腐れ縁の幼馴染に告白する -年上女神に癒されたい-

青空のら

腐れ縁の幼馴染

「保育園時代から長く続いた腐れ縁の俺達の関係もこの辺りでケリを付けたいと思う。改まって言わせてもらう。俺と付き合ってくれ!」


 放課後、校舎裏に幼馴染の北島沙耶香を呼び出していた。最近伸ばし始めて肩まである黒髪に、最近手入れをし始めた整えた眉、意志の強さを表しているつり目、笑うと八重歯が出てくる仰月型の口、少しコンプレックスの団子鼻。

 俺は可愛くて気に入ってるのだが鼻の話題になるとキレるのでタブーだ。

 高校2年生、17歳、身長153cm、体重48kg。俺達の間に隠し事はない。


 沙耶香と出会ったのは保育所で、初対面から子分扱いされたのは今でも鮮明に覚えている。

 おやつの上納から始まり、未だに小遣いの半分を巻き上げられているのは納得がいかない。

 他にも服を全部ひん剥かれてお医者さんごっこをした仲だ。もちろん患者は俺だった。

 腐れ縁は続くよどこまでも、徒歩一分のご近所という関係では逃げようがなかった。

 今では倦怠期の夫婦のように顔を合わせるたびに舌戦をやり合う仲だ。いつまでも尻に敷かれる夫みたいな惨めなポジションで甘んじる訳にはいかない。

 口を開けば『軟弱なのよ』とか『普段何食べてるのよ』とか『どうせろくな物食べていないんでしょう』と余計事ばかり言ってくる。口論になって当たり前だ。

 沙耶香との勝負に勝てば解放される約束なのだが、いまだに勝てていない。それについては、いずれ勝つつもりなのでまだ慌てる時期ではない。


 そして、俺は知っている。

 本人は隠しているつもりだろうが『最近、気になる人がいるんだ』と女友達にこぼしている事を。

 これは絶好のチャンスだった。

 今なら、沙耶香に告白すれば、好きな人がいるのだから確実に振られる事が出来る。

 となれば、実行しない手はない。

 そして、沙耶香を放課後の校舎裏に呼び出して告白タイムとなったのだ。


 最近仲良くなった女神先輩こと、桜庭久美子先輩。失恋した童貞後輩にあんな事やこんな事を手取り足取り教えてくれるという。

 ここは是非サクッと振られて、久美子先輩に慰めてもらわなければならない。

 俺の野望達成の為にせいぜい利用されてくれ沙耶香――



 ***



 女神先輩、久美子先輩に出逢ったのはたまたまの偶然だった。雨の日に学校の入り口で雨宿りしていたので、余っていた傘を貸してあげた。

 その一週間後に自転車置き場で自転車のチェーンが外れて困っていたので直してあげた。

 その後、顔見知りになったので世間話をしているうちに、噂の女神先輩その人である事が判明したのだ。


 好きな男性のタイプを聞いたところ、

『頼り甲斐のある年上の男性より、年下の男の子が困っている所を見るとつい構って世話をせずにいられなくなる』

 と回答を貰った。もう、これは甘えるしかない!

 当然、失恋して落ち込んでいる所を慰めて貰うのが王道というものだろう。この王道を外す訳にはいかない。



 ***



 俺からの告白後、数秒の沈黙後に沙耶香が口を開いた。


「わかった。いいよ」


 実にあっさりと承認された。拍子抜けというか予想外だった。


「えっ!?」

「どうかしたの、大吾?」

「いや、付き合うって、どこかに一緒に買い物に行くとか、そんなんじゃないんだぞ」


 早く沙耶香の間違いを訂正させなければならない。俺の野望の為に――


「知ってるよ、それくらい!男女が仲良くする事でしょう」

「そうだ、間違ってはいない。けど、間違っている――」


 沙耶香が意味がわからずに首をかしげている。言ってる本人である俺も意味がわからない。


「お前、好きな奴が出来たんだろ?」

「それが大吾に何の関係があるのよ?」

「いや、他に好きな奴がいるのにどうして俺の告白にOKするんだよ?」

「しちゃあ、悪いの?」

「いや、悪いだろ?好きな奴はどうするんだよ?」

「それはそれ、これはこれ。何か文句でもあるの?」

「いや、ない――じゃなくて、ある!」


 いつも以上の沙耶香の迫力に思わず納得するところだった。危ない、危ない。


「俺なんかと付き合わずにそいつと付き合えばいいじゃないか!」

「ふーん?何か変ね。大吾から告白してきたくせに交際OKされて納得しないんだ?何かおかいな?」

「何の話だか――」

「さあ、何を隠しているのかしら?しらばっくれずに正直に話してもらいましょうか」


 言い訳するか逃げるか迷った俺は、鋭い足で踏み込んできた沙耶香に胸ぐらを掴まれて締め上げられてしまった。一瞬の判断ミスが致命的だった。

 こうなったら打つ手なし。逃げ道を塞がれた俺は正直に話すのだった。



 ***



「俺の小遣いの半分持っていくんですよ。酷いでしょう?」


 年下の後輩として積極的に女神先輩に悩みを相談をして、同情心を買うようにアピールしていく。


「そうなんだ?」


 首を傾げる久美子先輩は可愛い。とても年上とは思えなかった。腰近くまであるウェーブの掛かった紅茶色の明るい髪、ピンクの頬、プルプルの唇。


「そうなんですよ。それで買った物は一番に見せに来るんですけどね。それがどうした? って感じですよ」

「まあ、そうかな?」

「春物のスカートを買ったからって見せられても腹の足しにもなりませんよ? ブラウスだってそうですよ」

「うーん、男の子だとそんな感じになっちゃうかもね。でも、彼女が可愛くなったら嬉しいでしょう?」

「あいつとはただの腐れ縁の幼馴染ってだけで、何の関係もありませんよ」

「そうなんだ?」

「だから先輩!俺と付き合ってください!」

「いやいや、やっぱり彼女に悪いわよ。きっと君の事好きだから構っているんだよ」


 久美子先輩は自分の顔の前で右手を左右に振った後に、自分の言葉に"うんうん"とうなづいてみせた。


「そんな事無いですって! そんな殊勝な奴だったら俺から奪った小遣いで散財するわけないですよ。昨日だって、パンツ一枚に三千円も使ってるんですよ!」

「そんなに高いかな? それくらいはするよね」

「ブラとパンツ合わせて一万円とか、目が飛び出しましたよ」

「ブラとパンツ?」

「そんなの見せられても腹の足しにもならないし、踏んだり蹴ったりですよ」

「えっ?」

「どうかしましたか?」

「ブラとパンツを見せられたんだ?」

「ええ、着てるところを見せられました。今更、色気もクソもない奴の下着姿見たところで――」

「え、えっ? 下着?」

「そうですよ」

「ええ!? どういう事なの?」

「いや、奴が春物の一式買ったからと春物のスカートをブラウスを着て家に来たんですよ。そして下着も一緒に買ったからとブラウスとスカートを脱いで見せてきたんですが全く色気もクソもない訳ですよ。散々見慣れてるので今更というか――」

「えっ? 散々?」

「ええ、小遣い取られるようになってからなので、かれこれ十年になりますね」

「そうなんだ――」

「『お前のために買ってるんだ』と言われても俺にメリット一切ないですよね?」

「そ、そうかな? 君の為に可愛く着飾ってるつもりなんじゃないかな?」

「そんな訳ないですよ。俺に見せた後は彼氏とのデートに着て行くわけですし」

「えっ? 彼女、彼氏いるんだ?」

「そうですよ。今は別れていないみたいだけど、つい最近まではいたはずです」

「うーん。全く話についていけないよ。力になれそうになくて、ごめんね」


 久美子先輩が首を振って肩をすくめた。

 沙耶香とケリをつけなければとますます決意を固めるのであった。

 このややこしい腐れ縁を切りさえすればいい。奴隷のような生活とはおさらばだ!

 さらに失恋の形を取れれば、最高にハッピーな結末が待っている。俺はワクワクする心を抑えるのだった。



 ***



「おっさん、悪いけどそいつを泣かせていいのは俺だけなんだよ。俺に断らずにそいつを泣かせた償いはして貰うぜ」


 沙耶香の後をつけてたどり着いた道場にて、沙耶香の泣き顔を見た瞬間に見知らぬおっさんに啖呵を切って飛び掛かっていた。

 大人と子供、所詮相手にすらならなかった。瞬間的に押さえつけられて指一本触れられなかった。


「坊主、お前、この子の何なんだい? おませに恋人とか言っちゃうのかい?」

「ふざけんな。ただの子分だよ。でも"今は"だからな! いつか倒して泣かしてやる。それまでそいつを泣かす奴は許さねえ。絶対に許さねえ! 俺が泣かすんだ!」

「おやおや、それはそれは勘違いして失礼。坊主は強くなりたいのか?」

「当たり前だろう?」

「強くなるってのは辛い事が沢山あるし、辛抱しないといけない事が沢山あるんだぞ。それでも強くなりたいのか?」

「そんなの決まってるだろ? 辛いのが当たり前! 楽して強くなれる訳ないじゃないか!」

「ふーん。気に入ったよ。明日から学校終わったらここにおいで、月謝はサービスしてやるよ。辞めたくなったらいつでも辞めていいからな」


 煽るようにせせら笑うおっさんに絶対に辞めないと心に誓ったのは遠い昔の記憶。

 そのおっさんが沙耶香の父親だと知ったのは道場に通い出してしばらくしてからだった。

 その事件以来、道場はもちろん道場以外でも沙耶香の泣いている姿を見る事はなかった。

 そして俺が沙耶香に勝つ事もなかった――



 ***



「坊主! この道場の跡を継ぐ気はあるか? 後継がいないからこのままだと将来道場を締めなきゃいけなくなる。形だけでもいいから残したいんだ。坊主が継いでくれれば安心出来るんだがな」

「俺に何の得があるんだ? それに沙耶香が跡を継げばいい――」

「そうだな、沙耶香が継げれば一番いいんだが――そうだ、お前が跡を継ぐなら沙耶香を嫁につけてやる」


 はるか昔の懐かしい夢を見た。沙耶香が嫁になるのは亡くなったおじさんとの約束で破る気はない。約束、契約は絶対だ。

 しかし、肝心の期日や条件が決まっていない。沙耶香が誰を好きになろうが、誰と付き合おうが文句も言うのも腹を立てるのも筋違いである。



 ***



「私はあんたが当主なんて絶対に認めないからね。私に一度も勝った事ない癖に! 悔しかったら勝負して勝ってみなさいよ」


 言い終わる前に飛び掛かって来る沙耶香。

 沙耶香からの攻撃は受け流してダメージは無いものの、いつもの様に沙耶香に対して手も足も出せないのでおのずと勝負は決まってしまう。


「ほらね! 私にすら勝てないのに当主なんて認めないんだから!」


 吐き捨てると沙耶香は道場を出て行った。

 何となく追いかけて来て欲しがってる気がしたのだが追わなかった。追ったところで何が変わるとも思わなかった。

 そして、その日から沙耶香の態度が一変した。

 彼氏とのデート用だとセクシー系の下着を買うようになったのだった。



 ***



 母親が男を作って家を出たのは俺が五歳の時だった。書き置き一つ残して、黙って居なくなった。当日まで仲の良い夫婦だと思っていた父親は見るも無惨に落ち込んでいた。

 後に居場所をつかんだ父親との離婚裁判で母親はDVを主張し、見事に勝利を勝ち取った。

 俺の記憶にある限りでは夫婦仲も良く、父親が暴力を振るっている姿を見たことなど一度もないのに関わらず、俺の主張は"子供の証言能力は無い"と無視された。

 その裁判の最中に置き手紙に書かれた俺に関する内容が判明した。


『邪魔なので連れて行きません、息子の世話はそちらでしてください』


 その一文で終わっていた。

 それの事を知って以来、俺の中で愛情というものがよくわからなくなった。

 ただ、約束、契約は守らなければならない。婚姻という契約をいとも簡単に紙屑を引き裂く様に破り捨てた母親みたいにはなりたくない。

 いかなる理由があろうと女性に手を上げてはならない。誤解をされる様な事すらしてはいけない。

 これが俺の中での絶対的なルールとなった。



 ***



 道場を守る。

 沙耶香を嫁に貰う。

 沙耶香に手を上げない。

 このルールを守った上で、沙耶香も俺も幸せになるにはどうしたらいい?

 人の気持ちを強要する事など出来ない。それは家を出た母親の事で重々承知している。

 家を出て行くのなら婚姻という契約をきっちりと解消しておけば良かっただけの話だ。

 そうしないのなら愛がなくても家族というものを演じ続けなければならない。婚姻とはそういう契約・・・・・・なのだから。

 沙耶香が誰を好きになろうと・・・・・・・・・自由だ。俺を好きになれ・・・・・・・という約束、契約なんてものは存在しない。

 沙耶香が誰かと付き合おうが自由だ。最終的に・・・・俺の嫁になれば契約は守られる。

 それが60歳であろうが、100歳であろうが期日を指定していないのだから有効である。

 そしてまた、沙耶香が誰の子供・・・・を産もうが育てようが彼女の自由である。これは何も言わなくても分かると思うので省略する。



 ***



 大吾は多分、壊れている。言い方は悪いけど多分、壊れている。

 本当の意味で大吾が壊れているのを知ったのは去年の事だった。父が亡くなり、悲しみにくれている時に大吾が優しく抱き締めて慰めてくれた。

 その時に大吾が不思議な事を言った。


『道場は俺が守るから心配しなくてもいい。沙耶香を嫁にするおじさんとの約束は守るが、それ以外は何も強要する気はないから沙耶香の好きにしていい。好きな人と恋愛して付き合って、子供を産み育ててもいい。最終的にいつか・・・俺の嫁になってくれたらいいから』


 大吾の目は冗談を言っている風ではなく真剣だった。


『私の事好きじゃないの?』


 恐る恐る聞いた質問の答えは


『俺が沙耶香を好きとかそんな事は気にしなくていいんだ。沙耶香の気持ちが一番大事だから沙耶香の好きにすればいいんだよ』


 まるっきり熱のこもっていないセリフに背筋が凍り付いた。

 これだけ近くにいて大吾の心が壊れてしまっている事に気付かないでいた。父を亡くした悲しみよりも一層深い哀しみに襲われて涙で何も見えなくなった。

 私は何も見ようとしていなかった。真実は目の前にあったというのに。

 愛に絶望していながら愛を渇望し、愛を眺めながら愛に怯えて近付かない、そんな幼子が大吾だった。

 私にとって大吾は何なのか? ぐるぐる回る頭では答えが出ずにそのまま意識を手放した。



 ***



 デート用の服だと大吾に見せても反応は無い。

 デート用の下着だと大吾に見せても反応は無い。

 大吾の瞳に私に対する熱を帯びた情熱が映らない。

 いつからだろう?

 いつ無くなったのだろう?

 なぜ気付かなかったのだろう?

 今更こちらからアプローチした所で大吾の気持ちが動く事は無いだろう。

 何かきっかけさえあれば。何か少しのチャンスでいいのだ。次は絶対に――

 そんな私に神様がチャンスを与えてくれた。



 ***



「保育園時代から長く続いた腐れ縁の俺達の関係もこの辺りでケリを付けたいと思う。改まって言わせてもらう。俺と付き合ってくれ!」


 大吾に呼び出された放課後の校舎裏、用件は大吾からの告白だった。

 久しぶりに見る生き生きとした大吾の目。

 "私に対して"ではないはずなので、この告白には裏があると考えるのが妥当だ。

 何があるのか分からないけど"大吾から動いた"のだ、このチャンスを逃すわけにはいかない。


「わかった。いいよ」

「えっ!?」


 予想外の返事でした、と大吾が素っ頓狂な声を上げた。


「どうかしたの、大吾?」

「いや、付き合うって、どこかに一緒に買い物に行くとか、そんなんじゃないんだぞ」


 慌てふためく大吾の姿を見るのも久しぶりだった。


「知ってるよ、それくらい! 男女が仲良くする事でしょう」

「そうだ、間違ってはいない。けど、間違っている――」


 多分言ってる大吾自身、何を言っているか分かっていないだろう。


「お前、好きな奴が出来たんだろ?」

「それが大吾に何が関係あるのよ?」

「いや、他に好きな奴がいるのにどうして俺の告白にOKするんだよ?」

「しちゃあ、悪いの?」

「いや、悪いだろ?好きな奴はどうするんだよ?」

「それはそれ、これはこれ。何か文句でもあるの?」

「いや、ない――じゃなくて、ある!」


 私の好きにしろと言い出したのは大吾なのに不思議な事を言う。


「俺なんかと付き合わずにそいつと付き合えばいいじゃないか!」

「ふーん? 何か変ね。大吾から告白してきたくせに承諾されて納得しないんだ? おかしくないかな?」

「何の話だか――」

「さあ、しらばっくれずに正直に話してもらいましょうか」


 懐に入ってしまえば絶対に手を出さない大吾に打つ手は無くなる。既に勝敗は決したと言っても過言では無かった。



 ***



「ふーん。振られて落ち込んでいる事をアピールして、その女神先輩にあんな事やこんな事を手取り足取り教えて貰って童貞を捨てようとした、という事で間違いないわけね?」

「はい」

「素直でよろしい」

「いやいや、沙耶香だって『最近、気になる人がいるんだ』って友達に相談していたじゃないか! そいつは良いのかよ?」

「ああ、それは大吾、あんたの事よ。今まで以上に気になるから相談に乗ってもらってただけよ」

「今まで以上、ってまるで俺に気があったみたいな言い方するじゃ無いか――」

「あら、気付いていなかったの? あれだけアピールしてたでしょう?」

「何の事だか――」


 思い当たる事があります! と大吾が不自然に視線をそらした。わかりやす過ぎるよ。


「本当に何の事か分からない? 女の子が好きでも無い男に下着見せたりすると思うの?」


 私は結構勇気を出して見せていたんだよ? 相手が大吾だからといって、恥ずかしくない訳ないじゃない。


「あれは俺の小遣いで買ったから――」

「見せてもらえて当然と思ってたんだ? 本当にそうかな?」

「それは――」


 鈍感なふりをするのもそろそろ終わりだよ。自分の気持ちに蓋をしなくていいの。


「それに将来、大吾のお嫁さんにしてくれるんでしょう?」

「おじさんと約束したからな――」

「そのお嫁さんが『旦那様を大好きだ!』って言ってるのに信じないの?」

「えっ? いや、それは――」

「それとも大吾は私の事が嫌いなの? それなら仕方ないけど――」

 

 泣き真似するつもりが本気で悲しくなり、両の眼からとめどなく涙が溢れ出した。大吾に泣き顔を見せるつもりはなかったのだが。


「いや、好きだよ! 沙耶香の事は大好きだ! 本気で好きだ!」

「嬉しいよ。えへへ、やっと言ってくれたね」


 大好きだよ、大吾。

 しまった! という顔をしてる大吾に問い掛ける。


「大吾を好きだって信じてもらうにはどうしたらいい?」

「彼氏と言ってたけど、本当はおじさんと出掛けていただけなのは知っている。それでも俺は愛される自信がない。母親に捨てられた俺はまた捨てられたらどうしようと考えると何も出来なくなる。沙耶香を信じて捨てられたらもう生きていけないんだ。だけど何も信じなければ裏切られることもない」

「今は信じられなくてもいいんだよ。"私に勝つ"まではずっと側に居て貰うんだから、絶対に離さないよ。ずっと側にいるからね」


 大吾の優しさゆえに"私に勝つ"事は今後も絶対にない。その事は二人とも分かっている。決して言葉に出さないけれど。

 私は大吾に近寄ると大吾の頭を優しく抱きしめた。


「私の初めてをあげて、大吾の初めてを貰って、二人の子供を産んで。大吾は私たちの子供を愛してくれるのでしょう?」

「当たり前だろう! そんなの決まってるじゃないか」

「なら、それでいいんだよ。大吾が愛を信じられなくても、信じきれなくても、私はずっとあなたのそばに居るからね」


 二人を死が別つまで。

 私の腕の中で静かに泣いている大吾の頭を撫ぜるのだった。いつまでも、いつまでも。


 女神になれなくても、いつも側にいるからね。

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腐れ縁の幼馴染に告白する -年上女神に癒されたい- 青空のら @aozoranora

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