第2話

「じゃあ早速、俺のための国をつくってくれ! 帰るまでここで楽していきていきたい!」


 魔王ディンプルディにそう願った。


「ふぁあ、それは無理だな」


 あくびしながら拒否された。


「なんだと!?」


「たわけめ、ちゃんときいておったか、願いは余のおよぶ力の範囲だといったであろう。 ほぼ魔力のない余に、そのようなことできるわけがなかろうて。 それに魔力があったとして国を作るという漠然とした願いなどどうやって叶える? アホなのか貴様は」


 ディンプルディはそういうと、あきれたように横目でこちらをみた。


「くっ! 確かに! まあいい、じゃあなにができる」


「今はほぼなにもできんな。 魔力を回復しないと...... それには貴様が余に力を貸さねばならん」


 ディンプルディはニヤリと笑った。


「なんだと!?」


(こいつ魔力を回復するのに俺と契約しやがったのか! くそ!)


「......ならどうやったら、魔力が回復するんだよ」


「ふむ、魔力はこの世界に満ちる力、ほうっておけば、いずれは回復するのだが、なにせ自然に集まる量が少ない。 完全に回復するにはおそらく百年はかかる」


「なっ!? だったら願いが叶えられんだろうが!」


「もちろん他の方法もある。 魔力を取り込むのだ。 魔力は自然に集まり結晶化する、それを【魔晶】とよぶ。 それから魔力を吸収すれば回復が早い」


「それなら、その魔晶をさっさととってこいよ」

 

 そういうとディンプルディは首をふる。


「無理だといったであろう。 この魔力のない体ではモンスターに瞬殺されるだろう。 今の余はただのかわいいだけの美少女だぞ」


 そういってウィンクした。 確かにかわいいのが腹が立つ。


「いや、なに!? この世界ってモンスターがいんのかよ!」


「ああ、ゆえに貴様も一緒に取りに行かねばならない」


「ふざけんな! 俺も死ぬだろうが! それにモンスターは普通魔王の支配下だろ!」


「モンスターはただの魔力をもつ生き物だ。 まあ神々が作ったとかいう話しもあったか...... 魔王の支配は関係ない。 でも心配するな。 武具を揃え、回復薬ポーションや魔法を覚えればお主でも戦えよう」


「そんなのは無理...... いや魔法って俺も使えるのか?」


「ああ、魔力とそれを操るセンス、そして呪文を覚えられれば誰でもな。 まあ簡単ではないがな...... 余は今は魔力こそないが呪文は知っておる」 


 そうディンプルディは胸を張った。 


(ふむ、ポンコツっぽいこいつの魔力を回復させても無駄かもしれないが、俺自身が魔法を覚えれば、別の活路が見いだせるかもしれん)


「しかし、おまえのいうとおり装備を買うにも金がない...... どうしたものか。 ここに人を住まわせて家賃を、いや無理か...... 電気もガスも水道もない」


 途方に暮れる。 


「......ふむ、金ならば、こちらの人間世界にはかつて冒険者という職業があった。 モンスターがいるならば、多分まだあるはずだ。 お主ならば戦えるかもな」


「冒険者? 俺が戦える......」


「まあ、冒険者とは何でも屋だ。 かなりの高額をかせぎ、誰でもなれるらしい。 何度か戦ったことがある、もちろんけちらしてやったがな」


 自信満々にそういってこちらをみる。


「その冒険者になるしかないな......」


 町にあるという冒険者ギルドにむかうことにした。



 俺とディンプルディは森の中を歩いていた。


「ここの文明レベルはどのくらいなんだ?」


「そうだな。 お主の世界ならば中世のヨーロッパぐらいであろうな」


「そのぐらいか...... そんな時代なんだったら、いきなり殺されんだろうな」


「まあ、文明はそのぐらいだが、魔力、魔法があるお陰で、余が最後にいたときには多少は倫理的、衛生的、文化的だったぞ。 とはいえ千年の間、余はお主の中にいて半分眠っていたがな」


「千年って大分たってんじゃねえか、当てになるのかその情報...... いや俺の中に千年ってどういうことだ?」


「正確には魂の中だな。 魔力を回復するためにお主の魂と、同化していた。 魂は不滅、肉体が滅しても何度も転生し記憶を失い、新たな生をうけるのだ」


「ふーん」


(まあ、その時の記憶もないし別に関係ないか...... それにしても千年も生きて、こんなアホの子だとは、不憫なやつだ) 


「なんだそのあわれむような目は!」 


「いや、べつに...... あっ、あれか町か!」


 目の前に多くの建物が並ぶ。


「ふむ、別におかしいところもないな。 あるいている人も多国籍だし服も清潔そうだ、なんかテーマパーク感がある。 あっ街灯! 電気があるのか!」


「魔力をエネルギーとしての機器ならあるということだろう。 昔はなかったから、やはり千年でかなり発展はしているな」


 ディンプルディは興味深そうに周囲を見ている。


 町の人たちに話をきいてギルドの場所にいく。


「あった! 助かった! でも日本語じゃないのに、会話が通じたなぜだ?」

 

「お主とは同化しておったから、言語も余の魂から理解したのであろう」


「まあわけわからんが助かった。 言葉がわからんのではどうしようもないからな」


 大きな建物がある。 見慣れぬ文字で冒険者ギルドとかかれている看板がある。 そこには武具を身にまとう男女がいた。


「あれか、なんか怪しそうな奴らばかりだな」


「誰でもなれるらしいからな。 金をえるには近道だから、そうなるのだろうな」


 俺たちは建物にはいる。


 木のカウンターに受付嬢かいて、話しかけた。


「はい、いらっしゃいませ。 今日はどのようなご用件でしょう」


「冒険者って俺たちでもなれます?」


「はいですが、危険な職業ですので少しテストをさせていただきますがよろしいですか?」


 承諾すると、受付嬢はカウンターにカードをおいた。


「まず、これを持ち、ファングラット一体を討伐してきてください」


 俺たちはカードを受け取り、ファングラットがいるという森へと向かった。

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