縄
勝利だギューちゃん
第1話
「ごめんない。別れてください」
高校の卒業式の日に、2年間付き合っていた彼女に振られた。
どうやら、サッカー部のエースでキャプテンだった男子に告白されたようだ。
ショックではあったが、最近冷え切っていたので予想はしていた。
だろうな。
誰だって、冴えない僕なんかより、かっこいいイケメンと付き合いたい。
そのイケメンに告白されたんだ。
喜ばない方が不思議だ。
むしろ、彼女のようなアイドル的存在の女の子が、僕と付き合ってくれていた。
それだけでも、奇跡だろう。
なので、冷静に受け入れられる自分がそこにいた。
「わかったよ。幸せにな」
「ありがとう」
新しい彼氏は、勝ち誇ったかのように僕を見る。
その横で、幸せそうに微笑む彼女。
そう言って、恋は終わった。
それから、数十年後。
僕はその後に出会った女の子と恋に落ち、付き合いだし、
そして、結婚した。
今では、幸せな毎日を送っている。
そんな中
「早くしなさいよ」
「待ってくれよ」
「本当にとろいんだから」
「少しは、持てよ」
「力仕事は男の役目よ」
「お前は、妻の仕事もしてないだろう」
「何か言った?」
「いえ、何も・・・」
町中で夫婦喧嘩をしている場面を目撃した。
男の方は、見たことあるな。
あっ、あの時のサッカー部のキャプテンだ。
変わらずかっこいいな。
悔しいが。
奥さんの方は知らない。
誰だろう?
ブクブクに太っているし、旦那を完全に下に見ている。
あんなのは奥さんにしたくない。
彼女とは別れたのか?
旦那の方が、僕に気が付いたようだ。
「おーい。久しぶり」
「どうしたの?」
「この子覚えているか?」
奥さんを指差す。
「久しぶりね、〇〇くん」
えっ、もしかして、僕が高校の頃付き合っていた彼女?
なんだか目がきつくなってないか?
「なあ、今さらだがこの子、お前に返すよ」
「なして?」
「結婚したとたんに、見ての通りぶくぶくに太りだすし」
「外見だけで判断するなよ」
「変わったのは外見だけではないよ。奥さんらしいことは何もしないし、こき使うし、俺の事を見下すし・・・」
「あんたに魅力がなくなったのが、いけないんでしょ。あんたを選んであげたんだから、感謝しなさい」
こんなに高圧的な子だったのか・・・
あの時振られてよかった。
縄 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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