【第一章完結】妖精にかけられた呪いを解くまで何度もループすることになった魔女は、悪魔と契約するつもりで召喚した異世界の忍びに生まれて初めて恋をする~恋をした魔女は呪いを解いて幸せを手に入れました~
秋月昊
呪いの魔女と忍びの少年
第1話 呪われた魔女とやり直し
闇の妖精ディアナにかけられた呪いを解くために一人で旅をしていた私に声をかけて仲間に誘ってくれた騎士ミカエル、狩人アルベール、女
彼らとたまたま立ち寄った王宮から一番近い街で私はディアナと出くわした。
呪いを解くためには誰かに愛されるか、ディアナを捕らえるしかない。
私に呪いをかけたディアナは行方をくらませていたから探すことは諦めていたけれど、偶然見つけたのなら捕まえたい。呪いを一刻も早く解きたい私は焦っていた。
「闇の妖精ディアナ……。み、みんなこの人が私に呪いをかけた妖精です。捕えるのを手伝ってくださ……」
「みなさん、騙されてはダメよ。そいつは魔女。呪いを振りまく悪い魔女。ほら、姿が変わるわ。本当の醜い姿に」
私の目の前に来て見下ろすプラチナブロンド色の髪にアイスブルーの瞳を持つディアナの姿は本来は私の容姿だ。
私の顔で私を
これが本来のディアナの姿だ。共に旅をしてきた仲間は信じられないものを見るような目で私を凝視する。
「魔女様、その姿は……。俺たちを騙していたのか?」
「ち、違う! 騙してな」
「あら、ではどうして変身魔法なんて使って容姿を偽ったのかしら?」
ディアナがほくそ笑む。
「それは……」
「ふっ、はははっ! 分かるわよ。その姿だと誰もあなたを愛してなんてくれないものね。……それで、そうまでしてあなたは誰かに愛されたのかしら?」
「っ」
プラチナブロンド色の髪を耳にかけて私を
呪いが解けていないということはまだ誰にも愛されていない証拠。私は唇を強く噛んだ。
「哀れな哀れな魔女さん。誰もお前を愛さない。孤独な魔女は誰にも愛されず一人淋しく死んでいく」
ディアナが口ずさむ。それに呼応するようにミカエルが剣を構えた。
「いい子ね。国王の命令よ。魔女はこの世に災いをもたらす存在。今すぐ魔女狩りをここで遂行なさい」
「はい。ディアナ様。美しき御方」
愛してくれていると思っていた人は私に刃を向けた。剣先が放つ光がきれいだったな。それが死に際に抱いた感想だった。
共に旅をした仲間の騎士ミカエル。天使の名を冠した彼はディアナに従った。
天使の名の下、それに恥じない正義を行ったつもりなのか、それとも国王の命令だからなのか。いずれにしても私はこれから死ぬ。
魔女狩りとはその名の通り、魔力を持つ者たちを捕らえることだ。それだけにとどまらず殺される人たちもいる。
私の体内には魔力が宿っていて魔法が使えて薬の調合もできた私は魔女と呼ばれた。
魔女は他と異なる存在。他の人とは異なる存在は恐れられ排除される。私、エリアーデもその一人。
けれど、私は他の魔女と違う。闇の妖精ディアナから呪いをこの身体に受けている。解く方法は誰かに愛されるか、ディアナを捕らえること。
居場所の分からないディアナを捕まえることは不可能に近い。
だから私はディアナを捕まえるのではなく誰かに愛される方法を選んだ。
魔女狩りから逃げる途中で出会ったミカエルたちとの旅は悪くなかった。その中で、彼らと交わした言葉は私の心に小さな明かりを灯してくれた。
でも、それは私を油断させるためのウソだったのだと今さら気付く。思えば名前すら呼ばれたことはない。
それもそうか。誰がこんな醜い老婆のような姿の女を愛するというのだろう。
剣先で心臓を貫かれた私はミカエルを見た。
よく分からないや。痛みは当然ある。苦しさだって。
それでも私は泣くことも、怒ることも、恨むこともしない。いや、出来ない。
すべてを諦めている私は「ああ、今回もダメだった」と静かに目を閉じる。
私が死んだ後、私の体内の魔力が呪いと混じり合い暴発する。そのエネルギーによりこの世界アズゼーテは崩壊する。
けれど、妖精の女王モーガン・ル・フェイ様から授かった力によって私は呪いを解くまで何度もやり直す。それは私にとってはもう一つの呪いに等しい。
「……もう、すべてを終わりにしたいのに」
その願いすら許されない。私は意識を閉ざした。
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