Second Agito 「新しき潮流」
第14話 五千年後の新時代
「ふーーん」
「ふーーんってミシェル、お前信じてないだろ?」
「だって、そりゃよぉ5000年前の話を信じろったって土台無理な話じゃね?大体
「昔話に興味があるって言ったのはお前だろうが、まったく……お前が
魔王城の広間でオレの昔話を聞いていたミシェルを改めてじっくりと見つめる。
ダークスーツのよく似合う細身のシルエットに整った顔立ち、サラッとした長髪の銀髪に紅のメッシュ、真っ直ぐで穢れを知らぬ曇りの無い赤い瞳を持つ少年。
うむ、しかしアレだな。
こうやってしっかりと観察したら意外とサリエルと違う特徴も見えてくるもんだな。
「うげぇ!あのヨボヨボ頑固ジジイと俺が似てるだって!?冗談はよしてくれよヒロムートぉ」
「あの、一応オレ神様ね?」
「いや知ってるけどさ、だってあんた俺より小さいじゃんか。それよりさ!その後の話聞かせてくれよ」
「まぁいいや分かったよ……その前にオレに向かって小さいは不敬な(確かにオレの身体はあの日から一切成長してないガキのままだが)」
そう言ってミシェルの頭を軽く小突いた。
「痛って!」
「まぁその後は楽勝だった……事前に通達して一月に一つ都市を消し飛ばした」
「うげぇ、そりゃエグいことやるな」
「若気の至りだな、当時はそれが正義だと思ってた。結局たった二年でこの地を千年間支配していた人間が降伏した」
「それからは?」
「……実にくだらなかったぞ。そこからの500年は。人間の弔い合戦さ、ゲリラにテロ。それに同調して新時代の利益を得ようとする魔族同士の権力闘争」
本当にくだらなかった。
人間との戦が終わったと思えば次は同族同士の殺し合いが始まったんだ。
それにその時には既にオレは魔族にとってもう用済みだった。
お飾りの神殿に居住し豪勢な食事に酒、嗜好品に各国の貢物、綺麗な女を与えられて飼い殺されてたんだもんな。
好きな物を好きなだけ与えられ、偶に訪ねてくる魔族に人は皆等しくオレに頭を垂れ平伏し、色々な事を懇願しにきた。
そいつらを煮るも焼くも助けてやるのもオレの意のまま。
何をやっても成功する、思い通りになる。
さながらそれは全世界を使ったつまらないお人形遊びでしかなかった。
「やっぱただのガキじゃねぇんだなアンタ。それはそれで楽しい生活じゃなかったのか?」
「ガキ言うなアホめ、そんなもん数百年も経てば飽きるっつうの……そこからオレはこの世界からの脱出して故郷でシャバい人生を全うする方法を研究するようになった」
「はぇー神様の考えてる事はよく分からん」
……元はただの冴えないオッサンなんだけどな。
それで何が一番辛いって時間の感覚は人間の時のまんまな所なんだよ。
暇というものは心を壊す劇毒だ、この感覚がこれからいつまでも続くだなんて考えただけでゾッとする。
「何か変化が欲しかった。幸い研究する時間は無限に等しい位あるしな」
「それで研究の成果は?」
「大☆失☆敗」
「おい?真面目に聞いて損したんだけど」
「まぁそう言うなよミシェル。オレは世界から脱出する研究は未だに諦めてないし、何よりその時面白い失敗作を生み出せた」
「……失敗作ねぇ」
ミシェルは呆れた表情で首を捻った。
「おい、【転生陣】は偉大な発明だぞ」
「さっき失敗作って言ってたじゃねぇか」
「……」
「ノーコメントかよ!」
そう、オレはあろうことか異世界を脱出する装置でなく他者を異世界へ連れ込む為の装置を作っちゃったんだよね。
転生陣は言ってみればうなぎ筒みたいなもんで外からの来訪者をこの世界に引き込むことは出来るがこの世界から別の世界への移動は出来ない一方通行のものだった。
「こまけぇこたぁいいんだよ。それでさぁ試しに適当に人間達にその術式を配布した」
「おい、いきなり何やってんのこの神様」
「いやぁそれがね、その頃の人間の
「うーんアンタがイカレてるのはよく分かった」
「口の悪いやつだな。オレがフランクな神でよかったな」
「アンタは俗っぽ過ぎるんだって……だってさ転生陣から召喚される転生者ってのは」
ふむ、アホなりに鋭い所もあるのな。
「そう転生者はこの世界では化物クラスに強い。そうやってワザと人間と魔族パワーバランスを崩したのさ」
「……ワザと?さっきついって言ってなかった?」
「おほん!!さてお前の爺さんサリエルは焦った。このままでは再び人間の天下がやってくるやもしれんとな」
「それで?」
「オレに泣きつく……なんて事はなかった。アイツは人との和平と共生を選んだのさ、当然裏では血塗れの工作を行ってたみたいだがな。ホント大した男だよお前の爺さん」
サリエル、あいつは当初から食えない男だと思っていたがあの時は本当に感心したぜ。
結果としてオレのヒューマンエラー?いやゴッドエラー?を上手く修正してくれた訳だからな。
「あぁ新神暦元年ってやつだろ?その後は歴史で習うしょうもない世界史の始まりか。それでヒロムート、アンタはその平和の時代が到来した後何してたんだ?」
あ。
……うわぁ、ついに来たねその質問。
「あー」
「おいなんだよ、あーって?」
「…………寝てた。……三千五百年位、正確にはお前が生まれた十三年前、三千四百八十七年間か」
「はッ、はあぁぁぁ!?」
ミシェルの叫びがオレ達しかいない広間に大きく木霊した。
「いや、分かってたよそういう反応になるのは……だからさ、先ずは何で三千年以上も熟睡してたやつが今起きているのかを考えてみようぜ」
「知らねぇよ、何か大変な事でも起きるのか?」
「まぁな」
「で?大変な事って?どうせくだらない事だろ?」
「三年後世界が滅びる」
一瞬だけミシェルが固まる。
「はッ、はあぁぁぁ!?」
そして再度ミシェルの叫びがオレ達しかいない広間に大きく木霊する。
「その件さっきやったろ」
「うるせぇ!いくら何でも唐突過ぎるだろうが!」
「チッ、しゃあねぇだろ。オレだって気が付くのが遅れる事だってある」
「そ、そうか……で済むかそんな事!」
「爺さんと同じ反応だな。それによあと三年……まぁ三年もありゃ何とかなるって。安心しろ魔族の成長は早いしお前には生き残る術を叩き込むつもりだ。お前は魔王の血筋、才能はピカイチだしな……まっ、ちんちんはまだまだ毛の生えてないお子ちゃまの様だけど」
おっと今更手で隠しても遅いぜ、神眼はどんなものでも透視できるからな。
「うるせぇよ!!!で、何でオレが生き残る術とやらを学ぶ前提になってんの?」
「……三年後死にたい?」
ミシェルは少し黙り込んでから再度口を開いた。
「それはごめんだ」
「でしょ?」
「はぁー、だけどなんで俺なんだ?」
「勘違いすんなよ、別にお前だけじゃねぇ有望そうな奴には結構声かけてんだぜ?」
「そうかよ、にしても初めて知ったんだけどアンタってそんな真剣な表情出来たんだ」
「あ?」
アレ、おかしいな?
気楽でテキトーがモットーのオレが自分でも気が付かない内にそんな表情になっているとはな。
……それだけ十三年前に
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