第15話魔法使いと治癒術師加入後初配信

 今日は琴宮さんと古城さん加入後の初配信


 普通の配信者なら飽きられて同接が減ってもおかしくないが、勇者パーティーは更に注目度が増し、チャンネル登録者と同接が増え続けている。


「こんにちは。今日も見に来てくれてありがとうございます。事前告知の通り二人メンバーが新しく加入します。魔法使いのアマネと治癒術師のカリンです」


 ”こん勇者さま~”

 ”今日も美しい”

 ”待ってました”

 ”初見です”

 ”お~二人か。ウェックス見てなかったから知らなかった”


「先ずはアマネから自己紹介お願いします」


「え……あ……ま……ま……魔法使いのコ……アマネです。よ……よろしく」


 ”きちゃぁぁぁ!!!”

 ”緊張しすぎ”

 ”リラックス”

 ”可愛い系か”


 琴宮さん、異常に緊張してるな。

 式町先輩の初配信以上かも。


「続いてカリン」


「は~い、治癒術師のカリンです。みなさん、よろしくね~」


 ”こちらも可愛い”

 ”癒し系”

 ”推し確定”


 古城さんは落ち着いてるな。

 穏やかな雰囲気は早くもファンを獲得しているようだ。


「パチパチパチ。二人ともよろしくね。二人とも慣れないと思いますけど、みなさん、温かく見守って下さいね」


 ”任せて”

 ”見守ることだけはプロ”

 ”草”





 五人は配信を始めた。

 新加入の二人のために上層攻略をするようだ。


 スライムやゴブリンを難なく倒せている。

 琴宮さんは最初緊張していたが、戦闘に関しては以前ギリギリとはいえ下層まで言った実力者なので、全く問題なかった。


 前衛が強すぎてダメージを負うことがなく古城さんの出番はないが、負傷者が出ても古城さんが回復してくれるという安心感をパーティーに与えている。





 俺も例のごとく勇者パーティーから少し離れた場所で配信を始める。


「貴様ら、本日も我のありがたい配信をとくと見てゆくが良い」


 ”こん魔王様~”

 ”深層配信は?”

 ”魔王様、日和った?”


「深層のモンスターが可哀想なのでな。上層で配信しておる。我もそろそろ手加減を覚えんといかんからな」


 ”上層のモンスターが可哀想”

 ”草”


「今日はスライムとゴブリンを同時に倒す方法を貴様らに分かりやすく教えてやろう。丁度近くにスライムが湧いておる。そして離れた場所にゴブリンがおる。この位置関係が大事だ」


 ”どういうこと?”

 ”珍しく役に立ちそうな予感”


「先ずはスライムを掴む。それを下手投げで転がす。どうだ? ゴブリンの群れが倒れたであろう? そこを魔法で殲滅する。魔炎。《ダークファイア》そうだ。ボーリングの要領だ。貴様らが分かりやすいように身近なもので例えてやったぞ」


 ”草”

 ”結局魔法必要定期”

 ”絵面がシュール”

 ”最後の魔法を使うところがなければ再現可能だったのに”

 ”スライムは掴みたくない”






 今度は五人の前にポイズンスネークの群れが現れた。

 噛まれると毒状態になるのと、毒液を飛ばしてくる。


 戦闘能力は高くないが、その点に特に注意しないといけない。


「ユーコとトーコは前に出ないで。私とアマネに任せて」


「あたしの魔法の威力見せてやるわよ」


 倉木さんと琴宮さんの魔法でポイズンスネークを蹴散らしている。

 倉木さんと古城さんは解毒魔法を使えるが、その必要はなさそうだ。






「貴様らに残念なお知らせがある」


 ”?”

 ”?”

 ”?”

 ”どうした? 魔王様”


「完璧に見える我にも出来ぬことがある。治癒魔法だ。ポイズンスネークの群れがおる。解毒魔法が使えぬ我にとって天敵と言えよう。だが、ここで退く我ではない。まだ明確な攻略法が見えておらぬが、これも何かの機会だ。貴様らの気付きになるやもしれん。見せてやろう、ポイズンスネーク対策を」


 ”おお、魔王様にも苦手なものが”

 ”魔王様初めての敗北か”

 ”いや、それでもやり遂げるのが魔王様”


 俺の近くにはポイズンスネークの群れがいた。

 そのうちの一匹の毒液を俺は食らう。


「う……うぅ……」


 ”おいおいマジかよ”

 ”嘘だろ……”

 ”魔王様負けるのか”

 ”負けるっていうかほっといたら死ぬぞ”


 リスナーは予期しない事態に混乱している。


「などと申すと思ったか? 貴様らはRPGをやったことがないのか? 魔王に毒が効くわけなかろう。魔王の止めのダメージが毒だったら嫌だろう? 世界を救うのが剣でも攻撃魔法でもなく、毒ダメージだったら嫌だろう? 毒耐性など持っておるわ、愚か者ども。騙されおったな。魔炎ダークファイア

 俺はポイズンスネークの群れを殲滅した。


 ”草”

 ”世界を救う毒ダメージ”

 ”毒ダメージで倒されるラスボス嫌”

 ”でもマジで無事で良かった。

 ”ほんそれ。ちょっと焦った”


 リスナーは俺の心配をしてくれた。

 おふざけだったが、少しやりすぎたか。





 優子ちゃんたちはポイズンスネークの群れを殲滅し先に進もうとしている。

 今日はまだ配信を続けるようだ。


 俺も先に進むことにする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る