【1章完結】珠使いクリスタ〜氷の王子と真紅の戦士に愛されて 〜

川埜榮娜

プロローグ

 ここはタイラント王国。大陸より離れた孤島にある国。大海にへだてられたおかげで大陸からの侵略もなく、神の下僕しもべの6匹の龍(水龍、火龍、風龍、土龍、白龍、黒龍)によって守られていた。

 その龍の力を扱える、この国特有の魔法使いがいた。それを【珠使たまつかい】と呼ぶ。


 珠使いは、珠の色によって使える魔法が違うのだが、基本的に魔法の種類による優劣ゆうれつは無く、珠使い自体の数が少ないので、見つかり次第王城へ連れて行かれる事になっていた。



§★§★§★§



 国の中心にある大きな森、タニアの森。

 自然あふれるこの森は野生動物の他、森の奥には凶暴なモンスターが生息している。

 しかし、森の外側には何故か野生動物しかいないので、近隣住民の狩りの場所となっている。


 そこに場違いな少女が現れた。粗末な服を着て、何日も風呂に入ってないようなみすぼらしい子供だ。

 何故場違いなのかというと、たとえモンスターが現れない場所とはいえ、猪や狼などの野生動物は居る。普通なら子供が1人で入ってくる場所ではないのだ。


(うわぁ、こっちは綺麗な風景だなぁ)


 その少女は、何の変哲へんてつもない森の風景に目を輝かせていた。

 昨晩雨が降ったのか、木々についている雨粒がキラキラと反射している様子が、少女の目には美しく見えたのだ。


 と、その時、少女の目線の先に、一際ひときわ輝く緑色エメラルドグリーンの光が見えた。


(あれ? 何だろう凄く綺麗……)


 導かれるように、少女はその美しい光の方へ歩いていく。


(ん? まぁるい宝石?)


 丁度、少女の目の高さにある木の枝に、大人の拳大こぶしだいの、緑色エメラルドグリーンに輝く宝石のようなたまがあった。


(凄く綺麗……)


 少女は迷わずそれを掴むと、少女の頭の中に突然声が響いた。


なんじ所有者也しょゆうしゃなり……回復魔法を授ける……』


 ぱぁぁっと石が光り輝き、少女の身体全体を包むと石は光と共に消えてしまった。


(今のは何だったんだろう? しょゆうしゃ? かいふくまほうって何だろう?)


 何も知らない少女は、自分の身に起きたことが分からす、ただ茫然ぼうぜんとその場にたたずんでいた。


 ガサガサッ! ザザザザッ!!!


 すると突然少女の右側から、何かが草むらを駆けてくる音がした。

 音からするとそんなに大きくはなさそうだが、少女はビクッと肩を震わせそちらに視線をやる。


「ひゃっ!」


 視線の先の草むらから飛び出てきた物体に体当たりされ、少女は小さく悲鳴を上げながら地面に尻もちをついた。


(びっくりした! でも思ったより小さい……っ!)


 少女の腕の中に、体当たりをしてきた動物が収まっている。が、その姿を見て少女は驚く。


(矢?! 身体に矢が刺さってる! どうしようどうしよう!)


 その小さな動物の身体には一本の矢が深々と刺さっていたのだ。


(可哀想、痛そう、どうしよう、どうしよう、血が沢山……)


 少女は慌てながらも、その動物の身体を優しくなでる。


(可哀想……傷がふさがればいいのに……)


 少女がそう思った瞬間、てのひら緑色エメラルドグリーンに光輝き、その光が小動物を包み込んだ。

 すると、小動物から矢が抜け落ち、苦しそうに息をしていた小動物は、痛みがなくなった事を不思議に思うような瞳で、少女を見つめる。


(あれ? 治ってる?)


 少女も不思議そうに、その小動物を見つめる。


「血の跡がある! こっちだ!!」


「探せ!」


 その時、少し離れたところから慌ただしい人の声がした。5・6人は居そうだ。


(こんな沢山の人が居るなんて……血の跡って……この子を追ってきたんだろうか? どうしよう)


 少女は恐怖で逃げることもできず、小動物を抱きしめたままその場に縮こまる。


 ザッ!!


 少女の目の前の茂みが、人の手によって開かれた。


「ん? なんだ? こんな所に子供??」


 実用的な鎧を着けた、鍛えられた肉体の騎士が茂みから現れ、そこに座っている少女を見つけて不思議そうに呟いた。


「どうした?」


「あっ殿下、申し訳ありません、何故かこのような場所に子供が……あっ!! その子狐は、先ほど殿下が狩りをした……ん? 傷付いてないな、違う個体か?」


 騎士が、少女の腕の中に居る子狐を見てそう言った。


「さっきから一体どうしたというのだ?」


 殿下と呼ばれた男が、騎士の後ろから現れ少女の前に立つ。


「……珠使い……」


 殿下と呼ばれた男が呟く。


「えっ? なんですか?」


 何を言われたのかわからず、少女は問い返す。


「子供とはいえ、殿下の許可なく発言をするとは!」


 少女の問いに、騎士がいきどおり、少女をとらえようと動く。


「待て、その子は珠使いだ」


 殿下と呼ばれた男が騎士を制す。


「え? この小汚い子供が珠使い……?」


 騎士が疑わしそうな表情で返す。


「そうだ、貴重きちょう稀少きしょうな珠使いだ。見たところ孤児のようだな。とりあえず院を特定してから、王城へ連れて帰るぞ!」


 殿下と呼ばれた男がそう言って、周りの騎士達に指示を出していく。

 少女は1番体格の良い騎士に抱きかかえられ、森の外に停めてあった馬に、一緒に乗せられた。


(一体何が起こったんだろう? どこへ連れて行かれるのかな? 孤児院へ帰らなくてもいいの?)


 少女は不安に思いながらも、されるがままに運ばれていくのであった。






*―*―*―独り言―*―*―*


新連載スタートですっ(*´∀`*)

次の2話目から1話1話が少し短めとなっております。

そして珍しく三人称です。話ごとに視点が変わったりしますが、慣れない三人称で、あれ? 三人称ってなんだっけ? と、途中混乱しつつ、このまま最後まで書けるのだろうか……という心配と、語彙力が無いので拙い文章になりそうですが、生暖か〜い目で読んでいただけると幸いです。


そして、少しでも興味を持ってもらえたら、励みになりますので、気兼ねなくコメントや❤、★の評価をお願いしまーす(๑>◡<๑)


※誤字脱字情報もお知らせくださると有り難いです♪♪

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