第2話最強の魔王様、勇者を救う
間に合え! 俺は必死で走った。
何でダンジョン外では転移魔法が使えない……。
ダンジョンの入口だ。
中に入ることが出来れば転移魔法が使える。
急いで転移魔法を使わないと。
俺が転移すると、二人は窮地に陥っていた。
当たり前だ。
二人は戦闘の初心者だ。
他のジョブよりかは初期能力が高いが、規格外の戦力の火龍では相手が悪い。
不本意な形で想定外のモンスターの襲撃を受けて、咄嗟に対応できるわけがないだろう。
火龍は大口を開けて二人に向けてブレスを吐き出そうとしていた。
「させるか!
俺は闇魔法を放ち、ブレスを吹き飛ばした。
間に合った。
「真央君、来てくれた……」
優子ちゃんは安堵しているようだ。
優子ちゃんの無事を確認した俺から出た台詞は……
『ふはははは!!!!! 呼んだか、勇者よ? 無様なり! そのような矮小な相手如きに遅れをとるとは。我が永遠のライバルと思っていたが、見込み違いだったか』
魔王様キャラの中二病台詞だった。
こんな時でも自分のブランディングを捨てられない俺がいる。
悲しい性だ。
俺は配信してないが、優子ちゃんのリスナーが見ているのでキャラを守らなくてはならない。
”待ってましたー!!!”
”魔王様ー!!!”
”カッコいいー!!!”
”勇者のピンチに魔王が駆けつけるなんて”
”これでもうもう安心!!!”
”魔王様ー火龍なんてぶっ飛ばしてー!!!”
”なんだかんだで誰かがピンチに陥ってたら駆けつける魔王様惚れる”
「勘違いするな、貴様ら! 我は勇者の無様な姿を見にきただけだ」
優子ちゃん、必ず守って見せる。
俺の命にかけても。
”はい、嘘~、絶対助けま~す”
”魔王様、良い人ばれしてるの気付いてないのかな”
「真央君……」
火龍は己のブレスが吹き飛ばされたのが不服なのか俺を見据えている。
「火龍か。龍と言えば魔王の眷属。我の下僕になるならば許してやらんこともないぞ」
”魔王様火龍を仲間にしようとして草
”テイマーかな?””
「グオオオオオ!!!」
火龍は尻尾を俺目掛けて振り下ろしてくる。
俺はその尻尾を掴んでぶん投げた。
火龍は宙を舞い、ダンジョンの壁に衝突した。
「大人しく下僕になれば命を落とさずに済んだものを。お望み通り相手をしてやろう」
火龍は怒りを露わにし、俺に向かって来る。
爪や尻尾を振り回してくるが、俺は落ち着いて回避する。
「どうした? ご自慢のブレスを撃たないのか? そうだろうな、あれだけの威力のブレス、連発できるはずがないものな。貴様のブレスなど我に何発撃とうとも効きはしないことを教えてやろうかと思ったが、そうもいかないらしいな。これでお終いだ!」
俺は火龍に向けて手の平を向ける。
「
俺の手の平から放たれた闇の炎は火龍の体を吹き飛ばす。
「ふん、手ごたえのない奴だ」
”魔王様、強すぎ~!!!”
”さす魔王~!!!”
”魔王様しか勝たん!!!”
”一時はどうなるかと思ったが、助かった~”
”勇者様と賢者様助かって良かった~!!!”
俺も優子ちゃんが無事でよかったと胸をなでおろす。
「真央君、来てくれるって信じてたよ」
「貴様は先程から何を言っている? 甘えるな、あの程度の敵倒せずに何が勇者だ。早く我の高みまで来い! そこで決着をつけようではないか」
「ええ、望むところよ。君は必ず倒す。魔王を倒すのが勇者の使命だからね」
優子ちゃん、俺のコントにノッってきた~!!!
意外にノリいいんだな。
付き合ってた時には気付かなかったけど。
「ありがとね、真央君」
「だからそれは止めろと言っておろう。くっ、まあよい、帰るぞ」
可愛すぎだろ。
俺は二人を転移魔法でダンジョンの入口まで送り届けた。
「さらばだ。精々精進するのだな、勇者よ」
「うん、私強くなるね。じゃあ、また明日学校でね」
「何だ学校とは? 我はこれより魔王城に帰還する。貴様とはしばらく会えんだろう」
「うん、また明日」
全然話が噛み合っていない。
そして可愛い。
こんな二人が付き合っていたなんて不思議だ。
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口調が変わる系の主人公の話はちゃんと意味が伝わっているか不安になりますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
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