現実ではコミュ障オタクでダメダメな俺でも夢の中なら最強です!

ジョンブルジョン

第1話 ドリーム

「……オイ」


 だれだよ……


「……オイオキロ」


 さっき寝たばかりだろ……疲れてるんだよ俺は。


「交代の時間だ! 起きろ寝坊助!!!」


 ゴッ!


「痛てえ! 何しやがる!!!」


 くそ、誰だよ人が気持ち良く寝てるってのに。

 つーか起こすにしろもう少しやり方ってもんが……

 あ?


「やっと起きやがったか、交代の時間だ準備しろ」

「お、おう……」


 いや、ここどこよ? 焚火なんざ焚いちゃって、俺キャンプになんか来たっけ?

 周りは暗くて良く分かんねーけど、何か森の中っぽいし。

 いやいや、俺キャンプ趣味とか無いし一緒に行く友達とかも居ないよ?

 つーか、あんた誰よ! ってでけーなオイ、何そのモリモリの筋肉、ボディービルダー顔負けじゃん。

 背も2メーター位あんじゃね?

 縦にも横にもでけーってプロレスラーか何かか? 威圧感半ぱねーな!

 それよりその恰好何だよ、プロテクター? 鎧? 革とか金属で出来た、とにかくそんな感じのを身に着けてるけど、防具にしちゃ面積狭すぎない?

 左胸と両肩、それに肘から手首にかけて、下半身は脛の所が守られてるけど、それ以外はむき出しじゃん。

 あと上半身裸で付けてるけど、擦れて痛かったりしないの?


「何ボケーっとしてんだよ、まだ寝ぼけてるのか? ったくしょうがねーなー我らが勇者様は。

 ほらこれ飲んでとっとと目を覚ませ」

「あ、ども」


 威圧感すげーけど、案外優しい? 見た目で判断して悪かったな名も知らぬレスラーさん(仮名)

 っと、これは……コーヒー……? 匂いはそんな感じだけど。


「にっげ! クソにげー」

「俺様特性の気付け薬入りコーヒーは気に入ったか? 一発で目覚めたろ」

「笑ってんじゃねーよ! 余計なもん入れるなって毎度・・言ってるだろーが」


 ん? 毎度? あれ、俺何でそんな事言ったんだ???

 それにコイツ何か気になる事言ってたな……俺の事、勇者とか何とか……


「悪かったよ、だが目は覚めたみたいだなライト」

「なっ!」


 ライト……ああ、確かに俺の名前は来斗らいとだけど、下の名前で呼ばれて思わずビックリしちまったよ。

 下の名前で呼び合う程親しい間柄って親か親戚位だからな。

 寂しい人間で悪かったなコンチクショウ!

 でも、向こうが俺の名前を知ってるなら、俺も相手の名前知ってても可笑しくない筈……なんだが、全く思いつかん。

 だがしかし、目の前の大男の珍妙な格好と、俺の事を勇者と呼んだ事で何となく状況は理解した。

 こいつと俺は一緒に冒険してる仲間とかだろう、そんでもってここは剣と魔法で冒険なファンタジー世界。

 きっとこれから魔王の一つや二つシバキに行く、つまりそう言うな訳ね。

 夢の中で夢って気が付く、確か明晰夢って言うんだっけか。

 ……そうか~夢か~だよな~

 目が覚めたらまた会社か~超憂鬱。

 いっそ夢から覚めなきゃ良いのに……


「なんだ、まだシャキッとしてねーな。追い気付け薬してやろうか?」

「いやそれは遠慮しとく」


 しかしよー、どうせ冒険するならむさい筋肉マンとじゃなく、綺麗だったり可愛かったりする女の子とが良かったよな。

 まてよ? これが俺の夢なら俺の好きなように出来るんじゃね?

 だったら先ずはアレだ、ファンタジーと言えば綺麗どころで有名な亜種族。

 ちょっと性格きつめでツンツンしてるけど、本当は俺の事大好きなお姉さん(種族的にきっと見た目以上に年上)


「もう……あんたらうるさい……おかげで目覚めちゃったわよ」


 キター! エルフのお姉さんキター!!!

 俺の願望が通ったのか、最初からいたのか知らないけど筋肉マンの陰からノソノソ這い出て来たよ。

 もうイメージ通り、白い肌にブロンドの長髪、その髪から左右に長い耳が飛び出してる。少し垂れ下がって下を向いてるのは寝起きだからか?

 お顔も大変美しく、芸能人やハリウッドセレブなんざ目じゃないぜって程。

 正に人外の美しさってやつだな。

 少しばかりスレンダーが過ぎる気もする体形だが、やはり森の妖精はそんなイメージなのか。

 何にしろ超好みです有り難うございました。


「起こしちまったか、すまんなレム。ライトの野郎がなかなか起きなくてな」

「またこいつとじゃれてたの? ほんとルイはライトの事好きね……」


 成程成程、筋肉マンはルイでエルフのおねーさんはレムさんね。把握した!

 そしてレムさん、ルイは兎も角俺にそっちの気は無いので安心して下さい。

 これで3人か。パーティー的にはもう一人位欲しい所だね、昔から冒険者パーティーと言えばゆ(勇者)・せ(戦士)・そ(僧侶)・ま(魔法使い)と相場が決まってるんだ。

 俺が勇者、ルイがどう見たって戦士、レムさんが魔法使い……かな? 剣も持ってるから魔法剣士とかかも。

 そうなるともう一人、僧侶枠が空いてる訳ですよ。

 当然最後の一人も女の子が良いよね。(局所的に)肉付きが良くて包容力の有る僧侶とかだったら尚完璧じゃん?


「もう寝れそうに無いわね。こうなったらリリも起こしましょうか」

「お前……鬼だな」


 やった! やっぱりもう一人いた! しかも名前からして女の子ほぼ確定!

 これで男だったらパーティーから追放してやる。

 そんで「女みたいな名前の男はいらないと勇者パーティーから追放された俺は田舎でゆっくりスローライフ」とか言うタイトルで、どっか別の所で適当に活躍して下さい。


「リリー起きなさい、朝よー」

「マジで起こすのかよ、まあ良いけど」


 レムさんパネーッス、本当に起こしに掛かったよ。


「んにゅ~もうあさ~……」


 ルイの背後から聞こえる、なんともあざと可愛い感じの声。うん、女子確定!

 しかしルイよ~身体でかいからって何人後ろに隠してるのさ。

 まあそれは良いや、さてどんな子がお目見えかな? ってあ~そう来たか、予想外れたけどそれも有りだよね、なんせファンタジーだし。

 そうか~獣人ケモっ子が来たか~ああ大丈夫大丈夫、こう見えて私守備範囲広いので、寧ろ好物なので!

 世の中ケモミミが付いただけで獣人等とおこがましい! とか言う紳士も少なくないけど、俺的には全然アリ。

 いやむしろ有り寄りの有りおりはべりですよ。

 栗色の髪からピョコっと飛び出した可愛いケモミミと良い、活発に動きそうな小柄な身体と良い、うんうん分かってるね~って感じよ。

 しかも身体に似合わず局地的肉付きはレムねーさんより、リリちゃんの方が勝っていると言うアンバランスさも悪くない。

 あっリリちゃんとか言っちゃったけど、獣人の年齢ってどういう感じなんだろ。

 見た目はどっちかって言うとまだ子供っぽいけど、勇者パーティーに入って冒険する位なんだから、実は結構いい歳だったり?

 ま、細かい事は良いか! 可愛いは正義って言うもんな!


「あ~みんな起きてる~でもまだ暗いよ? まだ朝じゃ無いよ?」

「すまんなリリ、レムのやつが自分が起きちまった腹いせにリリも起こしちまったんだ」

「ちょ! ルイ言い方! べつに腹いせとかそんなんじゃ無いわよ。敵に襲われた時の事考えたら4人とも起きてた方が良いじゃない」

「それ言ったら交代で仮眠する意味ねーじゃねーか、それに俺はライトと交代で寝る気満々だったんだが……」

「うっさい! あんたの意見は聞いてない! 元はと言えばあんたがライトと騒ぐから私まで起きる羽目になったんじゃない。

 責任取って起きてなさい!」

「ひでーよレム」

「うえ~んレムが虐めるよ~」


 おおう! リリちゃんが俺の胸元にダイブしてきたよ。紳士たるもの手を出してはいけないのは重々承知だが、いかんせんこれは俺の夢。

 だったら少しくらい良いよね!

 頭をワシャワシャ撫でてやると、リリはうっとりした顔して更に抱き着いて、俺の胸に顔をグリグリ押し付けて来る訳ですよ。

 美人ツンデレ(予定)エルフさんも良いけど、素直可愛いケモっ子とか最高じゃん?

 因みにこの子、犬なのか猫なのか判別難しかったけど、この甘えようを見ると犬っぽいね。歳とか関係なく子犬っこだね!


「で、起きてるのは良いけど、どうするんだよ。日が昇るまではまだ結構有るぞ」

「いっそ先に進む?」

「そりゃお前やリリは暗闇でも見えるから良いが、俺とライトはただの人間なんだ、夜目なんか効かんぞ」

「光の魔法位使ってあげるけど?」

「暗闇に明かりとか狙って下さいと言ってるようなもんじゃねーか」

「リリはライトと寝る~」

「リリはいつまでライトにくっついてるの! こっち来なさい!」

「い~や~~~」


 ああ、リリちゃんが引き剝がされてしまった。

 ケモっ子特有なのか、少し高めの体温はそれはそれは心地よかったのに。

 しかしそんな必死にリリちゃんを俺から引き離すとか、レムさんジェラスィーですかな?

 やはり俺の事……


「なにニヤニヤしてるのよ、アンタは……」


 おうおう、口調はきついままですが照れ隠しにしては隠しきれていませんよ~

 何よりその赤らんだ顔は、焚火に照らされたせいじゃ無いですよね?


「これじゃあ何時までたっても決まんねーな、そんな訳でリーダー決めてくれ」


 あ、やっぱ俺がリーダーなわけ? まあ勇者だしな。


「じゃあ俺は……」


 ピピピピピピピ……!


「んあ!」


 あ~仕事行かなきゃ……

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