其ノ弐 田圃にて
目が覚めると、辺りには血が飛び散っていた…訳ではなく、広ーい広ーい田圃のど真ん中。
一歩踏み出した時、腰でカシャリと音がする。
腰には、剣。
「俺は、武士か。」
江戸の時も武士だったけど、あの時は全然活躍できなかったからな……。今度こそ今度こそ、活躍してみせる。
「おぉ、柊真君は武士か!」
和さんが笑顔で言う。
「博士、『柊真は武士にしたのに全然活躍できなかったなぁ』とか言ってたのに、また武士にしたんだ!」
ぬぅ!博士のやろお……
そういう和さんの格好は……
「ひ……め……?」
姫。
「なぜに?」
「さあ。これ、意外と動きやすいんだけどさあ、やっぱり…恥ずい。」
でしょうね。
でも、
「意外と似合ってますよ。和さん、色白いし、目がキリッとしてるし。」
「そーうー?」
和さんは流し目をしている……つもりなんだろうけど、ちょっと下手、かな。
「こんにちは、皆さん!」
美沙さんは忍者、ですね。
「「……。」」
「なぜ、ノーコメント?」
「やあ、なんかしっくりしすぎて。」
その時、美沙さんが何かを飛ばした。
チャキン、と後ろで音がする。
後ろを振り返ると、何かが落ちていた。
これは、
「くない?」
菱形の刃に持ち手がついてるみたいな、忍者が持っているやつ。
近づいてよく見てみると、刃に何か塗られていた。
「美沙さん、これって…、」
「ん、毒だよ。」
どぅええええええ!
「「そんなのをこっちに飛ばすなよ!」」
俺もついタメ口に。
「だってさ、もっとなんか言ってほしかったな…て…。」
「か、かわいい…。」
和さん、応援してます。
そんなふうに笑っていたら、気づくと、肩の力が抜けていた。さっきまで、まったく心に余裕がなかったのに。
たぶん、二人のおかげだ。ありがとうございます、と小さく呟く。
「それにしても、」
「「「ここ、どこだろう。」」」
今更かよって突っ込んだそこのあなた。みんなの格好の癖が凄すぎて(正確にはみんなの行動の癖)、すっかり忘れていたのです、この世にでっかい田圃は腐るほどあると。
「んまあ、北にいけばいいんじゃない?」
そういうと、美沙さんは、凄い勢いで走り出した。
「美沙、待って!」
ってか、
「「そっちは北じゃない!」」
太陽に向かっていってどうする。
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