甘い言葉はいつかは毒に変わる




 愛している。

 その言葉しか知らないのではないだろうか。

 疑問を抱くくらい、彼はその言葉だけボクに伝える。


 愛している。


 時に、ささやき。

 時に、力強く。

 時に、ゆったりと。

 時に、性急に。


 砂糖菓子のように、粉々に砕け散るだろうか。

 蜂蜜のように、とろとろに流れ落ちるだろうか。


 愛している。

 とびっきりの甘い言葉を与え続けられたボクの身体が、容赦なく彼に抱きしめられたら。

 どちらにしても、どちらでもないにせよ、今の身体は一度壊されて、新たな身体が形成される。


 愛している。

 甘い言葉はいつかは毒に変わるだろう。

 少しずつ、少しずつ。

 毒を与えられ続けて。

 トドメは彼の抱擁で。

 彼の望むボクに生まれ変わらせてくれる。

 ボクの望むボクに生まれ変わらせてくれる。




 ああ、早く。はやく。

 その、いつかがやって来ればいいのに。












(2023.10.14)



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