第7話 志摩十三衆
天文16年(1547年) 8月 志摩国 国府砦
滝川 彦九郎(一益)
荒波に揉まれながらも九鬼一族に会う為に志摩へやってきた滝川一益。中途半端な未来の知識によって、歴史通りに九鬼一族を信長に引き合わせなければいけないという謎の責任感を抱いた彼はなんとか九鬼家の人間と会う事ができた。
あとは肝心の信長に会うために九鬼家の人達を連れて尾張に向かわねばならない一益だったが、何故だか彼の姿はいまだに志摩国内。それも九鬼家の城ではなく、志摩十三衆の一つである国府家の国府城にあった――。
海賊衆・権八に案内された
特に
我々を案内してくれた褌一丁で筋肉ムキムキ、髷すら結かずボサボサ髪の脳筋海賊・権八君を見たあとに会わなきゃならない海賊の親玉って事で、かなり身構えて重隆殿と会ったがなんてことはない。
重隆殿は、羽織袴の立派な身なりのちゃんとした武士だった。重隆さん……、
それはともかく、俺が渡した血判状を読んだ重隆殿は事態を重く受け止め、兄である当主・九鬼定隆へと繋ぎをとってくれた。
そうして権八君、重隆殿を経由して、ようやく定隆殿に面会できることとなったのだが、なんと場所が波切からしばらく北上した位置にある田城城。意外と九鬼家の領地は広範囲にあるって事がよくわかりました……。
陸路を進みようやく九鬼定隆殿に会う事ができたはいいが、血判状を読んだ当の当主・定隆殿が大激昂。志摩十三衆を逆に攻めると言い出す始末であった。
そんな九鬼定隆殿のステータスはこれ。
“ 九鬼 宮内大輔(定隆) ステータス “
統率:75(−20) 武力:90(−20) 知略:35(−20) 政治:40(−20)
" 所持 "
・なし
" スキル "
・病気 (全ステータス:−20)
うひょー。さすが海賊の親玉。こいつも脳筋族だったぜー。しかも権八なんか目じゃないほどの脳筋具合だ。
だがしかし、定隆が病で亡くなるのはまだ先の出来事のはずなのだが、ステータスの"スキル"欄には病気の二文字が表示されている。どうやら定隆殿はこの頃から病に身体を蝕まれていたようだ。
お陰で低かった知略もかなりまずいことになっていて、もはやその数値はそのへんで畑を耕す農民と同じレベル。これでは当主として正常な判断はできそうにない。
怒りに我を忘れる定隆殿をなんとか家臣も含め
浄隆くんは何故か俺を連れて国府砦へとやってきた――、って、なんで家臣でもない男を従者として連れて行く!? 俺はただ血判状を持ってきただけなんだが!?
まったく……、俺はとっとと尾張の信長さんのとこに行きたいんだ。証拠は渡したんだからあとはお前らでなんとかしてくれぇ……。
ちなみに俺を連れて来た九鬼宮内少輔(浄隆)のステータスはこれ。
" 九鬼 宮内少輔(浄隆) ステータス "
統率:78 武力:74(−10) 知略:73 政治:70
" スキル "
・虚弱体質 (武力:−10)
実にオールマイティっ!! 長所もなければ短所もないっ!!
当主・九鬼定隆を筆頭に腕っぷしの強さが物を言う海賊衆なだけあって、九鬼家臣達は皆がとんでもなく鍛え抜かれた身体をしている。ステータスも武力が高い人が多いのだが、そんな中で嫡男・宮内少輔(浄隆)は全ての能力がそこそこ高い。
だが、惜しいかな……。彼は身体が生まれつき弱いらしく、武力ステータスにマイナスが付いている。脳筋族、九鬼家に生まれながらそこにマイナスが付いてしまうとは……。
ただ、その代わりとして知略・政治が高いため、領地差配の代官や領主としては優秀だろう。武家当主としては父親の九鬼定隆殿よりむしろ浄隆くんのほうが適性があると言っても過言ではない。
「それでぇ、最近志摩で最も勢いのある九鬼家嫡男の宮内少輔(浄隆)殿が、我が
対面に座る中肉中背のこの男性。顔は笑顔なのだが、目がまったく笑っていない。笑みで細くなった目の奥で黒い瞳が冷徹な光を放っている――。
この胡散臭そうな笑顔が特徴的な中年の男は国府当主・内膳正(別名:三浦新助)。志摩十三衆の中であの血判状に名前の無かった唯一の男なのだ。
国府内膳正のステータスはこちら。
" 国府 内膳正(三浦新助) ステータス "
統率:68 武力:54 知略:87 政治:72
あれ……。意外と高くね? こいつぁ知将タイプの武将じゃねぇか。
よくよく見ると武力ステータスは大した事はないが、知略・政治がとても高い。俺の政治:85では内膳正の知略:87を説得できないし、その逆に内膳正の政治:72では俺の知略:75を説得はできない。
なんとも五分と五分の外交交渉になりそうだ……。
「此度は我が九鬼家を取り巻く志摩地頭の
「はてさて……。企みなどとは物騒な」
飄々とした表情のこの男。他の志摩の地頭の名前があるのにこの男だけ誘われぬことなどあり得ないだろう。何か理由があって断ったのか、それともなにか迷いがあるのか……。
「国府殿にも、志摩十三衆からなにやらお誘いがあったのではないですか? 例えば……、皆で結託して
「ほぉ……。それはそれはなかなか物騒な企みに御座いますなぁ。仮に、そのような企みがあったとして、儂が貴殿に正直に答えるとお思いで? 」
「実は企みに関して、とある物を手に入れた
「ふむ……。なにを手に入れたのでしょうか」
「滝川様……、あれを国府殿に」
「はいよ。では、国府殿。こちらの血判状をご覧ください」
おいおい浄隆くん。「なにが滝川様、あれを国府殿に」だ。なーんで俺がまるで君の助手のように扱われなきゃならないんだ。まったく……。
この野郎。こうなれば俺のステータスを活かして【 舌戦 】を発動してやる。
俺と国府内膳正の政治・知略ステータスはほぼ互角。だが、俺には血判状というステータスバフがあるのだ!!
いざっ!!【 舌戦 】
「内膳正殿、この印に見覚えは? 」
「こ、これは志摩十三衆の
「
「そんな馬鹿な……」
先ほどまでは余裕の笑みを浮かべた国府内膳正だったが、今や俺の手元の血判状を見て厳しい表情。一泡吹かせることが出来たようで俺の気持ちも少しスッキリだ。
「まぁ事実、こうしてこれを手に入れられたわけだからね。とにかく、これを見ると志摩十三衆で九鬼家、国府家を除く十一の御家が血判を押している。だが、内膳正の印はない。はてさて、これは一体どうしたことか」
【 舌戦結果 】
滝川一益・政治: 85(血判状: +20) 対 国府内膳正・知略: 87
滝川一益の勝利!!
「なるほど。どうやら宮内少輔殿は良いご友人をお待ちのようだ。この御仁との縁は大切になされることをおすすめするよ」
「はっ……」
しばらく厳しい表情をしていた内膳正だが、浄隆くんにそう言うと、また例の胡散臭い笑みを顔に貼り付けた。
「さて、当家の印がない理由でござるが……。たしかに当家にも誘いはありましたが、断り申したからだ。九鬼包囲網に加担せぬ代わりに九鬼に
俺が【 舌戦 】を発動しなくても血判状という証拠だけでそのまま説得できたような気もするが……。とにかく、これで国府殿にも他の志摩地頭達から包囲網への誘いがあったことが判明したぞ。
この人の証言で確実に九鬼家が志摩の他の地頭から狙われている事は明らかになったな。いくら志摩で頭一つ抜けた武力の九鬼家といえど、一気に十一もの御家と
「何故、国府殿はこの血判状に賛同しなかったのですか……」
話を聞いていた浄隆くんが内膳正にそう問うた。たしかにこの人はなぜ包囲網に参加しないんだろうか。如何にも胡散臭く、信用できそうにない野郎なのだが……。
「儂は昔、伊勢別宮の長官(志摩国で権威ある立場)を襲撃した際、其方のお祖父様とお父上に
そう言う内膳正は不敵に笑っていた。
なんだか一見するといい奴みたいに思えたセリフだったが、
内膳正は、父親の九鬼定隆には恩があって喧嘩は売らないと決めているようだが、九鬼家自体に恩があるわけじゃない。定隆殿が病で亡くなれば、内膳正が中立を保つとは限らないって事だ。
となると、やはり九鬼家は遠くない将来、志摩の地頭から袋叩きにされることだろう……。
「わかりました……。このこと戻って九鬼家中に伝えても宜しいですかな? 」
「あぁ、もちろんよいぞ。それと、なんでも宮内大輔殿は最近お身体の調子が悪いとか。宮内大輔殿にはお身体大事にせよとお伝え下され。ふふふっ……」
「……ははっ。
不気味に笑う内膳正に不安を抱きつつ、こうして俺たちは国府砦を後にした。
これで言質と血判状が本物だと言うことが証明はできたが、どうやって九鬼家臣達と定隆殿を説得したもんかなぁ。
九鬼家包囲網は完成していないとはいえ、いつまで安全なのかなんてわかりゃしない。俺が歴史に介入する事で早まることだってあり得るしな。
はてさて、これからどうしたもんかねぇ……。
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