第53話 町長の馬と馬車

第53話




バキュームチマキで揉めてた町長ズを屋敷に送った。


店の前で揉められたらたまったもんじゃないからね。



屋敷に送り届けて店に戻ろうとすると


「ツコンポちゃん! ツコンポちゃん!」


町長がさけんでいる。


「ヒーショ! ドイーメ! ツコンポちゃんがいないぞ! ゆうかいされたか!」

「そんな 誘拐!?・・・」

「探してみましょう確実に!そのへんにいるかもです!」


いったい だれをよんでいるのか。

ツコンポって?

もしや町の子供がさらわれたのか?

衛兵に捜索してもらったほうがいいのでは。

「それなら衛兵に頼みましょう」


「いやダメだ。 衛兵では あてにならない」

「たぶん無理です」

「わたしたちで探さないと。確実に」


いっこくをあらそう事態なのかもしれない。

俺も協力して探すことにした。


「ツコンポちゃん」

「ツコちゃん」

「ツコちゃん」


「ツコンポちゃーん」



何時間探したか。

まだみつからない。

お店どころではなかった。


ツコンポちゃんはどこにいったのか。

誘拐されたのか。


あきらめるわけにはいかない。

町長ズも必死にさがしているんだ。


そのとき


「みつけたぞ」 


町長がツコンポちゃんを見つけた・・・

























「ヒ、ヒヒーン・・・ヒ、ヒヒーン」









見慣れたやせた馬を連れて町長が帰ってきた。

「よかった ツコちゃん」

「どこにいってたの確実に」


秘書ズがやせた馬をなでくりまわす。



「ツコンポちゃんって馬の名前だったの?」


「ヘイサク殿には 言ってなかったな。そうだ。馬の名前なのだ」



早く言ってよ。

馬だったのか。

町の子供かと思ってたのに。


そりゃ 馬の捜索を衛兵に頼んでもあてにならないよね。


「この馬はツコンポちゃんといってな。 わたしの父が健在のころからいる馬なのだ。 父はルクツ・チマイゴス男爵だ。この町をこよなく愛していた。 この町は小さな村だったのだ。父が発展させて町となって そして現在に至るのだ。しかし、無理がたたって身体を壊し病でなくなった。そしてわたしが爵位と町長職を引き継いだのだ。 この馬車は父が大切にしていた馬車でな。形見なのだ。このツコンポちゃんも父が大事にしていた馬なのだ。子供のころツコンポちゃんに乗って草原を走ったものだ。ツコンポちゃんはわたしにとっては かけがえのない家族なのだ」


チマキ町長のお父さんは男爵だったのか。

村を町に発展させるって すごい。


町長はお父さんの爵位と役職を引き継いで男爵になったのか。

酔っぱらったときに「きぞくにゃのに~」っていってたっけ。


「男爵ってけっこう偉いんじゃないんですか?」

「貴族のなかでは下だ。騎士爵や準男爵は一代かぎりだが 男爵から世襲できるのだ。男爵でも貧乏貴族が多いぞ。むしろ準男爵のほうが金持ちが多い。商人などが爵位を買うからな」


そうなのか。

俺も爵位を買えるのだろうか。


「馬車はタクラガ号って名前なんです」

「ボロボロですが大切な馬車なんです確実に」

秘書ズが説明してくれる。


タクラガ号とツコンポちゃんか。


馬も馬車も大事なものだったんだな。


だからボロボロでも使用していたのか。


町長にもそんな過去があったのね。




町長は屋敷のベランダにたたずみ空を見上げた。

風が町長の髪を揺らしている。

映画のワンシーンのようにも見えた・・・
















しかし、デカグラスをかかげながらだったのでシチュエーションの意味は まったくなかった。




その場面でなんでデカグラスをかかげるかね。



筋金入りの残念美人だ。




馬はどこにいたのかチマキ町長に聞いてみた・・・

























「ツコンポちゃんは馬車のホロの中で寝ていた。まったく人騒がせな馬だ」



人騒がせは あんただよ。

まったく。


バキュームチマキって呼んでしまいそうだ。




ちゃんと探して それでもいなかったら騒ぎなさいよ。



それにツコンポちゃん 年取りすぎてヨボヨボっぽいんだよね。


疲れ果てて馬車の中で寝てたんじゃないのか。


ヒ、ヒヒーンって馬車引くのがきついって言ってるような気がする。




秘書ズもあきれ顔でチマキ町長を見ていた。


でも大事な馬が見つかってよかった。



馬探しに時間がかかり 今日は昼過ぎからお店を開くことになりそうだ。

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