第2話 魔法練習
翌日になると僕は早速勉強をすることにした。
それとどうやらこの綺麗で広いところが僕の部屋のようだ。
前世とは比べ物にならない広さ。
でも大きければいいと言うわけでもないんだけど。
まずは部屋の本棚に入ってあった前世で言うところの参考書的なのを見つけそれをとりあえずは見ることにした。
内容を見て驚いたのだが死ぬほど簡単だった…。
普通なら小学生で習うような足し算や引き算が難問として出てくるようだ。
掛け算や割り算に至っては大人でも解くのが難しい問題らしい。
計算面はなんとかなるかもしれないがここで問題になってくるのが魔法に関する問題だ。
こんな問題、ましてや魔法なんてものは前世には存在しない。
だからわかるはずもないのだが。
なぜか少し理解できている自分がいる。
正直怖い。
これは子供にして世界の理を知るようなものだ。
もしかするとやはりあの神さまが何かしら僕にしたのだろうか。
前世ではアニメや漫画は嗜む程度だったが神さまが転生者に何かしらの力を施すという展開をいくつか見たことがある。
僕のもそういった類なのだろうか。
まぁ、筆記はどうにかなるかもしれないな。
ただ次に問題になってくるのが実技の魔法だ。
どうやら試験では筆記以外に実技も存在すると父さんが言っていた。
この実技では魔法技術を見られるらしい。
それに筆記よりもこっちのほうが重要らしく過去筆記で満点をとったが実技で低い点数を出し不合格になった者もいるとか。
つまりはこの実技さえ乗り切ればどうにかなるということだ。
でも魔法なんてどうやって使えばいいんだ。
僕が悩んでいると部屋の扉をノックする音と「入ってもよろしいでしょうか」という人の声が聞こえてきた。
「どうぞ」
すると一人の女性が部屋に入ってきた。
この少し淡い金髪のメイド服を着ている女性はメイドのミリーゼという方らしい。
普段は父さんや母さんの身の回りのことを担当しているがこれからは僕を担当してくれるそう。
父さんが言っていたのだがミリーゼさんはどうやら僕と年齢が近いそうだ。
だから話し相手になってやって欲しいと言っていた。
正直この世界のこともよくわからないことも多いしこの機会にミリーゼさんから色々教わるのもいいかなと思い承諾したのだ。
「レイル様、こちらオリック様より預かっておりました魔法書でございます」
「魔法書ですか?」
「はい。魔法書は魔法に関することが記された本でございます」
ということはこれを見ながらやれば魔法が使えるようになるのか?
でもそんな簡単に行くものなのだろうか。
せめて誰か教えてくれる人が…。
「ミリーゼさんは魔法は使えるんですか?」
「はい! 一応少しだけなら使えます…」
このメイドのミリーゼさんは優秀すぎる。
「だったら僕に魔法の使い方を教えてください!」
「そ、そんなおこがましいことは出来ませんよ!」
ん〜。
これは少ししぶといタイプかもしれない。
「ミリーゼさんは僕の言うことを聞いてくれるんですか?」
「はい! もちろんメイドとして命令は聞きます!」
「ならこれは命令です! 僕の魔法の先生になってください」
「わ、わかりました! ふつつかものですがよろしくお願いします!」
なんかそれ意味違うと思うよ。
◆◆◆
僕は魔法の練習をするために初めて外に出たのだがこの家、恐ろしい程に大きかった。
前世の僕とお母さんが住んでいた家4個分くらいあるんじゃないか。
いやそれ以上か。
それに庭も広いし...。
噴水だってある。
周りは柵で囲まれている。
あの父さんことオリックさんって一体何者なんだ!?
「お待たせしました」
「どこに行ってたんですか?」
「オリック様に魔法使用の許可を貰っておりました。許可を取れればオリック様がこの土地に結界を施してくれますので」
「結界ですか…?」
「例えば魔法が暴走し屋敷やその外に被害がでてしまっては取り返しがつきません。そのために結界が必要なんです。結界があれば魔法は結界によって断絶され消滅します」
結界魔法というやつだろうか。
アニメとかで出てきたやつだ。
そういう結界魔法とかは大抵魔法の猛者とかが使うものらしいけどもしかして父さん、魔法めっちゃ使えるとか?
ますます父さんことオリックさんのことがよくわからなくなってきた。
「それじゃあまず属性確認をしてみましょう。属性は火・水・土・風の四大元素から成り立ちます。そのほかにも四大元素の派生である雷・光・氷なども存在します。また四大元素に含まれない治癒魔法、身体強化魔法、闇魔法なども存在します」
「へ〜」
「ここ試験に出ると思いますよ」
魔法訓練の間にもさり気なく試験に出るところを自然に教えてくれるなんてやっぱり優秀すぎるミリーゼさん。
「それではこの水の中に手を入れてください」
僕は言われたとおりにミリーゼさんの持っている水の入った壺みたいなやつに手を入れ込んだ。
「そしたら魔力を流し込むように」
「あの…流し込むようにって…」
「あぁ! すいません。簡単に言えば手にエネルギーを貯める、そんなことをイメージしてください」
手にエネルギーを貯めることをイメージするか。
僕は目を瞑って必死に手にエネルギーを込めるイメージをした。
まだか。
そろそろ疲れてきた…。
「レイル様…これは!」
そう言われ僕は目を開けてその水を見る。
「なんか汚くないですか?」
「この色は火・水・土・風です! つまりは全属性に適応している!凄いですよ!!」
全属性だったからいろんな色が混ざって汚かったのか。
こういうのって普通綺麗なんじゃないのか。
でも全属性魔法か。
治癒とかはないのだろうか。
治癒があれば助けれる人の幅も広がるんだけどな。
「治癒とかは…」
「そうですね。この色合いからして治癒魔法はないです」
「そうですか」
この水の色をどう見たらあるかないかなんてわかるんだ。
元の色が何だったのかわからないレベルなのに。
それに治癒はないのか。
まぁ、仕方ないか。
治癒って結構貴重そうだし。
この全属性で出来るだけの人を救おう。
「じゃあ、早速魔法をやってみましょうか。私の真似をしてくださいね」
するとミリーゼさんは手を前に出し何やら集中し始めた。
「我が
ミリーゼが詠唱というものをすると火の弾が現れた。
その火の弾は中々の速さで結界の方に飛んでいった。
結界にぶつかると小規模ながら迫力のある爆発を起こした。
「今のが初級魔法のファイヤーボールです」
「初級以外もあるんですか?」
「もちろんありますよ。初級、中級、上級、天下級、天上級の五階級が存在します。といっても天上級は古代に存在が消えてますが」
つまりは古代が魔法技術のピークだったということだろうか。
もしそんな時代に転生していたら僕は瞬殺されていたことだろう。
よかった。
こんな平和なところに転生できて。
「ではレイル様も先程の魔法をやってみてください」
こういうのって詠唱を端折ったり無詠唱でやったりって出来るもんなんだろか。
ちょっとだけやってみたいけどこれは練習だし今回は真面目にやるか。
「我が
僕は詠唱の途中でくしゃみをしてしまった。
まずい。
とりあえず…。
「ファイヤーボール」
「レイル様! ちゃんとしてください」
「すいません…」
ミリーゼさん、怒ると怖いタイプかもしれない。
「ちゃんとしないとああやって速度が遅くなってしまいますよ」
どうやら一応魔法は放てていたみたいだが速度が遅かった。
ゆっくりとそしてゆっくりと結界に近づいていく。
あれって爆発するのかな。
流石にあの遅さじゃ…。
すると僕の放ったファイヤーボールが結界に衝突した瞬間とんでもない爆発と共に「パリンッ」というガラスが割れたような音がした。
「そ、そんな!!」
これはやらかしてしまった系なのでは。
何事かと父さんが窓からこちらに大きな声で「今のは何だ!!」と言ってきた。
「魔法を使ったら…」
「今のはレイルがやったのか」
「はい…」
「そうか!!」
こんなことになるなんて想定外だ。
「レイル様凄いですよ! オリック様の結界を破るなんて!」
あのガラスが割れたみたいな音は結界が割れた音だったのか。
すると再び周りに結界が現れた。
「あれ?」
「どうやら再度結界を張ったみたいですね。しかもさっきよりだいぶ魔力を消費して作られてます」
今度はどうにかして力加減を考えないと。
より大変なことになりそうだ。
「レイル様、ひとつ提案なのですが....」
ミリーゼは理解できない提案を僕にしてきたのだった。
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