第4話 阿佐ヶ谷姉妹の姉とドライブ

 私は阿佐ヶ谷姉妹あさがやしまいの姉か妹か、どちらかが運転する車の

助手席にいる。お二人とも、あまりにも顔が似すぎているので、断定できませんが、とりあえず姉の方にしましょうか。


 私達は姉が運転する車で同じ目的地に向かおうとしています。

 しらく国道のような主要道路を走っていた。けれども、姉が急にハンドルを切って右折した。


「あらー、なんか変な脇道に入っちゃったわねー」


 と、姉がノンキなことを言う。

 道が逸れたことに対しては、深刻そうにしていない。私は「ええっ! ちょっと待ってよ」と、激高する。

 なに勝手に方向転換してんだよ。

 目的の場所に行けなくなったら、どうするの?


 だが、電車の線路の下をくぐると、視界がだんだん明るくなる。

 もっと進むと、目の前は凪の海。黄金色の朝日が水平線がら昇っている。


 綺麗、綺麗と二人で連呼しながらおおはしゃぎ。

 正面の朝日がまっすぐに水平線を輝かせ、一筋の道になっている。

 車は、その黄金色の道を正面にして、突き進む。


 やがて、海岸線の防波堤まで来て行き止まり。姉は今度は左折した。その脇道は、高速道路の出入り口に続いていた。

 

 姉は、そのまま高速道路に入ってしまう。「あらー、高速道路で良かったのかしら」と、また、あっけらかんと言われた私は激怒する。


「いい加減な運転しないでよ!」


 完全に迷ってるじゃないかと叱りつけた。


 それでも気にしない顔をして、高速道路を走り続ける姉の横顔。まるで、この道で合っているとでも言いたげだ。なんの根拠もないくせに。

 私はそこで目が覚めた。


【夢分析】


 気になったのは右折と左折。

 右は無意識下では未来、主体性などを象徴し、左は過去、受け身であることなどを象徴します。

 姉に勝手に右折をされて怒っていたら、その道は海の水平線から昇る朝日に続いていた。そして次に左折をした後、何の根拠もないまま車を走らせ続ける姉と、迷ってしまっているじゃないかと不安がる私との顕著な対比。


 右に向けたら(未来に向けたら)、変な脇道に入ってしまったものの、正面の水平線から朝日が上がっていた。

 ここで夢が覚めていたなら、単純明快な夢なのに。

 何のために左折して過去に戻ろうとするのだろう。

 しかも高速道路を使ってですので、時間を巻き戻す速度を加速させている。

 

 また、運転手は『姉』であり、私自身ではありません。私はコントロールできない状況下に置かれています。もしくは夢の中で私は主体性を手放したのか。

 他者の意のままに行き先を決められてしまっている。

 

 現実と夢を擦り合わせるなら、昨年、一人暮らしを解消し、実家に戻ったことに関連があるような。

 実家での生活は決して快適ではありません。

 だけど、私にはどうすることもできずにいます。

 深い無力感と失墜感に堪える毎日。確かに実生活では実家を出て(左折をして)、そして戻ってきた。陰鬱な過去に引きずり戻された感覚がありますね。



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