二人で喫茶店!?

 俺はそんなに勘が鋭い方ではないけれど、志帆の言う「好きな人」が俺を指すのではないか、とは気づくことができた。


 でも、それを確かめる勇気は俺にはなかった。

 せっかく家族として、兄妹としての人間関係が構築できたばかりなのに、そこから一歩踏み出すのはまだ怖い。


 同居しているのに、もし志帆と異性としての関係になれば――それこそ『恋雨』の兄のように、何をしてしまうかわからない。

 

 志帆がアイドルに未練があるなら、なおさらまずい。


 それに、俺の勘違いだったら恥ずかしいし……。

 志帆はふふっと笑う。


「今日は帰りましょうか、兄さん」


「もういいの? 他にも行きたいところがあったら行くけど」


「そうですね。行きたいところはたくさんあります。でも、渋谷なら兄さんと一緒にいつでも来れますから」


「そっか。それもそうだね。家からは徒歩で来れるし」


「はい。また……一緒に出かけてくれますよね?」


「もちろん、志帆が望むならいつでも」


 俺が答えると、志帆は嬉しそうにうなずいた。


「そうですよね、ありがとうございます。それに、帰ってもいつでも兄さんと家で一緒にいられるわけですよね」


「美味しいご飯もついているよ」


 俺が冗談めかして言うと、志帆は「それは魅力的です」と答えた。

 二人で喫茶店の席を立つ。


「この喫茶店はまた来たいですね! プリンも美味しかったですし」


「どうやって作っているんだろうね。普通の調理法ではなさそうな味がしたけど、ちょっと研究してみるよ」


「はい! 上手く作れたらごちそうしてくださいね」


 言ってから、志帆はレトロな喫茶店の店内を見回した。


「素敵なお店ですよね。ね、兄さん。あたしたちも喫茶店を開いてみませんか?」


「俺と志帆が喫茶店?」


「はい。楽しそうだと思いませんか? 兄さんがマスターで、あたしがウェイトレス!」


「もし実現したらすごく楽しそうだけどね。でも、帝急が許してくれなさそうだな……」


「社長を引退後に始めたらどうですか? 第二の人生って感じで」


「それは良さそうだけど、そのときまで志帆は待ってくれるの?」


 俺はくすりと笑って言う。

 俺が小牧家当主を引退するときを待っていたら、数十年後のことになってしまう。


 けれど、志帆はこくんとうなずいた。


「はい。待てますよ。だって、あたしは兄さんの婚約者ですから。数十年後だって、きっと兄さんの隣にいます」


 志帆は胸に手を当てて、俺をじっと見つめた。



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