第6話  作戦会議(4月9日日曜日夜)

「うわぁ結構黒ずんであざになってるよ。全くどんだけ強くつねればそうなるんだ。」


自室に戻り鏡の前でシャツを脱ぎつねられた箇所を見ると、5センチ位赤黒くなっていた。

色白だから余計に目立った。あの馬鹿力

念のため他の場所もチェックしたけど、特に問題はなかった。

うん、いつもの真っ白でなよっとした体だ。



でもどうして咄嗟とっさにあんな嘘をついてしまったんだろうと、ひとり反省会

おかげで母に会わせる事になった。

鏡を見ながらため息をつく。


まだ役者に未練があるとか 

そんなわけないはず。

もう限界だった

これ以上続けることは



いくら母に似て見た目が良くても 

僕には大きな欠点があった


致命的に台詞が覚えられない。 

いやまじで無理

覚えられない。


みんなアンキパン使うから大丈夫なんだ。

ねえそれどこで買えるの?

ぼくがいつ見ても売り切れなんだよ


本番になるとで頭が真っ白になった。

すべてアドリブで乗り切った。

小さい頃はそれでも良かった。

「ゆーちゃん、次までは覚えようね、あとカンペ使ってもいいから」


「・・・はい。すみません」


いつまでもそれは通用しなかった。当然のことだ

子役でも僕はプロ。

だから子役卒業と同時に引退した。

きっと今じゃ知っている人もいない。そんな昔の話。 





とにかく、元カノより先に高橋さんに会おう。

つじつま合わせないと。


大丈夫、こんな田舎で女優なりたい人なんていない。いるはずない。


「ははは きっと大丈夫」


気分を良くした僕は、スマホでお気に入りのゲームに大金を注ぎ込んだ。


「今なら勝てる!」

きっといいキャラが出る!


その日ぼくはこっそりと泣いた。

枕を濡らして。


『もうガチャなんてやらない』


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