名無しのリート~奏で、伝えよ、百人一咒~
めぐるあかり
1章1節――その願い、逆しまに叶え
【1-01】ユズの里が燃えた日
【1節――その願い、逆しまに叶え】
昔むかし、とても人気の高い
だけどある日、
うっかり、演技中に泣いてしまったから。みんなを
それから、長い時がすぎて――。
いつしか
いったいなぜ、
その理由を
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
月の夜に、ユズの畑が燃えていた。
いつも
燃え上がる故郷は、
めずらしく降る雪は、
――なんて、きれい。
自分が生まれ育った美しい里の
大好きだった故郷は、燃える姿すら美しいんだ――と、心から感動してしまう。
だから、だろうか。
この辺境の集落に
多くの兵を従え、
姉に手を引かれ、
小さな
後ろからは、悲鳴と
里人の
無数の
やがて月明かりの山中に、石造りの小さなヤシロが見えてきた。
姉はヤシロに入ると置物を動かし、
「――ここを降りて、地下道を
「姉上は?」
いや、声だけではない。いつの間にか、全身が小さく
姉が答えの代わりのように、
――なんだか、はぐらかされてる。
「……
まだ幼いせいで、その言葉の意味はよく分からない。
だけど大好きな姉の言葉なので、
夜半の月が映す姉の顔は、いつもと同じ。
きれいで。はかなげで。どんなにホコリに
ながい
それなのに、なぜだろう。
この姉の姿だけは、死んでも忘れちゃいけないと感じて。
たとえ10年の月日が流れても覚えているよう、今を強く
――――反逆を
風のうわさで、この『真実』を聞かされたのは、ずっとずっと後のこと……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
旧滋賀西部に建国された
前文明の
ほどなく
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――――――――……………………。
――――…………。
――……。
周りを取り巻く
どうやらあまりに待ちくたびれて、いつの間にかうたた
(――――夢? 10年前の。それとも、あれは……)
まず最初に目に映ったのは、
その実をそっと拾い上げると、目の前に置かれたテーブルに視線を移す。
テーブル上には
(どうせなら、相棒にも調べさせるか)
そう考えて、
いかにもファンタジーの
そいつが大の字でヨダレを垂らしながら、幸せそうに
外見だけは
こっちまで
相変わらず
「おい起きろアーテイ氏。重たいぞ」
「んあ?」
小声で呼びかけると、女の子が大きなアクビをして起きた。
「オアヨ~
心なしか、背中に生えた四枚の
「いいからどけ。お前が重たいせいで、
「んな!? あてぃしが太ったとでも!?」
「ほれ見てみー
「
「出来るか! あてぃしが奏にしか見えないこと、知ってて言ってるでしょ!」
「
「声も
そう。このアーテイ氏なる
さらに
だからもし
「だから
「
「ええい、いいから
相手にするとキリが無いので、それだけ言うと無視を
不満げな顔をしたアーテイ氏も
……
(――さて。
改めて周囲を見回す。答えはすぐ出た。
「ふん、待たせたな
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