第6話あれが…

「いや…こういう通路って普通一本道じゃないの?もしかして侵入者避けにもなってる?とにかく…完全に迷ってしまったか?」


 隠れていた荷馬車の隙間から外の様子を窺っているとティア達と一部の兵の女性達が城下町に入って直ぐに別行動を取り出した。


 俺も隠れていた荷馬車を降りてかなり離れた位置からティア達の後を尾いていくことにした。みんな気配に敏感だし、バレたら絶対厄介な事になるしね。そしてみんなが入って行ったのは地下道みたいな所。みんなは松明を持ってるけど俺は持っていない…。


 まあ、あんまりにも離れ過ぎて真っ暗な中を手探りで進み、現在こうなってるわけだけども…


「……うっ…水…をっ…」


 この声…どこかで聞いた事が…


 声がする方へとゆっくりと進んで行くと灯りが見える…。慎重に様子を窺っていると声は牢屋から聞こえる…。見張りは居ない…。牢屋へと近付くと倒れている女性が…。


「クララ宰相!?良かった、生きていたんですね」


「水…をっ…」


 俺は持っていた竹の水筒を手渡す。水筒が通る檻で良かったと安堵する。飲み物を一気に飲み干し、しばらくしてからクララ宰相が口を開いた…。


「…どうしてここに…エル君がっ?」


「簡略に話すとレインローズを取り返しに来たという感じですね。俺は…ティア達の身が心配で…」


「…そうですか…。ティア殿下の身を…ようやく…ティア殿下の願いが叶ったと思っていいわけですね?」


「はい」


「本当にクララ宰相が無事で良かったです。陛下も心配されておいででしたから…」


「…陛下…」


「とにかく今は道を教えて頂いても?」


「はい…しかし…敵は…あの男はエル君を狙ってるのですよ?危険では?」


「俺にはコレがありますから」


 俺は手にしている物をクララ宰相に見せた。


「それは?」


「これは小型のボウガンです」


「ボウガン?」


「人が弓を射るよりも威力がありますんで…」


 職人の人達と何年も懸けて俺が作ったのは小型のボウガン。生憎、連射機能はないので3個持ってきている。2個は矢と共に腰に装着。威力をあげるのには本当に苦労した…。


「―なので、どこをどう行けばどこに出るのかを教えていただけますか?」


「分かりました…」



 クララ宰相に話を聞いた俺は王の間へと直接通じる道を進む。そして…聞こえてきたのは戦いが始まってる事を告げる様な戦闘音。急ぎ目の前の階段を登り小さな扉みたいなモノを静かにずらす…。


 王の間にある建物を支える大きな柱の一本が隠し通路になっている事はクララ宰相から聞いてきた。その柱から慎重に辺りを窺ってみると…玉座が見え、その近くにはティアが取り押さえられている。


 そして…下半身を丸出しにして俺のティアに近付いて行く男の姿が…。ボウガンを構え…


 狙い撃つ!!!


 矢は男のアレに見事命中。ボウガンをその場へ投げ捨て、すぐさま腰元に装備していた2つのボウガンを構え、ティアを取り押さえている2人の兵を射貫く…。


「ティア!こっちへ!!」


「エルッ!!!」


 ティアが立ち上がりこちらへと駆け寄り、ティアの手を取り、俺は隠し通路へと引き返した…。

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