ファンタジー小説を書いていたらその世界に転生してしまった件

優希

第1話 目覚めたらファンタジー世界にいた件

未来は売れない小説家として、バイトをしながら執筆に励んでいた。その執筆ジャンルは、ファンタジー小説。投稿サイトで連載したり、コンテストに応募をしたりしているが泣かず飛ばずである。


未来は、コンビニのバイトの帰りにふと交差点に目をやると、おばあさんが渡り終える前に赤信号に変わり、車がスピードを出して迫ってくるのが見えた。その車は、気付いていないのか、おばあさんめがけて突っ込んでくる。


交通事故を回避しようと未来は、おばあさんに向かっていき、おばあさんを歩道方向に突き飛ばしたが自分自身がその車にはねられてしまった。未来は、薄れゆく意識の中でおばあさんを救えていることを確認し、安堵しながら意識を失った。


そして、次に意識を取り戻した時見覚えのない場所のベットにいた。そこはどう考えても、日本とはかけ離れていた。なぜかというと、服装や種族が全く違ったからである。この世界には、ヒューマンの他に獣人、エルフ、ドワーフなど数多くの種族が暮らしていた。


「ここはどこ?」未来は、近くにいた獣人に聞いてみた。「ここは、ミゼルスシティだよ。あんたはこの町の路地に倒れているところを見つかってここに連れてこられたの」聞き覚えのある町だった。そういえば自分の小説でそんな町名をつけたような・・・


そう。その世界に転生していて、現実世界の自分は死んでいた。未来は、ボソッと一言「あの事故で私死んでたんだ。あのおばあさん怪我してなかったかな?それと家族に迷惑かけたかな。ごめんなさい。」


しかし、それとは別にある思いも同時に描いていた。それは、ファンタジーの世界に入ってみたいという憧れだった。その憧れを望まずも叶えてしまったのである。ここからどんな世界が待っているのかドキドキワクワクしてしまう自分もいる。


そうはいってもここからどうしたらいいか分からない。


未来は、獣人に尋ねた。「この世界にはどんな職業があるんですか?」獣人は答える。「あんた変なことを聞くね。普通の世界にはあるような職業はあるよ。」まずは、仕事を探そうと考えたのである。


未来は、小説家だったことからできれば本に関わる仕事がしたいと考えていた。お金を貯めて大きな世界に飛び出してみたいと考える。そのためには、まずは仕事と住処をどうにかしなければならない。


「まずは仕事を探そう。」未来はそういうと獣人は、こう言った「このところどこの店も人手が足りていないようだから雇ってくれるところは多いかもしれないね。」

未来は獣人に聞いてみた「この近くで本を扱っている場所はありますか?」


獣人は言った。「書店ならいっぱいこの町にはあるよ。なんて言ったってこの町は魔法適正のある職業についている人が多いから魔法書などを扱った書店が多いんだよ。」


「でも住処はどうしよう。」未来は、不安そうに俯いた。獣人は、こう答える「手伝いさえしてくれれば、住処が見つかるまではここに住んで構わないよ。事情が事情だからね」


獣人の家は、宿を経営していた。そこを手伝ってほしいということだった。昼は、仕事探しと住処探し、夜は、宿の手伝いをしてということだった。


多忙になることは間違いはなかったが、それでも住処がなく野宿をするよりはいいと考えて未来は、その提案を受けることにした。獣人に聞いた。「あなたの名前は?」


獣人は答えた。「エリス。」今未来がいる宿の女主人である。エリスは言う「あなたの名前は?」未来は答える「私は未来。日本という国から来たの。」エリスは言った「未来、今日のところはもう寝て明日から仕事を探せばいいよ。」未来はその言葉に安堵して、今日のところは眠りについた。


そして、次の日の朝目を覚ますと、未来はすぐに宿を飛び出して仕事を探しに行った。探している職種は、書店の店員である。まずは、この町にどれくらいの書店があるか歩いて確認する必要があると考えた未来は早速行動に出た。


町をある程度歩いて、地図を把握して本屋が何店舗あるのかをマッピングしていった。今は一文無しの状況なので、早めに給料をもらえるところを条件に一つ一つの書店に働かせてくれないかと言って回った。


効率よく回ったことで、その日のうちに仕事を探すことができた。しかも、翌日から働かせてくれるということだった。未来は、希望通りの書店の仕事に就くことができた。


そのことをエリスに話すと、自分のことのように喜んでもらえたので、未来も嬉しかった。


未来は職探しを終えたので、その日から宿の手伝いを開始した。その日は週の終わりの日だったので、怒涛のようなお客さんの入りだった。そのため、未来は今まで宿のような仕事に着いたことはなかったので、てんてこ舞いになって足を引っ張っていた。


それでも、エリスは優しく仕事を教えてくれたので、仕事を少しずつ覚えながら進めていった。宿の仕事を終了する頃には、未来も仕事を覚えてある程度はこなせるようにはなってきていた。


エリスは、未来に言った「あなた容量がいいって言われない?それとも天才なの?普通一日でこんなに動けるようにはならないよ。本当に即戦力になってるありがとう」


未来は正直今までの人生で、それほどの感謝の言葉を言われたことはなかった。そのため、かなり嬉しかった。もっと嬉しかったのは、気持ち程度ではあったもののエリスが給料をくれたことである。


価値は日本円にして大体4500円くらいだった。それでも5時間くらいの仕事だったので時給にしては、900円である。気持ち程度といっても日本の最低時給くらいはきっちり貰えていた。


なぜ気持ち程度かというと、この世界では物価が高いためである。お菓子1つ買うにしても日本なら150円くらいだがこの世界では250円くらいになってしまう。そのため、普通の働き先の時給なら、もっと高くもらえるのだ。


それでも未来は、エリスにありがとうと伝えて、部屋に戻っていったのである。この世界は中世ヨーロッパを想像して作った世界なので、部屋に戻ってもスマホはおろか娯楽というものはほとんどない。


今日貰ったお金を大事に机の中に入れて、疲れを癒すためにゆっくり眠りにつくのであった。

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