シャンプー詰替するの?しないの?しなさいよ!

 神回だったわ⋯ Mスト、神回だったわ⋯!


 シャニーズの新メンバーは最高すぎない? あんなに整った顔で天然ボケ担当なんて、神ってるとしか言いようがないわね、ほんとに。 良いモン見せていただいたわよ。推していきそうね、ほんと、やばいわ。うん、やばいわ。久々に散財してしまうかもしれないけど、不可抗力よね。


 なんてクールを装って、脳内で悶絶してる私ですが、


 同時に、シークレットゲストの畑トモヒロを観たこの子は、クッションに顔をうずめて足をバタバタさせて、声にならない声を上げて悶絶しているわ。


 いつまでやってんのよ、ほんとに。


 さて、熱も冷めやらないかんじだけど、この後どうしようかしら? DVDに戻るのかしら?


 チラリと本体ちゃんの方をみると、畑トモヒロの余韻で完全に忘れてるご様子だわ。


 よし、お風呂にしようか。


 本体ちゃんに、にお風呂入る?と聞いたら、まだ無理ぃ~畑さん素敵すぎたぁ~目を瞑ったらぁ~歌が聴こえてくるぅ~、だってさ。


 余韻が長すぎない?


 まあいいか、私が先に入ってしまおう。さっき、お風呂沸かしておいて正解だったわ。


 髪をまとめて、さささーっとバスルームへ。いい感じにタプタプしている湯船に肩までゆっくり浸かって⋯


 ふふ、気持ちいい⋯ そして目を瞑ると⋯ そこには⋯


 シャニーズ新メンバーの顔。


 って、余韻は私もまだあったわ。本体ちゃんの事言えなかった。いえ、推しとはそういうもの。不可抗力!


 ⋯


 いけない、脳内が騒がしい。髪でも洗ってしまおう。心頭滅却すれば火もまた涼し、よね。頭を冷やすわ。


 ゆっくりと湯船から出て、頭からシャワーを浴びて⋯目を瞑ったまま、左奥にあるシャンプーのポンプを押し⋯


 スカッ


 ん?


 スカッスカッ


 ⋯


 ポンプを何回か押しても、申し訳程度に出る程度。


 ⋯

 ⋯

 ⋯


 あーーーーーー!?もう!?


 私が昨日使った時は、まだ普通にあったわよ!? その後にあの子が入った時に切らしたわね!? 詰め替えのストックあるわよ!? なんで入れておかないのよ!?


 ああもう⋯ ああもう⋯


 ねえ!? 全然、心頭滅却できないんだけど!?


 私!? 私が入れるの!? 髪を濡らしてる貞子状態で、空のボトルを目の前に、詰め替えの口を切って、全裸でしゃがんで、ゆっくり注ぎ込まなきゃいけないのよ!?


 何よおお! この情けない状態はあああ!!


 まぁ、今は背に腹は変えられない。髪を濡らしちゃったもの。ええ、やりますよ、詰め替えますよ。


 やりますけど⋯ 上がったら、一言でも二言でも言ってやるわ!


 全裸でしゃがんで、シャンプーの詰め替えをして、パウチにちょっと残ってるやつで髪を洗って、ついでにポンプからちゃんと出てくるかを確認して⋯また洗って⋯


 ふう、スッキリ。


 また少し温まって⋯よし、では上がりましょうか。そして小言タイムしてやるわよ。


 タオルで髪を拭きながらリビングに戻ると、まだクッションに顔を埋めて、なんとなくウットリしている本体ちゃんがいる。


 いや、余韻浸りすぎよ!? 余計に、現実に引き戻してやるわ!


「ちょっと、そこにお座りなさい」


『なぁにぃぃ~?』


「昨日、髪は洗いましたね?」


『もちろん~』


「シャンプー切れてましたか?」


『あ~⋯ なんかぁ~? 終わりかけだった気がするぅ~』


 ポヤンとしながら答える本体ちゃんに、私は怒りのテンションが爆上がりよ。


「そーーーゆーーー時はぁぁぁ!!! 詰め替えましょうかぁぁぁ!?」(クソデカ大声)


『ふお~? びっくりぃ☆ 急にテンション上げるんだもん~』


 びっくりしたと言いながらも、特に変わった様子もなく、まだまだポヤンとしてる本体ちゃん。私も少し冷静になりますか⋯


「あのですね、私がいつも詰め替えてる気がするんですが?」


『そぉいえばぁ~? ドッペルさんと住むようになってからぁ~詰め替えてないかもぉ~?』


 いけしゃぁしゃぁとおおおお!!!!

 確信犯だったわ!!!

 分かっててやってるわ、この子!!!


「今後は!!! 最後に切れかかった人が詰め替える事にします!!!」


『あうあ~』


「シャンプーだけじゃないわ!?ボディソープや洗濯洗剤、柔軟剤、ファプリーズ、全てにおいてよ!?」


 濡れた髪のまま仁王立ちになって、ビシッと指を指す今の私、たぶん、すごい映像だと思う。メデューサみたいになってるんじゃないかしら、ほんとに。


 その位、許せないってことよ? なのに、この子はのほほんと話を変えてくるわ。


『ねぇねぇ~』


「ん?なに?」


『詰め替えなくていいようにしよぉよぉ~☆』


「は?」


『詰め替えるの苦手なのぉ~垂れたりさぁ~洗ったりさぁ~前からなんだけどぉ~』


「まぁ、そうね? 私は特になんとも思わないけど」


『向き不向きってぇ~ あるよねぇ~』


「いや、向き不向きとか? イミフなんだけど?」


『あるんだよぉ~、で~、詰め替えに直接取り付けるやつならラクじゃない~?』


「あぁ、あるわねそーゆーの」


『それにしよぉよぉ~』


「いいけど⋯ でも、1つだけ言うわ」


『んん~?』


 素晴らしい提案をしたと言わんばかりの表情の本体ちゃんに、再びメデューサ状態の私は、ビシッと言ってやるわ。


「それに変えたところで!? 最後に使った人が入付け替えるんだからね!? 他の詰め替え系、全ての話だからね!? サボらないでよ!?!?」


『ちぇ~☆』


「ちぇ~☆じゃないわよ!」


『はぁい~☆』


「分かったなら、いつまでもクッションで悶絶してないで、お風呂に入ってらっしゃい。今回はシャンプーの詰め替えしといたから、ちゃんと洗うのよ!」


 ノロノロと立ち上がって、バスルームに向かう本体ちゃんを眺めながら、私はドライヤーの元に向かった。


 以前(15話目を読んでちょうだい)で設置したホルダーからドライヤーを取り、髪を乾かすわ。


 ふう、話はしたけど、なんか釈然としないわね。 あのね、詰め替えがどうとかの問題じゃないの! 【最後に使った人が後処理をする】って問題なの! 意識の問題なの!


 向き不向きってなによ!? 意味わかんないわね!?


 まぁ⋯ セットが楽になれば、やるかもだしね、ズボラ人間って、本当にそうなのよ。 やる気にならないからやらないのよ。 楽ならやるかもしれないけど⋯


 でも⋯


 畑トモヒロに関しては、めちゃくちゃ細かいくせにねええええ!!!

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