第435話 閑話 ロシンケさん1
最果ての町に1つのマッサージ店があった。
評判がよく 行くと1回で肩コリ腰痛が楽になるという凄腕のマッサージ師が経営する店だ。
店の名は 「ムケンシトクホ」
「アタタタタタタタタ アター!」
店内に奇声が響き渡る。
「マッサージの一つ 肩コリをほぐすツボを突いた。おまえはすでに生きている・・・」
「あたりめーだよ。生きてるからマッサージを受けに来たんだ。死んでたらここに来てねーだろ。ありがとよ。楽になった」
「お大事に・・・またどうぞ」
お客さんは肩を回しながら、足取り軽く帰っていった。
マッサージ師の名前はロシンケさん。
まゆ毛が極太で寡黙な人だ。
お客さんをお前呼ばわりするところがあるけど、効果抜群で親切なマッサージ師さんだ。
ロシンケさんの胸には7つのお灸の跡がある。
その、お灸跡は「北斗七星」・・・
ではなく・・・
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よく見ると「ケ」と見える。
ロシンケさんのラストイニシャルの「ケ」である。
昔、治療家ライバルの鍼灸師につけられたお灸跡だという。
ジョイセさんが治療活動を始めるまでは、店は繁盛していた。
今はお客さんが来ない状態が続いている。
「客がこない・・・ 頭が・・・イタタタタ イター」
あまりに客が来ないので頭が痛くなったようだ。
「このままでは・・ルフダンワ亭でたこ焼きが買えなくなる・・」
ロシンケさんのマッサージ店は、お客さんが来ないため生活が苦しくなっているようだ。
好物のたこ焼きが買えなくなることを恐れている。
そしてロシンケさんは考えた。
「冒険者を・・・やろう」
マッサージ店と冒険者を兼業することを考えた。
ロシンケさんは、さっそく冒険者ギルドへ登録にいった。
そして、冒険者登録をすませた。
冒険者ギルドには、酒場があり、いかつい男たちが昼間から酒を飲んでいた。
「なんだ 新人か?そんなら俺が冒険者の基礎を教えてやるよ」
ひとりの冒険者がロシンケさんに絡んできた。
「きさまに用はない・・・」
ロシンケさんは素通りしてギルドを出ようとした。
「遠慮すんな、俺が基礎を教えてやるぜ」
「きさまに用はないといったはずだ」
「いいから こい」
「ま、まて。店に戻らないとだな・・・」
ロシンケさんは強引に訓練場に連れていかれた。
そして・・・
「冒険者はな・・・魔物に出会ったら・・・命を粗末にするなよ」
なにげに心優しい冒険者に基礎を教えてもらったロケンシさんだった。
「いいか、命の危険を感じたら先手必勝だ。不意打ちで身を守るんだ。卑怯でもなんでもいいから命を大事にしろよ」
「心得た・・・名もなき冒険者よ・・ありがとう」
「おめーは堅苦しいな。もっとフレンドリーにいこうぜ。じゃーな」
心優しい冒険者はさっていった。
「いいやつもいるものだ・・この荒廃した世紀末・・明日をも知れぬ世界に・・光をみた・・」
ロシンケさんは、明日にもタコ焼きが買えなくなるような経営難の中、親切にされ、希望の光を見たのだった。
「あっ・・・名前を聞くのを忘れた。あの名もなき冒険者はイレと呼ぼう・・・」
ロシンケさんは心優しい冒険者に、勝手に名前をつけた。
冒険者登録を終え、優しい冒険者に心得を教わり、自分のマッサージ店に帰る途中の出来事。
「よう よう よう」
「あんたに聞きたいことがあるんだ」
「ちょっと面貸せや」
最果ての町名物 ゴロツキ3人組がロシンケさんに話しかけて来た。
むさい男3人組に話しかけられたロケンシさんは優しい冒険者の言葉を思い出した。
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「いいか、命の危険を感じたら先手必勝だ。不意打ちで身を守るんだ。卑怯でもなんでもいいから命を大事にしろよ」
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「イレ・・・」
ロケンシさんは、まさに今、命の危険を感じた。
指導してもらったとおり実行した。
「アターーーーーー!」
「アターーーーーー!」
「アターーーーーー!」
ゴロツキ3人の頭に、木刀で一発ずつ お見舞いした。
ドガ!
ドガ!
ドガ!
「ぶべら!なにしやがる!」
「あべし!頭が!」
「ひでぶ!たんこぶができた!」
殴られたゴロツキたちは頭に大きなタンコブがて来ている。
「マッサージの1つ・・たんこぶができるツボを突いた・・ おまえはすでに こぶがある・・」
ゴロツキ
「んなツボあるわけねーだろ。おまえが、ぶっ叩いたから たんこぶが出来たんだろーが!」
「よくもやりやがったな!」
「道を聞こうとしただけなのに この暴漢やろう!」
ドガ ビシ バシ
「アタタタタタ イタタタタタタタタタタ (ロシンケさんの叫び)」
「俺たちは、おまえに危害を加えてねーだろ!」
「いきなり襲いやがって この狂人が!」
「話しかけただけなのに暴力振るいやがって!」
ドガ ビシ バシ
「アタタタタタ イタタタタタ 痛ーーーーい!(ロシンケさんの叫び)」
ロシンケさんはボコボコにされて ピクピクしている。
「今日のところはこれで勘弁してやる」
「これに懲りたら もう悪さはするなよ」
「もう街中でいきなり襲い掛かるなよ」
ゴロツキたちは去って行った。
「俺の勘違いで怒りの攻撃を受けた・・・俺はすでに死んでいる」
ガクッ
道を聞こうとしたゴロツキを、勘違いから先に手を出し、ぼこぼこにされたロシンケさん。
ある意味、相手はゴロツキなので、勘違いではないのだが・・・。
彼の冒険者兼業生活は前途多難なスタートを切ったのだった。
つづく・・・
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