エピローグ シンデレラボーイは、この『爆乳わん娘』を幸せにする義務がある!
よこたんとメバチ先輩たちが、俺の『人権』を巡り争ってから1週間。
ほんと、この1週間、色々あった。
古羊弟がマイ☆エンジェルを賭けて勝負を挑んできたり、近所の
俺の彼女、モテ過ぎ問題について……。
そう、今日は待ちに待った【模擬結婚式】当日である!
「やっべ、緊張してきた!?」
「落ち着いてください教官! まだ始まったばっかりですよ?」
そう言って、牧師の代わりに誓いの言葉を口にする予定の『軍曹』こと根津三美さんが、小声で俺を叱責してくる。
現在俺達は、例の結婚式場のチャペルで、多くのカメラクルーと仕込みの参列客、そして呼んでもいないのにやって来た森実高校の野郎連中たちの前に立っていた。
「なぁ軍曹? 俺の服装、大丈夫? 浮いてない?」
「大丈夫です! そのタキシード、最高にキマってますよ教官!」
祭壇の前で、グっ! と親指を俺に突き立てる軍曹を尻目に、俺は自分の服装を見下ろした。
純白のタキシードが目に眩しい。
う~む?
何とも心が落ち着かない。
俺は居心地の悪さを誤魔化すように、自慢のリーゼントを撫でようとして、そう言えばオールバックにされていた事を思い出した。
「何もココまでする事なかったよなぁ……」
「教官、静かに! 新婦が入場しますよ」
シッ! と自分の唇の前に、人差し指を持っていく軍曹。
瞬間、まるでそのタイミングを待っていた! と言わんばかりに、入口の扉が開いた。
全員の視線が、入口で
そこには、純白のウェディングドレスに、薄っすら化粧をした1人の女性が立っていた。
古羊洋子が立っていた。
「……きれい」
仕込みの参列者の1人が、思わず
なんというか……まるで1枚の名画を見ているような気分だ。
ドレス自体はオードソックスなのだが、いやオードソックスだからこそ、身体のパーツの1つ1つを美しく
純白の手袋は細く、しなやかな指先を。
腰から広がるロングスカートは、ほっそりとした腰つきを。
チューブトップのドレスは、逆にシンプルにする事で、キメ細かい肌と豊かな胸元を強調していた。
「天使さまだ……」
誰も彼もが呼吸すら忘れて、マイ☆エンジェルに見惚れていた。
よこたんは、しずしずとバージンロードの上を歩き、俺の横へと並んだ。
「ししょー。ど、どうかな?」
俺の知っている『いつもの』笑みで、ふわっ♪ と微笑む、爆乳わん娘。
こういうとき『いつもの』俺なら、少女漫画に出て来るスカしたイケメンのように、気の利いたセリフをまるで小鳥が歌うように口にするのだが……おかしい?
どういうワケか、今日の俺の舌は一向に仕事をしようとする気配がない。
普段は余計な事ばかり口にするクセに、なぜ肝心な所で役に立たないんだ、俺の舌は!?
俺は震える舌を必死に叱責し、気合と根性で何とか言葉をひり出した。
「お、おぅ。その……すげぇ似合ってる。うん、綺麗だ……」
「あ、ありがとう。……えへへ♪」
よこたんは、耳まで真っ赤にしながら、照れたように「えへへ♪」と笑った。
可愛い。
マジかよ?
コレが俺のお嫁さんなの?
もう一生分の運を使っちゃったんじゃねぇの、俺?
「ししょーもカッコイイよ?」
「バカ野郎。俺はいつでもカッコイイんだよ」
軽口を叩きながら、自分の顔が赤くなっているのが本能的に分かった。
うぅ~っ!?
マイ☆エンジェルの顔を
ちょっと?
ウチのお嫁さん、可愛すぎない?
見る特級呪物かよ?
「こほんっ! ……2人とも? そろそろ進行してもいいかな?」
「ハッ!?」
「す、すみません、ネズさん!? ど、どうぞ続けてください!」
軍曹の言葉に、我に返った俺達は、慌ててコクコクッ! と首を縦に振った。
軍曹は「よろしい」と小さく頷くなり、結婚式でよく見る誓いの言葉を口にし始めた。
本来ならここで、カメラクルー達は軍曹をピックアップするべくカメラを寄せる所なのだが、全員漏れなくマイ☆エンジェルから画角を外そうとしない。
むっ!?
アイツら、俺のラブリー☆マイエンジェルをスケベな目で見ているな?
あとで全員、瞳にレーザーポインターを照射してやろう。
「――そしてココで指輪交換なのですが、今日は割愛。教官、洋子ちゃん、顔を近づけるだけでいいから、誓いのキスのフリだけお願い。多分ココがCMに流れるから」
「りょ、了解しました!」
「精いっぱい頑張りまふっ!」
「……敬礼はしなくていいからね?」
苦笑を浮かべる軍曹を横目に、俺達は互いに見つめ合った。
……関係ないけどさ、まつ毛長いなぁ、コイツ? 作り物みてぇ。
うわっ!?
唇ぷるっぷる♪ だ!?
すげぇっ!
「そ、それでは行きまふにょっ?」
「よ、よろしくお
知的でクールな俺らしくもなく、台詞がカミカミになってしまった。
どうやら少し緊張しているらしい。
そんな俺の緊張がマイ☆エンジェルに伝わったのか、よこたんも変な方言を巧みに使いこなしながら、小刻みに震えていた。
「ど、どうぞっ!」
よこたんは、覚悟を決めたように、そっと顔を上げた。
その様子を見て、俺は今さらながら自覚した。
あぁ、俺は本当にこの子の事が好きなんだな――と。
どうあがいても、身体が、心が、彼女の事を愛していると叫んでいる。
ココで本当にキスをしてしまったら、どうなってしまうのだろうか?
「ししょー?」
一向に顔を近づけようとしない俺に、よこたんが不思議そうな視線を送ってきた。
俺はそんな爆乳わん娘に向かって、小さく頭を下げた。
「すまん、よこたん。先に謝っとく、ごめん」
「えっ? それってどういう――」
戸惑うマイ☆エンジェルに、俺はゆっくりと顔を近づけた。
そして――
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