美しい君と君の抜け殻

ruy_sino

第1話 美しい君と君の抜け殻

   ザァァ

雨が降る音が聞こえる。

「はぁ、はぁ、はぁ…」

誰かの走る音が聞こえた。

「くそっ!まだだ…女性の遺体だ。犯人め必ず…」

拳を握り現場鑑定を始める刑事。

 顔までは見えなかったが、きっと怖い顔をしているに違いない。

何故なら、今回の遺体で19人目だ。

 「ベアーズ」この街は年中霧が濃く、この霧が晴れる事はない。そのため世界一危険な街と言われてる。

 「ベアーズ」を騒がしている事件がここ数年前から起きている。

      女性連続殺人事件


被害者は全員同じ歳くらいの女性、そして内臓が綺麗に抜き取られている事が共通点として上がっているだけだ。 

 その他全ては闇に未だ包まれている。


  ピチャピチャ

雨に濡れながら僕は走り家へと向かった。

 ガチャ

ドアを開けて靴を脱ぐ。


 「みんなただいま」


返事はない。


そのまま自室へ向かった。

 自室へ向かった僕は、医療の本を読む

これが日常と化している。


 ペラペラとページを巡り読み進めて行く

「今日はここぐらいでいいか」

ある程度読み進めたところで、しおりを挟みベットへ行き眠りにつき始めた。




グサっ

何かを刺した音が聞こえる。

「…ァ…ァ」

呼吸が止まり始めた

そして目の前で倒れた瞬間

 モヤモヤしたものが死んだ人から浮いているを見つけた。

 僕は……………



「‼︎」

ガバっ

「なんだ…夢か…」

目が完全に覚めた僕は、学校へと行く準備を始めた。


 シャワーを浴び汚れを落とす。

汚れは落ちづらく力強く擦らないと中々落ちてくれない。


 汚れが落ちてから服を着て家を出発する。


「みんな行ってきます」


返事はない。


今日も霧が濃く前が見えずらい。

 街灯の灯りを頼り学校へと向かう。


「おはよう。」

「あ…あぁ…おはよう。」

友人に挨拶をするが元気がないのか、気持ちの良い返事ではなかった。


  ガチャ

下駄箱を開けると手紙が入っていた。

 

「15時30分運動場裏に来てください。」


名も書いてなくただ来いと書いている手紙だった。

 

「まぁ、最近飽きてきたからいっか…」


自慢になるが、僕はそこそこモテる。

 今まで付き合った人数は、19人ぐらいだろうか。

少し前まで付き合っていた彼女がいたが最近別れて、今じゃ挨拶をしても

      “返事がない”


「まぁ、行くだけ行ってみるか…」


授業を一通り受け、手紙の書いてあった場所へ向かった。


15分前に着いたにも関わらず、書いてあった場所に1人の女の人が見えた。


「君がこの手紙を書いた人?」

僕はその場にいた人へ話しかける。

「…はい…」

女の人はこちらへと向かってきた。


「あぁ、君は確か…ユリさんだっけ?」

「そうです。同じクラスの…それでね話があって…」

 

 緊張しているのか言葉が詰まり詰まり出てくる。

数十秒ほど沈黙が続いたが、彼女が意を決して口を開いた。


 

「貴方のことが好きです。付き合ってください‼︎」


やはり、告白だった。

 顔はかなり可愛い方だ、体のラインも綺麗で美しい人だ。後は…色が気になるが、それは次期にわかる事だろう。


「いいよ。」


僕は快諾しユリと付き合う事になった。

彼女は、泣いていたがなぜ泣いていたのか僕には理解できなかった。


 「じゃあ、早速だけど一緒に帰ろうか。」

 「うん!」


手を繋ぎ濃い霧の中をかき分けるように歩いていた。

 

 その時だった…

「すみません…学生さんですか?」

ライトを持った警察官が話しかけてきた。

「はい。」

「あぁ、やっぱり。この道は危険だから早めに帰ってください。」

「何故なんです?」

彼女が不思議に思ったのか警察官に聞いた。

「確か昨日だったかな、遺体があったんだよ、女の人のそうですよね?」

僕がそう問いかけると警察官は…


「あぁ、よく知っているね。昨日ここで遺体があってね。もしかしたら犯人が近くにいるかも知れないから、これ以上濃くならないうちに帰りなさい。」

「そうなんですね。」

彼女は納得したのか、早く帰ろう?と言ってきた。

 僕達は警察官にお辞儀をし、場を後にした。


「おかしいな…まだ、この事は公表されてないはずなのに…」


僕は、帰り際警察官がぶつぶつと呟いている姿をじっと見つめていた。

 

「じゃあ僕ここだから、バイバイ。」

「そうなんだ、気をつけてね?」

「もちろん。君の方こそ気をつけた方がいいかも。」

「もう、怖いジョークはやめて。」

「ごめんごめん。じゃあまた明日。」

「また明日。」


そして僕は彼女と別れ、片道と反対の方向へ向かった。


霧が濃くなって前が見えづらくなっている。


そんな時だった…

「お巡りさん…」

先程話しかけてきた警察官がいた。

「君はさっきの…どうかしたのか?」

「ちょっと道に迷って…一緒に来てくれないかな?」

「確かに霧が先程より濃くなって危ないし、わかった。」

 

そうして、警察官と一緒に自宅まで向かった。

「君…名前は?」

「僕の名前は…あ!ここが家だ。」

「あぁ、そうか…良かったね家に着いて。」

「そうだね…………」


      グサッ

「…ァ…ァ…」

呼吸が止まる。

目の前の人が倒れた瞬間モヤモヤしたものが浮いている…

「色は…紫…へぇ〜…」

そして動かなくなったモノを僕はゴミ箱へ捨てた。


「そういえば…名前言うの忘てたよね。僕の名前はね…ジャックだよ」


辺りが赤色に染まっていた。

「汚れ落ちるかな……」


僕は家へと帰った。


「みんなただいま」


返事はない。


 僕の家はたくさんの人と一緒に暮らしている。

皆んな個性的だ。

例えば、緑色、青色…いろんな色を持っている人ばかり、でも残念な事に喋ってくれないんだ。

 「まぁ、いいや…」

僕は、自室へ行き本を読み眠りについた。






「綺麗だなぁ〜綺麗な色だ…」

目の前で倒れている人を見ながらそう言った。

 「男の方は…紫か…綺麗じゃないこれは捨てるしかないね」

僕は、重い器を引きずりながら捨てた。


 「こっちも一緒に捨てておこう」

綺麗で残念だったが先程の器と同じところに捨てた。


 僕は記念に動かない器から一つ抜き取った。


「‼︎」

ガバッ

「あぁ…はやくはやくはやく」

小さい頃の夢を見た。

 シャワーを浴びて学校へと行こう。


「みんないってきます」


返事はない。



少し小走りで学校へと向かった。

「おはよう」

「………おはよう…」

友人に挨拶をしたのに今日は一段と元気がない返事だった。


授業を受け終え彼女と一緒に帰った。


「ねぇ…気になっていたのだけれど、顔についている赤いものはなに?」

「。」

汚れ落ちてなかったのか…

「…ちょっと怪我して顔から血が出ちゃって。」

「ごめんね。今絆創膏持ってないや…」

「あぁ、家に帰ったらちゃんと処理するつもりだから大丈夫。それよりも明日どこか出かけない?」

 明日は祝日学校がない。

「うん!行きたい!」

「じゃあ、水族館へでも行こうか。」

「やった〜」


喜ぶ顔もやはり美しい…

はやく見てみたい君の色を…はやくはやくはやく…


 理性がおかしくなっていく…保てない。あぁ、はやく見たい君の色を………


家へと着いた。


「みんなただいま。」


返事はない。



ドクドクドク

心臓の鼓動がいつもより早い…明日が楽しみだ。

 明日へ期待をし僕は眠りについた。


 


ガバッ

「あぁ、今日だもんね…楽しみだ」

 

目が覚めた僕は、シャワーを浴び汚れを念入りに落とす。

 

「みんな行ってきます。」


返事はない。


カバンを持ち待ち合わせ場所へと走って向かった。


「おはよう」

「おはよう!」

返事が返ってきた。

 「じゃあいこっか。」

手を繋ぎ、水族館内へと入った。


水族館は好きじゃない。

 色が見えないから

でも魚は嫌いじゃない。

自然の魚は色が見えるからね。


「そういえば、君の家ってどこなの?」

「そう言えば、教えてなかったね。

じゃあこの後僕の家に来る?」

「いいの!?」

「僕の家はちょっと特殊で数十人と一緒に暮らしてる」

「そうなの?」

「あぁ、でも皆んな無口だから大丈夫」



そうして一通り楽しんだ僕達は水族館を出た。


「僕の家はこっちだから着いてきて。」

「い、痛い…」

「あ!ごめん…つい」

彼女を握る僕の力が不思議と強くなっていた。

 隠さないと…まだ距離はあるから


そうして、家に近づいてきた僕は彼女の手を離し先へ先へと向かっていった。


「ちょっと…どこ行ったの?ジャックー?」

「ここにいるよ…」

後ろから彼女に近づき、ハンカチ付着した匂いを強制的に吸わせる。

 するとユリの体から力が抜きストンと倒れた。

倒れたユリを僕は、地下室へと運ぶ。


「みんなただいま。新しい家族が来るから仲良くしてね?」

返事はない。



地下室へ着いた僕は、彼女を椅子に座らせ手と足を縄で縛り動けなくした。


「やはり、起きてないと新鮮な色は見れないからがまんがまん。」

僕は彼女が起きるまで欲を抑えた。


 30分ぐらいだろうか、彼女の声が聞こえた。


「ちょっと…何これ…」

「やぁ、ユリ目覚めは良好かい?」

「これのどこが良好よ…むしろ逆だわ」

「それは残念。ところで話が変わるけど、君は人が死ぬ瞬間を見た事はあるかい?」

「ないわよ。逆にアンタはあるの?」

「あるとも。もう何十人と見たさ、皆んな綺麗な色だったよ。」

「何を言っているの?」

「魂の色だよ。」

「魂の色?」


「初めは、小学生くらいの時。カマキリを殺した時、魂が浮くのを見たんだ。それで気になって父と母を殺した。母の色は赤色だった。父は紫色で綺麗じゃなかった。

まぁ、父と母どちらとも捨てたけどね。

 次は、その時付き合っていた女の子を殺した。その子は綺麗な緑色だった。」


「ちょっと待って…女性連続殺人事件って…」

「あぁ、世間ではそう言われてる事件の事ね」

ニヤッと笑いながら

「僕は色を見てるだけなんだ。魂の色を」

血の気が引いたように真っ青になった彼女の顔を見ながら僕は喋り続ける。


「ユリは美しい。とても美しいだからこそ君の色を知りたい。とても普通の事だと思わないかい?」

「普通じゃない…普通じゃないわよそんなのそれで殺すなんて…」

「殺す?僕は人殺しをしてるつもりはない。ただ、色を見てるだけだと先程から言っているのに何故わからない?」


「私は、貴方のこと好きだったのに…」

「僕もユリのことは好きだよ。好きだからこそだ。安心して、君は僕達の新しい家族になるんだから。」

「家族?」

「言わなかったけ?僕の家は数十人と一緒に暮らしてるって。」

「もしかして、今まで殺した…人?」

「厳密にいえば、内臓を壁に飾っているだけだ。医療の本を読んでいてね。最近では抜き取る技術も上手くなったから痛い思いはしないはずだよ?」

「なんで……」

「内臓もね人によって、色、形が違うんだだから飾る。」


それを聞いた彼女は吐き出してしまった。


「さぁ、はやく君の色を見せてもらおうか」


僕は握っているナイフに力を入れた。



彼女はただ泣いているだけだった。

 何故泣いているのだろうか?

きっとこの問いは未来永劫答えの出ない問いだ。




そして僕は彼女をナイフで刺した。


彼女の体から、モヤモヤしたモノが浮いている。


「あぁぁ、美しい…美しいよユリ。君の色はとても綺麗で透明な水色なんて…とても美しい人だ。はやく逃げないうちに食べよう。」

 

 そして浮いているモノを口に含み食事をした。

「久しぶりの食事だったけど、やっぱり味は変わらないんだ…でも美味かった。」


 魂の味は変わらない。だか、数日振りの食事はとても美味しかった。


ユリがいた器を見る。


「美しいよ、君と君の抜け殻もね。」


内臓周辺をナイフを刺し手で触りながら抜き取る。

 グチャグチョした触り心地は、気分が落ち着く。

   内臓を抜き取り壁に飾る。

「新しい家族だ。仲良くしてね?皆んな」

 返事はない。



そして用のない器は、外に引きずり回して裏路地で捨てた。


 外は雨が降っていた。

あぁ、僕は色を見るのが趣味だ。

  魂の色を知りたい、もっと多くの。








    暗く濃い霧の中僕は歩く。


    「汚れ落ちるかなぁ…」


      また新しい色を求めて…


 

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