第8話時間がかかり過ぎてしまって…
陛下達が帰るとようやく一息つく事が出来た。国でも一番偉い人がこの領内にいるとやはり落ち着かないし失礼な事は出来ないしね。まあ、一番の理由はあの演説を聞かなくなって良かった事だな…。
陛下が帰るという事はティアも一緒に帰るという事でその事に関しては正直に言うと寂しい…。3日間ティアはこの村にいたわけなんだけど、近くの川で釣りをしたり、村をまた一緒に見て回ったり、とにかくティアの時間が許す限り一緒に過ごした。ティアは帰る時泣いていたんだけど、必ず会いに行くという約束を交わしたら笑顔になってくれた。
ハートネス女王達は陛下達が帰ると同時に毎日の様にミリアとの婚約を薦めてきた。―で、婚約の件に関しては最終的に取り敢えず保留にしてもらっている。
ハートネス女王達が帰る時にハートネス女王からは、『祖母娘丼が欲しいなら早く決めて頂戴ね?私も母も出来るだけ若い内に頂いて欲しいから…ねっ♡』と、言われ、ミリアからは、『アタシは絶対ダーリンの元に嫁ぐからねっ!』と、何度も念を押されたのは言うまでもない。5歳の俺にそんな事を言われても…ねぇ?
まあ、そんな感じで色々あった日々は過ぎ去り、のんびりとした日々を過ごしていたんだけど…。
―ある日ウーシェンに頼んでいた件で呼ばれたんだ。ようやくだね…。時間が随分掛かってしまった。レイラと共にウーシェンの元へと俺は急いだ。
「御主人様…今日は何を?」
「そろそろ…御主人様って言うの止めない?」
「御主人様は御主人様ですので…」
「そのうち…普通に名前で呼んでよね?」
「…そんな事よりも」
「そんな事じゃないからね?結構大事な事だと思うんだけどっ!?」
「マリア様からもう少し私達に構う時間を作る様にと言付かっております…」
「なるほど…そっちの方が大事な事だったね…。了解。この後で母さん達と過ごす事にするよ」
「そうして下さい」
*******
〜sideレイラ〜
御主人様に引き取られて2年位が経った。最初は遊び相手に私を欲したのだろうと思っていた。でも、引き取られてすぐに考えを改めた。
だって御主人様は女性ではなく男性だったのだから…。それが分かったのはその日の夜の事。
それはマリア様のそろそろお風呂に入りましょうか、と言う一言が切っ掛けだった。どうやら御主人様達はみんなでお風呂に入る人達みたい。そこで、御主人様が声をあげた。
「いや…そろそろ一人で…「駄目に決まってるでしょ、エル?」…はい」
「さあ、レイラも一緒に入ろうね!」
「…はい」
「いや、それは駄目なんじゃないかな?僕、男だよ?」
この時声をあげなかった私を誰か褒めて欲しい。御主人様が殿方なんて聞いてないのですけどっ!?えっ!?はっ!?マジかっ!?殿方とお風呂なんて恥ずか死んじゃうんですけど!?で、でも殿方とお風呂なんてこんな機会じゃないと…等と葛藤しながらもそれを悟られない様に返事を返した。
「私は構いません…」
「…えっ?」
御主人様の驚いた顔は忘れられません。まあ、ちょっと御主人様の股関にぶら下がっているものを凝視してしまったのは私の黒歴史ですね…。
まあ、その後すぐに奴隷の身分から解放され貴族であった頃と同じ様な生活を出来る事になるとは思ってもいませんでしたが…。
それからは率先して私は御主人様の世話をやきたいと思い、寝る時も、お風呂もどんな時も必ず一緒に居る様にしています。要は惚れてしまっているのです。チョロっ―と、言われそうですが仕方なくないっ!?奴隷に堕ちて絶望していた私を救ってくれたのですから…。だからチョロくなんてないのです。これで惚れない女性はいないでしょう。
殿方は筆おろし…いわゆる夜伽の相手は侍女だと聞いた事があります。密かにその相手が私だといいなと思ってもいます。
話は変わりますが驚きはまだまだ続きます。私より2つも歳下なのに思い付く事の全てが天才の発想。どうすればそんな風に思い付くのか…ホント驚かされるばかりです…。
ただ…お母様の事が気掛かりでなりません。ウーシェンさんから聞いた話では現在どこに居るのか分からないそうです。まあ、結局のところ色々思うものの私だけ幸せになる事は出来ません。せめて元気に過ごしてくれていればと願うばかりです。
***
今日は御主人様がウーシェンさんに呼ばれたので付いて行きます。ウーシェンさんの屋敷へと着いてすぐに、私はウーシェンさんに付いて来てと言われました。御主人様は別室にて待機される様です。ウーシェンさんが何の用かは分かりませんが素早くその用を済ませて御主人様の元に戻ろうと私は意気込みます。
「ここの客間にあなたに会わせたい人が居るわ」
「…私にですか?」
「ええ…ゆっくり過ごすといいわ」
「はい…ありがとうございます」
誰かは分かりませんがそんなにゆっくりと過ごす訳には参りません。客間の扉を開け、目に入ったのは…
「…あっ…………お、お母ぁ……様?」
「レイラ!」
「お母様ぁぁぁぁぁぁぁ――――――」
私は一目散にその場を駆け出しお母様に抱き着いていました。
「"お"か"あ"さ"ま"お"か"ぁ"ぁ"あ"さ"ま"!!!」
「"レ"イ"ラ"レ"イ"ラ"ッ"!!!」
客間に居たのはお母様…。随分苦労されたのだと思う。記憶の中のお母様より痩せ細っていたのだから…。私達は抱き合いながら時間を忘れ再会を喜び泣きに泣きまくった…。そして私達が落ち着いてかなりの時間が経ってから、ウーシェンさんが私達のところにやって来た。ノックをして「そろそろ話せる?」と、わざわざ声を出し確認迄とってくれた。
気を使って頂き感謝します…。
「「本当にありがとうございました。お陰で再びお母様(娘)に会うことが出来ました…」」
「…本当は内緒と言われたんだけど…それはエル様に言った方がいいね…」
「御主人様に!?」
御主人様がお母様を…
「正直に言うと…レイラのお母さんを探すのにも途轍もないお金がかかったんだ…。奴隷になったお母さんを買い取る為のお金だったり…まあ、まずは行方を知るための情報料だったり、その他諸々…。それらは全てエル様が出されている。その為にも事業を為されたみたいだしね…」
「ご…御主人様ぁ…」
最初から私の為にも動いてくれていたのですか…。そんな事まで…
「それから…遅くなって本当にごめんねだって…それは私からも謝らせて欲しい…すまない、時間がかかり過ぎて…」
「謝らないで下さい…私は娘に会えただけで…それだけで…」
「私もです…」
御主人様が謝る事なんて一つもありません。こうしてお母様と会えただけで私は…
「それとエル様からの伝言で…『今日は既に宿をとっているから、そちらに泊まってゆっくり過ごして欲しい』との事だよ…こちらの事は気にしないでとの事だよ?本当にいい男だね…エル様は…」
「エル…さま…エルさまぁ…」
エル様…あなた様はどこまで…どこまでカッコいいのですか…。私はどこまでも御側にいますから…。お慕い申し上げております…。この身はエル様だけに捧げます…。捧げさせて下さい!
私達はエル様のお言葉通り久しぶりの親子の時間を過ごす事に…。話題はエル様の事ばかりだった。
***
あとがき
いつもお読み頂きありがとうございます!
それにしても1位はホント遠いですね…。それでも現在2位をキープ中なのでなんとか皆様のお力を!どうか宜しくお願いします!
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