第31話 【10月1日】

 いよいよふた月めに入る。今日突然次兄がやってきた。彼がボクのアパートに来るのは三度目なのだが、いつも何の前触れもなく現れる。「家にいなかったらどうするつもり?」呆れて尋ねると、「そん時はそん時」とうそぶいた。

「お前、ちゃんと食べてるのか?」そう聞く兄の体型こそ所謂「メタボ」以外のなにものでもなく、ボクはすかさず切り返した。

「兄さんこそ少しは気をつけた方がいいよ」

「お前までケチ臭いこと言うな」みるみる口を尖らせる。「俺は『食えるときは食う』が主義なんだ」

「またお母さんと喧嘩した?」

「…いや、今度は親父」

 長男に代わって家を継いでいる彼には、やはり彼なりの苦労があるのだろう。

「今度はどれくらい泊ってく?」

「ん。2、3日かな」

 そう言うと兄は勝手にリモコンでテレビをつけ、チャンネルをめまぐるしく変え始めた。

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