スイスを旅して
飛鳥 竜二
第1話 スイス1日目 スイス入国
トラベル小説
6月初め、スイスに直行するS航空の機内にいた。今回は私の退職記念のスイス旅行だ。若い時にヨーロッパ駐在をしていて、2度のスイス旅行をしていた。今回は、思い出の地をめぐる旅である。今は亡き、妻との最後のヨーロッパ旅行であった。
S航空のエコノミー席はやや窮屈だった。何回か使った日系のA航空の方が広いと思う。A航空は機種が787に対し、S航空はエアバス社からかもしれない。元々は、A航空を使って、パリかブリュッセルで乗り換えてスイスに入るつもりだったが、となると夜10時ごろの到着になる。レンタカーを使う予定なので、その時刻ではオフィスはクローズ。そこで、夕刻に着く直行便を使うことにしたのだ。
水平飛行に入ると、機内食が出てきた。ワンプレートであることには変わりはないが、なかなか充実したメニューだ。チキンの照り焼きはなかなかの美味だった。もっとも作っているのは日本の会社だから、そんな変なものはでない。ただ付け合わせのグラタンは(なんじゃこれ?)レベルだった。
12時間の飛行中、できるかぎり寝ないようにした。機内が暗くなってもモニターで映画をみたり、数独などのゲームをして過ごした。妻は目を閉じていたようだが、寝てはいなかった。妻もここで寝ると、時差ボケがひどくなると知っているからだ。
夕刻、スイス・チューリッヒ空港に着いた。入国はすんなりだ。帰りの飛行機のチケットはとってあるし、泊まるホテルのリストももっている。前に並んでいた日本人の女性は入国管理官からホテルリストの提示を求められて、そこからスマホで操作して見せていた。私はあらかじめプリントアウトしていたので、それを見せて何も聞かれることなく、通過できた。
レンタカー会社のA社に向かった。ナビ付きのクルマをリクエストしていたら、ベンツのCクラスになってしまった。でも、1週間で10万円程度は日本より格安だと思う。駐在していた時の2度目のスイスは1000kmを運転してきてやってきたので、今でも運転はさほど苦にはならない。でも、ふだん運転している小型車とは感覚が違うので、慎重に走らせる。空港の駐車場から出るまでが緊張の時間だった。
走りだして困ったことが発覚した。ナビがドイツ語なのだ。ホテルの入力はすんなりできたのだが、案内のナビの音声が聞き取れず、妻にナビの画面を見入ってもらうことにした。
だが、ロータリー交差点で3番目のところに入らなければならないところで、2番目に入ってしまい、道を間違えてしまった。するとUターンする場所がなかなかない。道は森林地帯の直線路。走っていて気持ちはいいが、Uターンをする場所をさがしている身にとってはそんな余裕はない。結局5分ぐらい走って、次のロータリーでUターンすることになった。やっとホテルに到着した。空港から10kmぐらい離れたところにある有名なHインのチェーン店だ。エクスプレス店なので、格安ホテルの部類に入る。部屋はごくふつうのツィンベッドルームだ。日本のビジネスホテルとほとんど変わりがない。まあ、時差ボケ調整の1泊目としては妥当なところだ。
近くにスーパーがあったので、妻が行きたいと言い出した。寝るにはまだ早いので、散歩がてら行ってみた。ぶらぶらと店内を見てまわる。そこで、日本のカップ麺を見つけた。表記は英語・独語・フランス語・スペイン語で書かれている。ヨーロッパ向けのカップ麺だ。そこに人の顔が描かれている。インスタント麺の創始者の安藤百福さんの顔だ。朝の連続ドラマにもなった人の顔が描かれている。夕飯用と非常食用に4つ買った。他にも日本の食品がならんでいる。のりや缶詰が人気みたいだ。
ホテルにもどり、シャワーをあびてベッドに入る。午後9時。やっと暗くなった。日本時間午前4時。さすがに眠い。すぐに眠りに入ることができた。
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