターの襲来で被害を被っているようだったしな!」


「そうだ! 我らは安全安心をモットーに住居を提供するのだ! そして働かずして金をえる!」


「よし! 行こうぞ!!」


 俺たちは不労所得をえる旅へと一歩を踏み出した。

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