第14話 正義は必ず勝つ!
俺と小鳥遊転校生、どちらが真の生徒会役員に
元気と大和田ちゃんと別れ、人気の居なくなった道をトコトコと歩く俺の隣で、プンプンっ! と擬音が聞こえてきそうなくらい
俺はそんな彼女たちの機嫌を何とか取ろうと、必死になって声をかけ続けていた。
「悪かったてぇ~。でもあのままじゃ、俺、確実に生徒会を辞めさせられてただろぉ? しょうがなかったんだってぇ~」
「『しょうがなかった』って、アンタ……。また勝手に勝負なんか決めちゃって。勝つ算段とか、ちゃんとついているんでしょうねぇ?」
「そ、そうだよ、ししょーっ! こ、これで負けたらどうするの!? ほ、ホントに生徒会を辞めなきゃいけないんだよ!?」
「大丈夫だ、ちゃんと勝算はある!」
「「ほんとにぃ~?」」
双子姫の
「本当、本当! そうだなぁ……
俺は姫君たちの視線を一身に受け止めながら、必ず小鳥遊ボーイに勝てる『秘策中の秘策』を口にした。
「問題! 上は洪水、下は大火事、コレなぁ~んだ?」
「これまた、随分と古典的なクイズを出してきたわね?」
「あっ、ボクそれ知ってるよ! 答えは『お風呂』でしょ!」
「ざんね~んっ! ハ・ズ・レ☆」
「えぇ~っ!? 絶対『お風呂』だよ! 『お風呂』以外ありえないよ!」
ブーブーッ!? と、ブタさんよろしく抗議の声をあげる爆乳わん
俺はそんなマイエンジェルに、女神のような慈愛に満ちた笑みを浮かべて、答えを
「正解は『2日後の小鳥遊転校生のお
「何する気なの!? ししょー、タカナシくんのお家に何する気なの!?」
「笑顔で犯罪を予告してきたわね、この男……。サイコパスかしら?」
古羊姉妹が何故かドン引きしていた。
惚れられたかもしれない。
「冗談、冗談! 8割マイ●ル・ジョーダンだってばよぉ~っ! 他にもちゃ~んと勝利へのプロセスは用意してあるから、安心してちょ♪」
「な、なんだ冗談かぁ……もうっ! ビックリさせないでよ、ししょーっ!」
「気づきなさい、洋子。この男、半分以上本気よ?」
芽衣が何か言っていた気がするが、俺は構わず小鳥遊転校生との勝負に想いを
ふふふっ、勝負内容をコッチに預けたことを後悔させてやるぜぇ~っ!
「う、うわぁ……。ししょーが凄い悪い顔を浮かべてるよぉ~」
「ハァ……まぁ勝算があるなら別にいいわ。それよりも士狼? アンタにしては珍しかったわね?」
「あんっ? 何が?」
突然意味不明な事を口走る芽衣に、コテンと首を傾げる。
芽衣はその自慢の亜麻色の髪を風に
「ほぼほぼ初対面の人間に、あんなに敵意を剥き出しにして対立することがよ」
「あぁ~、確かに。『いつもの』ししょーなら、飄々とした感じで絡みにいくのにね。どうしてそんなにタカナシくんの事を目の仇にしてるの?」
「……言っても笑わない?」
俺が確認するように2人の顔を覗き見ると、古羊姉妹は1度だけ瞳でアイコンタクトを飛ばし合うなり、コクリッ! と小さく頷いた。
本当はこういうコトあんまり言いたくないんだけどなぁ。
なんてことを考えながら、俺は吐き捨てるように唇を動かした。
「目が気に入らねぇんだよ」
「「目ぇ?」」
「おう。あの妙に達観したような、人生の全てを悟ったような瞳が気に入らねぇんだ」
そう、小鳥遊転校生の瞳は、この世の全て嫌い、
それはまるで「俺」という存在そのものを否定されているような気がして……酷く不愉快で仕方がない。
だからムカつくのだ。
「2年A組の
「何となくだけど、士狼の言いたいことはアタシも分かるわよ。あの小鳥遊くんって男の子の目……まるで昔のアタシソックリだもの」
「昔っていうと、中学時代の?」
「そっ、引きこもっていたときのアタシね。そのときのアタシとビックリするくらいソックリな目をしてるわよ、彼」
無くしてしまったものをいつまでも忘れられず、前を向くことも、歩くことも忘れてしまった、そんな目。
と、芽衣は過去を振り返るように小さく呟いた。
ほんの少しだけ俺たちの間に漂う空気が重く。
ソレを嫌ったマイ☆エンジェルが、やけに空々しい声で「と、ところで!」と、やや強引に話題を切り替えてきた。
「タカナシくんとの勝負内容は結局どうするの、ししょー? なんだかやけに自信満々っぽいけど?」
「ふっふっふっ! それは2日後までのお楽しみだ。ただ、その日はかなり愉快なモノが見えるハズだぜ?」
「「愉快なモノ?」」
双子姫が揃って小首を傾げる。
流石は姉妹、息がぴったんこトントンだね☆
こんなに息もピッタリなのに、どうしてお胸のサイズはあんなに格差が激しいのだろうか?
まぁいい、それよりも今は小鳥遊転校生だ。
ふふふっ♪ 2日後、小鳥遊転校生の恥辱にまみれた顔が拝めるのかと思うと……オラ、わくわくすっぞ!
「待ってろよ、小鳥遊大我ぁ……。この勝負、必ず勝利して絶対に女の子を紹介して貰うぞ!」
「おーい、そこのおバカさーん? 趣旨が変わってるわよ、趣旨がぁ?」
「うぅ~、不安しかないよぉ。ほ、ほんとに大丈夫かなぁ?」
やたら不安気に俺を見つめてくる古羊姉妹。
そんな彼女の傍らで、俺は勝利を確信した笑みを溢し続けるのであった。
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